【弁理士】
「防護標章って不思議ちゃん?その1」

 

弁理士試験受験生の皆様。こんにちは。TAC弁理士講座担当の齋藤晶子です。

今週は「防護標章って不思議ちゃん?その1」ついてお伝えします。

商標法は産業財産権四法の中で、他の三法と比較するとかなり特殊ですね。
その違いを生み出しているのは、なんといっても商標法の保護対象が他の三法のような「創作物」ではなく、商標という「選択物」だからです。
商標法での商標自体は何の価値もありません。単なる選択物で、「創作物」のようにそのものに既に価値があるものではありません。
したがって、商標法で保護するものは、商標そのものでなく、商標の使用により化体した信用です。
ということは、信用が化体していない商標はなんの価値もありません。
一方、商標登録され、登録後に使用をし続けて信用が化体した場合には、厚く保護されます。それが、「防護標章制度」です。
「防護標章制度」そのものも、他の法域にはない、かなり特殊な制度です。だからなかなかイメージがわかず、すんなり受け入れることが難しい「不思議ちゃん」的存在で、多くの受験生を振り回しているようです。

今回から、「防護標章制度」について詳しく説明していきます。

では、まず防護標章制度の趣旨について、触れていきましょう。

1.趣旨を理解するには法目的から
商標法では、1条で「業務上の信用の維持を図ることで、産業の発達に寄与、需要者の利益を保護する」としています。
つまり、「業務上の信用の維持を図ること」が法目的を達成する手段ですね。「業務上の信用の維持を図る」には、取引秩序を維持すべきです。
取引秩序を維持するには、商品及び役務の出所の混同を防止しなくてはいけません。どこの会社の商品かわからないと需要者は混乱するからです。
そうすると、まず、出所の混同の防止をどの程度の範囲まですべきか、つまり商品及び役務の出所の混同となる範囲はどの範囲かを確定しておく必要がありますね。

2.「出所混同の範囲」ってかっちり確定できるの?
できるわけないです。
そこで、どのような手法をとったかというと、類似概念を導入し、とりあえず、「類似範囲を当然に出所の混同の生ずる範囲と擬制」しました。そして、この類似範囲を画一的に商標の登録を排除し、また、その使用を禁止することとしました(4条1項11号、37条1号等)。

3.さすがに出所混同の範囲=商品等の類似範囲が成立しないときもあるでしょ?
そうです。
商品等の類似範囲は画一的であるのに対し、実際に出所混同が生じる範囲は商標の著名度などにより変動する流動的なものです。
とりあえず、という感じで類似範囲を出所の混同の生ずる範囲と擬制したため、著名になってしまうと、その範囲を超えて出所混同を生じる場合があります。

4.出所混同の範囲=商品等の類似範囲の関係が成立しなくなったらどうしていたの?
この場合に出所混同を生じる範囲について、著名商標の商標権者の保護を十分に図るための手段として、
① 不正競争防止法での保護があります。
でも立証等の点で実際の適用が容易ではないのです。
② 法4条1項15号等があります。
でも、著名商標と出所混同する範囲の登録を排除できるだけで、他人の使用を禁止できないのです
そうすると、著名商標の商標権者の保護が十分に図れないのです。

5.著名商標の商標権者の保護はどうやって確保したの?
そこで、防護標章制度を設け、著名登録商標の非類似商品等にまで商標権の禁止的効力を拡大し、侵害に対する迅速な救済を保証しています(64条等)。
(「工業所有権法逐条解説」[19版]p1497-1498)

次回は不思議ちゃん「防護標章」の特徴などを詳細にご説明します。