【弁理士】
「防護標章って不思議ちゃん?その2」

 

 弁理士試験受験生の皆様。こんにちは。TAC弁理士講座担当の齋藤晶子です。

 今週は「防護標章って不思議ちゃん?その2」ついてお伝えします。

 今回も商標登録と防護標章との関係についてお伝えします。

1.あくまで禁止権の拡大
 防護標章制度では、商標権者が防護標章登録出願をし、審査を受け(商68条2項)、登録されます。
 だから、なんとなく、通常の商標権と同様に独自の専用権(25条)みたいなのがあって、防護標章登録された範囲内なら、使用もでき第三者の使用も排除できるの?というイメージをお持ちの方も多いようです。
 いえいえ。でも全然、通常の商標権と違いますよ
 防護標章は登録されても、その範囲は使用できません。
 防護標章制度は、大元の著名商標の商標権を保護するためだけのものです。だから、実質的には禁止権(37条)と同じです。
 禁止権(37条)の範囲は、積極的な使用が認められているわけではないですよね。
 防護標章も商標権の禁止的効力を拡大なので、使用を前提としていないし、禁止権(37条)の範囲と同様、積極的な使用が認められませんよ。
 イメージとしては、「使用はだめではないけど、他の人がこの範囲で商標権を取得したら商標権侵害で権利行使されちゃうから、そのときは知らないよ。」という感じです。
 一方、専用権(25条)は法律上使用が認められているので、たとえ過誤登録であったとしても無効にされない限り使用が認められます。
 例えば、甲さんは商標権者でのその禁止権(37条)の範囲において、乙さんが商標権を取得したとします。つまり、甲さんは商標権の禁止権(37条)の範囲と乙さんの商標権の専用権(25条)の範囲が重複したとします。
 この場合に、甲さんがその禁止権(37条)の範囲の使用をしてしまうと、乙さんの商標権侵害となってしまいます。専用権(25条)と禁止権(37条)とは格差があります。
 そして、これは通常の商標権の専用権(25条)と防護標章登録に基づく権利(67条)でも同じことがいえるのです。
 例えば、甲さんは商標イについて指定商品Aの商標権者だとします。一方、全く混同を生じないと考えられ、乙さんは商標イについて指定商品Aに非類似の商品Bで商標登録が与えられました。
 一方、後発的に甲さんの商標イが有名となった結果、非類似商品を他人が使用しても混同を生ずるようになったとします。そして、甲さんが商標イについて指定商品Bで防護標章登録を受けることができます。でも、乙さんは依然として商標イについて指定商品Bの使用をすることができます。(「工業所有権法逐条解説」p1496-1499)
 そして、もし甲さんが商標イについて商品Bの使用してしまうと、乙さんの商標権侵害となり、権利行使されてしまいます。

2.商標登録出願と防護標章登録出願が競合したらどうなるの?
 出願の競合、といえば、商標法8条ですよね。
 防護標章登録出願は拒絶理由に8条はないですよね(商68条2項)。
 でも、商標登録出願にはもちろん8条の適用はありで、でも、8条には防護標章登録出願との関係はどこにも触れていませんよね?
 ちょっと心配ですが、大丈夫なんです。
 この場合には、
 (1) 商標登録出願に対し登録が行われるとき
 その指定商品又は指定役務と防護標章登録出願に係る登録商標についての指定商品又は指定役務とは必ず混同を生じないですよね。
 ということは、防護標章登録出願には68条2項で読み替えている64条の拒絶理由があるということですよね。
 だから、防護標章登録出願は登録されません。
 (2) 防護標章登録出願に対し登録が行われるとき
 商標登録出願に係る指定商品又は指定役務とその防護標章登録出願に係る登録商標についての指定商品又は指定役務とは必ず混同を生じているのです。
 ということは、商標登録出願には4条1項15号の拒絶理由があるということですよね。
 だから、商標登録出願は登録されません。
 というわけで、いずれも先後願を問題にするまでもなく他の登録要件で処理(4条1項15号、64条)できるんです。
 (「工業所有権法逐条解説」p1319)