【弁理士】
「防護標章って不思議ちゃん?その3」

 

 弁理士試験受験生の皆様。こんにちは。TAC弁理士講座担当の齋藤晶子です。

 今週のテーマは「防護標章って不思議ちゃん?その3」です。

 今回は「商標登録と防護標章登録の粋な使いこなし術」についてお伝えします。

 防護標章制度は、商標権者であって、しかも、商標を使用して信用を蓄積して、商標を著名にした人が持てる、「勝ち組商標権者のステイタス」というイメージの制度ですよね。
 そして、その商標権者は、事業戦略に応じて、柔軟に商標登録と防護標章登録を使いこなすことが可能です。
 その例を青本に記載されています。勝ち組商標権者ができる様々な裏技をご紹介していますよ。
☆今回の事例☆
 登場人物:甲さん
 甲さんの現況:商標イについて指定商品Aで商標権(商標権1)を取得
 商標イは著名になっています。

〈ケース1〉
 商標イについて指定商品Bで防護標章登録を受けたとします。
 でも、これから商標イについて指定商品Bについて新たに業務を開始したくなったときは?
1.甲さんができること
 重ねて指定商品Bついて商標イで商標登録を受けることができますよ。
2.実益
 指定商品Bついて商標イで商標登録を受けておけば他の権利との抵触によってその使用ができなくなる。というリスクは回避できます。
 つまり、前回の「防護標章って不思議ちゃん?その2」でもご説明しましたが、防護標章登録されてもあくまで禁止権だから、他人が商標イで指定商品Bの商標権を有していた場合に、商標イで商品Bを使用すると、甲さんは商標権侵害者になって、権利行使されてしまいますよね。
 でも、商標イで指定商品Bについて使用するためには、その範囲での商標権者になってしまえば文句なしに使用でき、安心して業務開始できますね。
3.上記出願は問題なく登録されるかについて
 法4条1項12号には「他人の」という限定がついている関係上、自己については適用がないですよね。よって、当然登録を受けることができますよ。


〈ケース2〉
 甲さんはさらに、商標イに指定商品Bの商標権(商標権2)を持っていたとします。でも、商標権2での商標イに指定商品Bについて業務を廃止したいときは?
1.甲さんができること
 商標権2を防護するために商標権1において重ねて商標イについて指定商品Bで防護標章登録を受けることができます。
 そして、商標権2は放棄したり、更新しなかったりして消滅させてしまうことができます。
2.実益
 後に残る信用についての他人が利用することを防ぐことができます。
 つまり、業務を廃止する。ということは、商標イに指定商品Bについて使用をしなくなるということになります。
 商標権者は、登録商標について使用する義務が課されています。だから、使用義務違反はそれなりのペナルティがあるわけですよね。
 例えば、甲さんは商標権2の商標権者なのに、商標イに指定商品Bについて3年以上使用していないことが誰かにバレてしまうと、50条の不使用取消審判で取消されてしまいます。
 そして、商標権2を消されると、甲さんは、他人が商標イに指定商品Bを使用していても権利行使はできなくなります。だから、使う気もない商標権2を無駄に持っていると結構面倒ですよね。
 そんなとき、自分が使用する気は全くないけど、他の人が使用するのは許せない。という我侭なお願いをこの手法で一気に解決することができるのです。
3.上記出願は問題なく登録されるかについて
 これを禁止する規定がないのです。よって、当然に重ねて登録を受けることができるということになります。
 (「工業所有権法逐条解説」p1503-1504)