【弁理士】
「ブレない正解力を手に入れる~
短⇔論ハイブリッド式著作攻略法」

 

弁理士試験受験生の皆様。TAC弁理士講座担当の齋藤晶子です。

今回のテーマは「ブレない正解力を手に入れる~短⇔論ハイブリッド式著作攻略法」です。

短答式試験には、著作権法が受験科目になっています。
しかも、最近の試験、特に平成28年度式短答式試験の著作権法はかなり難しい事例問題からの出題でした。かなり手強かったですねー。2、3年前までは著作は常識で解くものって言われていましたけどね。
したがって、かなり気合いを入れて著作権法対策をする必要があります。
実は、著作権法も、特許法等と同様、解答を導くプロセスはすべて条文を根拠にし、条文ベースで事例問題を解く力が問われているのです。
ま。当然といえば当然ですよね。
弁理士試験は「条文を理解し活用できる力」を問われる試験です。著作権法だけ、常識力が問われるというのは、バランス悪すぎですね。
というわけで、今年の短答式試験著作権法対策として、事例問題をどうやって解いていけば、ブレずに正解を導くことができるのか、今回は実際の問題を使って解答プロセスをご紹介します。

著作権法の事例問題の解答プロセス基本パターンは
「定義→原則→例外」の順で進めていきます。
では、実際に出題された平成28年度本試験問題3枝2の問題を解いてみましょう。

問題
 美術館が、自己の所有する絵画を館内の展示室に展示するに際して、館内に設置した大型ディスプレイで当該絵画を収録した映像を観覧者に見せる行為は、当該絵画の紹介又は解説を目的としている場合には、当該絵画の著作権の侵害とならない。


ではこの問題を上記の基本パターンを活用して解いてみましょう。

(1) 定義
著作権法は「著作物」を保護する法律で、「著作物」を創作した人が「著作者」となります。
そうすると、ここで使う定義は、
・「著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸等の範囲に属するもの(2条1項1号)」
・「著作者とは、著作物を創作する者(2条1項2号)」
となります。
そう、最初はこんな風にガチガチに法律で固めます。更に、
「著作者は、著作権及び著作者人格権を享有する(17条)」。
どんな問題でも、この3つの条文は必ず検討することになります。
さらに、美術館が、「映像を見せる行為」という文言があるので「上映」関連の定義を条文から拾い出します。
そうすると、
「著作者は、その著作物を公に上映する権利を専有する(22条の2)」とあり、
ここで、
・「上映とは、著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい、これに伴って映画の著作物において固定されている音を再生することを含むものとする(2条1項17号)」
・「公に」とは、「公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として」(22条)
・「公衆」とは、特定かつ多数を含む(2条5項)
となっています。

(2) 原則
 「美術館が館内に設置した大型ディスプレイで当該絵画を収録した映像を観覧者に見せる行為」が著作権侵害かを検討します。
 原則論では、その行為者の行為だけを判断します。行為をした諸々の事情は一切考慮しません。
まず、やるべきことは、この事例の中の著作物は何か?を探します。
登場する「著作物」は「絵画」ですね。
絵画は、2条1項1号の著作物の定義に該当します。
美術の著作物(2条1項1号、10条1項4号)の例示列挙の中にもあります。
そうすると、絵画を創作した人が著作者で(2条1項2号)、その人が絵画についての著作権及び著作者人格権を享有します(17条)。
一方、美術館はその絵画を所有しているだけで所有権を有しているに過ぎず、著作者ではありません。
ここで、
「当該絵画」である「著作物」を、
「映像」である「映写幕」により、
「大型ディスプレイで見せる」ので「映写」しているので、
「上映」しています(2条1項17号)。
さらに、
「観覧者に見せる」ことは、
「不特定多数の「公衆」に見せること目的としている」ため
「公に」、「上映」しており、著作者でない「美術館」の行為であれば上映権(22条の2)侵害となります。
よって、原則、美術館は上映権(22条の2)侵害です。

(3) 例外
美術館をなんとか救う方法はないか、ということで著作権の制限(30条から50条)の中から、探しだします。
例外は原則で考慮せず排除した諸事情をすべて検討します。
そうすると、
「美術館」は著作者ではないですが、所有権を有する所有者ですね。そんなに悪い人ではないはすです。そんな人の免除規定的な条文を探します。
① 「美術の著作の所有者は原作品により展示できる(45条1項)。」
というのが見つかります。
でも、「展示ができる」のであって、上映ができるわけではない。
② 小冊子に掲載できる(47条)のであって、
「大型ディスプレイで当該絵画を収録した映像を観覧者に見せる」という「上映する」までの例外ではない。
以上より、救済される手立てもありません。
よって、例外適用がなく、原則のまま「上映権(22条の2)侵害」となります。
したがって、本枝は不適切となります。

著作権法もプロセス重視で一つずつ丁寧に解くと、覚えるべき定義、さらに定義のなかでどの文言が重要なのかも見えてきます。
このように解けば1年分1回解くだけで、10年分10回解くよりも価値が高い時間を過ごすことができ、実力は目覚しく向上します。
是非、ご参考になさってください。



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