【知財】
商標権の力

 


皆さんこんにちは。前回までに、知財検定試験で重要性の高い、特許権、著作権についてお話しました。今回は、その次に重要性の高い商標権についてお話しします。
商標とは、簡単に言うと、商品や役務(サービス)についている名前のことです。前者の例としてSONYのPlayStation®、後者の例としてヤマト運輸の宅急便®があります。では、商標に関する以下の事案を考えてみましょう。

新潟県にあるX社では、自社が製造販売する万年筆の新商品につき、地元の英雄にちなんだ「謙信」という名前で売り出そうと考えています。しかし、調査の結果、Y社が「KENSHIN」という名称をボールペンを指定商品として、2010年に商標登録していることがわかりました。もっとも、商標登録後、Y社が「KENSHIN」という名称を使ってボールペンを製造販売している事実はないということです。X社としては、「謙信」の名称を商標登録した上で、万年筆を販売したいと考えていますが、それは可能でしょうか。


1.商標権の効力
商標登録するためには、特許権と同様、特許庁長官に出願して審査を受け、商標権を取得する必要があります。そして、商標登録されると、これも特許権と同様に独占排他権となり、その商品や役務にその名称を使用できる権利を独占出来ますし、無断で使用している者に対しては、使用をやめるように請求出来ます。
ただし、この商標権の効力は、少し変わっていて、自身が独占的に使える部分(これを専用権といいます。)と他者の使用を排除出来る範囲(これを禁止権といいます。)が異なるのです。
Y社はボールペンという商品を指定して、「KENSHIN」という名称で商標登録していますから、あくまで、その指定商品、登録商標のみ独占的な使用が出来るに過ぎません。よって、Y社でも万年筆に「KENSHIN」という名前を付けて販売する権利は独占出来ないのです。しかし、他者の使用を排除するという点では、登録商標と同一の名称、同一の商品・役務だけでなく、類似の範囲まで効力が及びます。この点、「KENSHIN」という名称と「謙信」という名称は呼称の点で類似していますし、ボールペンと万年筆は、用途の点で類似しています。よって、Y社はX社が「KENSHIN」に類似する「謙信」という名称を万年筆に使用することを排除できます。
よって、このままでは、X社は「謙信」の商標登録が出来ないのはもちろん、使用することもできません。

2.不使用商標取消審判
そこで、次に検討すべきは、Y社の商標登録を取り消すことができないかということです。Y社は、商標登録しているものの、実際にその商標を使用していません。商標権者等が登録商標を、日本国内で3年以上継続して使用していない場合、その商標登録の取消しを求めることができます(これを不使用取消審判請求といいます。)。今回のケースでは、Y社によって「KENSHIN」の名称でボールペンが製造販売された事実は8年間ないのですから、X社が不使用取消審判を請求するとこれが認められ、Y社の「KENSHIN」の商標登録は消滅しますから、X社は「謙信」を商標登録できる可能性が出ます。また、商標登録されると、万年筆に「謙信」という名称を独占的に使用することができます。そして、この商標権は、他の知的財産権と異なり、一応10年の存続期間が定められているものの、何度でも更新することが可能です。よって、更新を続ける限り、半永久的に独占使用ができるのです。

以上のように、商標権は特許権と似ている部分もありますが、異なる部分もあります。この異なる部分を意識して整理しておくことが、試験対策には役立ちます。