【行政書士】記述式問題対策講座・第9回


「記述式問題対策講座」
こんにちは。TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。暑い日が続きますが、勉強ははかどっていますか?今日も楽しく勉強していきましょう。

第9回の今回も、前回までにお伝えした4つの解答手順を踏まえて、実際に行政法の問題を解いていきます。

【行政法の傾向と対策③】

まずは記述式問題を解くための4つの手順を、しつこいぐらいに確認します。

<1.「問い」を正確に把握する>
<2.「問いの形」から「答えの形」を作る>
<3.解答に必要な知識を記憶喚起する>
<4.「答えの形」に法的知識をはめ込む>


今回は<3.解答に必要な知識を記憶喚起する>の手順です。
回答に必要な知識を記憶喚起します。つまり、「答え」となる条文や判例を「頭の中から」引っ張り出します。
これを実践してみましょう。

平成18年の問題44の「問い」は、
行政処分の相手方でない者が、営業利益を害されるという理由で、処分取り消し訴訟を提起した場合に、裁判所は、どのような理由でどのような判決をするかということでした。

まずは、どのような判決をするか?という「問い」に答えるためには、判決の種類を知っていなければなりません。判決の種類には、
「訴訟判決」(訴え却下判決)
「本案判決」(請求棄却判決・請求認容判決)

があります。

「訴訟判決」とは、本案審理自体を拒否する判決。いわゆる「門前払い判決」。

「本案判決」のうち「請求棄却判決」とは、本案審理を行い、原告の請求を否定する原告敗訴の判決。
「本案判決」のうち「請求認容判決」とは、本案審理を行い、原告の請求を肯定する原告勝訴の判決。

つぎに、どのような理由で?という「問い」に答えるためには、それぞれの判決がどのような理由でなされるかを、知ってなきゃいけない。

それぞれの判決がなされる理由は、
「訴訟判決」は、取消訴訟の提起が法律上の要件(訴訟要件)を欠き不適法であることを理由になされます。

「請求棄却判決」は、行政庁の処分・裁決に違法性はなく、原告の主張に理由がないことを理由になされます。


「請求認容判決」は、行政庁の処分・裁決に違法性があり、原告の主張に理由があることを理由になされます。


では、本問の場合、裁判所は、いかなる判決をいかなる理由でするでしょうか?

まずは、訴訟判決をするべきかどうか、本問事案で訴訟要件を満たしているかどうかを考えます。もし、訴訟要件を満たさないのなら、具体的に請求が認められるかどうか考えることなく、訴え却下判決をすればよいということになります。

訴訟要件を検討するには、検討すべき訴訟要件を知っていなければなりません。

訴訟要件は以下の通り
((1)~(3)は特に重要)

(1)処分性
(2)原告適格
(3)(狭義の)訴えの利益
(4)被告適格
(5)裁判管轄
(6)出訴機関
(7)訴えの形式
(8)当事者能力・訴訟能力
(9)(例外的)不服申立前置


本問事案では、以上の訴訟要件を満たすでしょうか?

本問で対象となっているのは、行政処分だから、処分性はありますが、では、近隣の飲食店経営者に原告適格はありますか?

行政事件訴訟法9条が、原告適格について規定しています。

9条では、処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴えは、当該処分または裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができます(1項)。
法律上の利益の有無を判断するにあたっては、当該処分または裁決の根拠法令の趣旨・目的等を考慮するとしています(2項)。保健所長がした営業許可処分は「食品衛生法に基づく」処分ですね。
そこで、食品衛生法の趣旨・目的から、近隣の飲食店営業者に法律上の利益があるかどうかを考えます。食品衛生法の趣旨・目的は、法律の名称からも分かるように、食品の衛生を守ることです。

つまり、近隣の営業者の営業上の利益を保護することではありません。

また、処分の相手方でない者に、取消訴訟の原告適格があるかについて、既存業者の営業上の利益は、「反射的利益」にすぎず、「法律上の利益」はない、という判例があります。

したがって、近隣の飲食店営業者には、保健所長のした営業許可処分の取り消しを求める法律上の利益はなく原告適格がないことになります。

つまり本問事案は、

既存の営業者に法律上の利益がない
⇒原告適格を欠き訴訟要件を満たさない
⇒却下判決

ということになり、これが、本問を解くために必要な知識ということになります。

次回は、「答えの形」に法的知識をはめ込むを、実践し、解答を完成させていきます。

お楽しみに。

(つづく)