【行政書士】

平成28年度行政書士試験を振り返る
(法令択一編・基礎法学・憲法)


こんにちは。TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。

前回に引き続き、平成28年度行政書士試験の振り返りをしていきましょう。今回から、数回にわたって、行政書士試験の本丸、法令択一を振り返っていきます。現在、TACホームページにて、本試験データリサ―チというサービスを行っております。そのデータの集計結果をもとに、問題の難易度等を見ていきましょう。

難易度は、データリサーチ上の正答率によって、以下のように分けています。
60%超  易しい(合格には得点しなければならない問題)
50%超~60%以下  普通(得点しなければならない問題)
40%超~50%以下  やや難しい(合否を分ける問題)
40%未満  難しい(不正解でも合否には問題ない問題)
まずは、基礎法学と憲法を見ていきましょう。

≪基礎法学の振り返り≫
まず難易度は、例年に比べて、易しいと言えます。2問得点することも可能でした。

問題1 基礎法学(裁判員制度)易しい
裁判員制度の問題でした。裁判制度の問題は、基礎法学では頻出テーマですが、なかでも、裁判員制度の問題は、大ヤマと言われていたテーマでしたので、準備されている方も多かったのではないでしょうか。また、出題形式も、穴埋め&組合せのため、解答しやすく、正答率もよかったです。


問題2 基礎法学(法律の形式)やや難
条文の形式、具体的には、条・項・号・枝番の使い方に関する問題でした。日ごろから、条文を引きながら学習されている方であれば、特に難しい問題ではありませんでした。ただ、実際の条文を見たことがない、という場合には、難しかったといえます。このような問題が出題されることからすれば、出題者の意図として、学習の際には、実際の条文を引きながら学習してほしいということもあるかもしれません。


≪憲法の振り返り≫
まず難易度は、例年に比べて、やや難しいと言えます。ただし、問題5・7の2問は確実に得点したいところです。

問題3 憲法統治(最高裁判所裁判官の国民審査)難しい
最高裁判所裁判官の国民審査の法的性質に関する問題でした。この制度が、判例上「解職」の制度であると解されていることが分かれば、空欄アだけで、1から4は誤りだということが分かります。比較的容易に答えは出せますが、それが分からないと、やや迷う問題です。昭和27年の古い判例ですし、また、判例問題とはいえ、国民審査の法的性質は、理論的な問題でもあります。受験生にとっては、ここまで手が回らなかった方も多かったのではないでしょうか。そのため、難易度は高くなっています。


問題4 憲法人権(住基ネット)やや難しい
比較的新しい判例からの出題です。憲法13条関連の問題ですね。言葉は明示されていませんが、プライバシー権に関する問題です。判旨の論旨に含まれていないものを選択する問題ですが、判旨を丁寧に読んでいないと、なかなか正確に判断できず、やや難しい問題といえます。


問題5 憲法統治(立法)普通
この問題は、条文&短文問題ということもあり、難しくない問題でした。ただし、思ったほど正答率はよくありません。これは、柱書にある「必ずしも憲法上明文では規定されていないもの」という点を読み飛ばしてしまった方が多いのではないかと考えられます。正解の肢2は、内閣の法案提出権ですが、これは解釈上認められていますが、憲法上明文があるわけではありません。柱書を読み飛ばすと、どれが正解か分からなくなってしまいます。柱書も含めて、問題文を丁寧に読むことが大切だということが分かる問題でした。


問題6 憲法人権(信教の自由・政教分離)やや難しい
信教の自由・政教分離に関する判例の知識を問う問題でした。事案に対して、合憲か違憲かという二者択一的な問題ではなく、判例の条文解釈を行っている部分が出題されており、知識的に細かいところを問う問題でしたので、正答率はやや低くなっています。本問や問題4を見ると、判例の結論だけを押さえるのではなく、判旨の原文を実際に読んでみるという学習が求められているといえます。


問題7 憲法人権(法の下の平等)易しい
憲法の中では、一番易しい問題となりました。肢4は、受験生であれば、誰しもが学習する最重要判例です。そのため、正誤判断が明らかだったため、他の肢が分からなくても、正解をすることは容易でした。あとは、昨年出た民法の再婚禁止規定違憲判決は、肢5で出題されています。行政書士試験では、新しい判例は比較的すぐに出題されることのいい例ですね。新しい判例、特に違憲判決は、直ぐに出題されることも想定して、しっかり勉強をしておかなければなりません。


以上、基礎法学と憲法の5肢択一式問題の振り返りでした。

次回は、行政法の5肢択一式問題について振り返っていきましょう。


≪民法の問題46≫
(TAC作成の解答例)
夫婦の実質上の共同財産の清算分配、離婚後の相手方の生活の維持、精神的損害の賠償という内容。
(45字)

本問は、超難問でした。財産分与の目的と機能に関する問題です。2年連続、親族法から出題されたことにも驚きでしたが、内容的にも「財産分与の目的・機能」についての判例の解釈、文言を問う問題でした。家族法の分野は、択一では条文知識が問われることがほとんどですから、記述用として、親族法に絡む判例の知識を準備できる受験生はほぼ皆無といってもいいのではないでしょうか。現場思考で、財産分与の趣旨を導き出せるか。その思考力を試すような問題でした。得点自体が難しい問題といえます。

(私が考える採点基準)
夫婦の実質上の共同財産の清算分配・・・4点
離婚後の相手方の生活の維持・・・・・・4点
精神的損害の賠償という内容・・・・・・6点
損害賠償請求・・・・・・・・・・・・・6点


以上からすれば、問題46で得点することは期待できませんが、問題44、45は典型テーマですので、合格者レベルで、3問合計30~36点前後の得点は可能といえます。

難しい問題を解けるようにするために、学習範囲を広げるのではなく、基本的な問題で失点しないように、基礎を徹底的に固めること。

これが記述式問題で求められていると考えられます。


次回は、法令択一を少しずつ振り返っていきたいと思います。