【行政書士】

平成28年度行政書士試験を振り返る
(法令択一編・行政法)


こんにちは。TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。

今回も、平成28年度行政書士試験の振り返りをしていきましょう。今回は、行政書士試験の行政法の択一問題を振り返っていきます。
先日実施したTACのデータリサーチ上の正答率によって、以下のように分けています。

60%超  易しい(合格には得点しなければならない問題)
50%超~60%以下  普通(得点しなければならない問題)
40%超~50%以下  やや難しい(合否を分ける問題)
40%未満  難しい(不正解でも合否には問題ない問題)
まずは、基礎法学と憲法を見ていきましょう。

≪行政法の振り返り≫
行政法は典型テーマがほとんどを占めており、択一19問中15問は得点したい問題でした。

<行政法の一般的な法理論>
問題8 取消と撤回 易しい
問題9 行政裁量 易しい
問題10 行政処分の違法性 普通
問題9行政裁量の問題は、今回の行政書士試験の法令科目では一番長い問題でしたが、内容的には、肢1が憲法でも学習するマクリーン事件を素材とするもので、明確に誤りと判断できる問題でした。ただ、肢1の正誤判断ができないと、他の肢の正誤判断は難しく、無駄に時間を費やしてしまうトラップ問題でした。正答率は良いので、この問題に時間を割くことなく切り抜けられたかどうかがカギでした。問題10行政処分の違法性については、肢アは難しかったですが、イウエが易しく、組合せ問題ということもあり、基本問題の部類に属すると言えるでしょう。
全問正解が目標です。


<行政手続法>
問題11 処分と行政指導 易しい
問題12 法的義務と努力義務 易しい
問題13 申請に対する処分と届出 易しい
いずれも条文知識を問う単純正誤問題でした。正答率は良く、すべて70%以上の方が正解されています。合格するには、このような条文問題をしっかり得点していくことが必須となります。全問正解が目標です。


<行政不服審査法>
問題14 再調査の請求 やや難しい

問題15 審理員 普通
問題16 審査請求に対する裁決 普通

今年大改正があった行政不服審査法です。予想通り、行政不服審査法の択一問題は2問から3問へ増問されました。問題14再調査の請求はやや正答率が低いものの、問題15審理員、問題16裁決ともに、正答率は良く、受験生がよく準備していたことが伺えます。いずれも、条文知識を問う問題ですから、行政不服審査法も、全問正解を目指さなければならない科目となります。5肢択一のみならず、今後は多肢や記述式での出題も考えられますので、十分な準備が必要になると考えられます。2問正解、もしくは、全問正解が目標です。


<行政事件訴訴訟法>
問題17 法律上の利益 易しい
問題18 訴訟の提起 易しい
問題19 処分性 易しい

すべて易しい部類の問題でした。問題17法律上の利益ですが、肢エ・オが明らかに誤りと分かり、アイウで迷ったとしても、解答は比較的容易に出せた問題といえます。問題18・19は判例問題でしたが、こちらも問題18は肢3問題19は肢3の正誤判断が容易なため、他の肢が難しくても正解は易しい問題でした。これらの問題を見て、あまり見かけない判例があるからと言って、むやみに判例学習の手を広げないようにしましょう。基本的な判例の学習で十分に答えが出せるように作ってあると言えます。全問正解が目標です。


<国家賠償法・損失補償>
問題20 国家賠償法 普通

問題21 損失補償 難しい
問題20は、肢2が、一見正しいように見えて、実は誤っているというひっかけだったために、正解である肢4がやや正答率が低くなっていますが、そのような読み間違いをしなければ、肢4が正解と導ける問題でした。これに対して問題21損失補償は正答率が悪かったです。損失補償は国家賠償法と比べて、毎年出題されるテーマではないため、準備が不十分だったと思われます。また取り上げている判例も、損失補償の判例としてはあまり見かけないものであるため、正誤判断が容易にできるとは言えないものでした。とはいえ、この問題が出題されているからと言って、細かい判例までフォローしていくのは得点効率が悪いですから、基本的な判例を押さえれば十分であることは、行政事件訴訟法と同様です。1問正解できればよいでしょう。


<地方自治法>
問題22 条例 普通
問題23 地方公共団体の事務 やや難しい
問題24 地方財務 易しい
地方自治法の3問の難易度ですが、問題22条例は普通です。問題23地方公共団体の事務の肢オを誤りと判断するのは難しいですが、肢ア・イの自治事務、法定受託事務の定義は基本ですから、組合せ問題ということで、比較的容易に正解を導くことができます。問題24地方財務も、肢1、地方債の起債が許可制でないことが頭にあれば容易に答えは出せた問題です。
例年になく、地方自治は簡単だったと言えますので、2問は正解したいところです。


<行政法総論>
問題25 上水道の利用関係 易しい

問題26 朝日訴訟 やや難しい
問題25上水道の利用関係の問題は、かなり細かいところまでを問う問題でしたので、難易度はかなり高いと思っていましたが、ふたを開けてみたら、以外に正答率は良かったです。現場思考で、常識的な観点から、肢1が正しいと判断された方が多かったのではないでしょうか。問題26朝日訴訟ですが、この判例は憲法では重要判例の一つですが、行政法の問題として出題されたのには驚きました。憲法論ではなく、生活保護受給権という一身専属権が相続されるのかどうか、という観点からの出題です。相続されないという結論から、肢2・3まで絞り込めたのではないかと思います。実質的には2択問題といえるでしょう。できれば1問は正解したいところでした。


行手・行審・行訴の主要三法で失点をせず、法理論と地方自治法でどれだけ上乗せできたかどうかが、ポイントとなるでしょう。

以上、行政法の5肢択一式問題の振り返りでした。

次回は、民法の5肢択一式問題について振り返っていきましょう。