【行政書士】日本国憲法の話
今だから、もういちど憲法を読み直そう-前文



こんにちは!TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。
前回からはじまりました、日本国憲法の話。まずは、憲法の前文から、読んでいきましょう。

前文というのは、法の最初に書かれている文章で、その法の目的などが書かれます。みなさんは、いままで前文を読んだことがありますか?

私は、初めて前文を読んだとき、心が震えました。

国民は、個人として最も尊い存在であるとする基本的人権の尊重。
国家は国民の幸福のためにのみ存在するという国民主権。
私たちが幸せになるための礎となる平和主義。

具体的には、この日本国憲法の三本の柱を宣言しています。

《日本国憲法の三大原理》


    1.基本的人権の尊重
2.国民主権
3.平和主義



しかし、それと同時に、そこには、日本国民が全世界を前にしてどういう役割を果たしていくべきなのか。これからの日本のあり方、さらには私たちの進むべき道が述べられていました。高い理想とともに、それを実現していくという決意が高らかに宣言されていたんです。
少し大げさに聞こえるかもしれませんが、前文を読んでみると、そのことを分かっていただけると思います。

それでは、前文を読んでみましょう。

【前文】
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。


これが、前文の全内容ですが、段落ごとに読んでいきましょう。

【前文第一段】


日本国民は、正当に選挙された国会における①代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、②政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに③主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも④国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その⑤権威は国民に由来し、その⑥権力は国民の代表者がこれを行使し、その⑦福利は国民がこれを享受する。これは⑧人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、⑨これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。


下線①~⑨は便宜上、私がつけています。順に読んでみましょう。

①代表民主制を採用することを述べます。私たちのことは、時の権力者や一部の特権階級の人が決めるのではなく、私たち自身が決めていきます。ただし、1億人を超える日本国民全員が、一所に集まって、様々なことを決めていくことは事実上不可能ですから、代表者を決めて、その代表者が様々なことを決めていくことになります。
②戦前、政府の暴走を抑えきれずに、第二世界大戦へと突き進み、多くの悲しみを生み出してしまったことを反省して、政府の行為によって、二度と戦争はしないと決意しています。
③主権が国民にあることを宣言します。戦前の天皇が主権者でしたが、戦後は、国民が主権者となりました。
④~⑦では、国政の意義について述べています。国政は、私たち国民が信頼してお願いし、託しているからこそ、行うことができるんだということを述べます。そして、国政によって、生じた利益があれば、その利益はだれのものになるかといえば、政治家などの一部の者の利益になるのではなくて、私たち国民のものということになります。


《国政の原理》⇒⑧普遍の原理

④国民が信頼している ⇒ 国政

⑤権力が偉いのは ⇒国民に根源があるから

⑥権力の行使 ⇒ 国民の代表者が行使

⑦国政によって得た利益 ⇒ 国民のもの


ここは、「人民の、人民による、人民のための政治」という、リンカーンのゲティスバーグ演説で言われた言葉を引いているといわれている部分です。
⑨憲法の反する国家の行為は許さない、という違憲審査制を規定して、憲法を守ろうとしています。


【前文第二段】


日本国民は、①恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、②平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、③平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、④全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。


特に私が愛してやまない、前文第二段です。世界平和を高らかに決意表明します。読み解いてみましょう。
①私たち、日本国民は、永遠の平和を願っています。永遠の平和というのは、人間社会を支配する最高の理想です。
②全世界の人々は平和を愛しています。その平和を愛する全世界の人々が、まさか、私たち日本国民を傷つけることなんてありません。私たち日本国民は、武器を持って戦うとか、軍を持つとか、そんなことで、自分たちの安全と生存を守ろうというのではなく、平和を愛する全世界の人々を「信じる」ことによって、私たち自身の安全と生存を保持しようと心に決めました。
③国際社会は、平和を維持しようとしています。そして、専制と隷従、圧迫と偏狭などという、平和を破壊してしまう要素。これを、この世から永遠に消し去りたいと努力しています。そういう国際社会のなかで、日本国民は先頭に立って、平和な社会を作る重要な役割を果たしたいと思っています。
④日本国民は確信をもっています。それは、全世界の人々がみなすべて、「恐怖」「欠乏」から解放され、この「平和のなかで生きていく権利」があるということです。


【前文第三段】


われらは、①いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、②自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。


ここでは、世界各国がお互いに協調していかなければならないという、国際協調主義について述べていきます。
①いかなる国家も、自分の国のことばかり考えるのではなくて、他国のことも考えなければなりません。
②そのようにすることが、日本が日本として存在し、そして、他国との対等な関係を築いていくために必要だと信じています。



【前文第四段】


日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。


私たちは、この理想を空想で終わらせるのではなく、この理想を達成するために、全力を注ぐことを誓っています。

以上が前文の内容になります。みなさんは、この前文を、読んでどう思われましたか?


前文に掲げられた世界平和を、ユートピア的だとして切って捨てて、「目には目を、歯には歯を」というような力の政治を行うのは簡単かもしれません。しかし、そのような政治が、第二次世界大戦などの戦争を生み出し、深い悲しみを生み出したわけです。
しかし、たとえ困難であろうとも、世界平和という理想の実現を強く信じ、世界平和に向けて全精力を挙げて取り組む努力を続けることこそが、戦後から今、そして、これからも国政のあり方、日本国民の進むべき道なのではないかと思うわけです。

次回からは、憲法の条文を1条から一緒に読んでいきましょう。

以上



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