【行政書士】日本国憲法の話

今だから、もういちど憲法を読み直そう

-1条


こんにちは!TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。

昨年の8月に、天皇陛下が、天皇を退位なさりたいとの意思が感じられるおことばを述べられてから1年がたちました。6月には、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」が成立し、天皇陛下の退位が実現することとなりました。
天皇制は、明治以降、終身在位制ですから、生前退位の制度はありませんでしたが、この特例法の成立で、約200年ぶりに「天皇の退位」がなされることになります。
2018年末に天皇が退位、皇太子が天皇に即位し、19年元日に改元する日程が有力視されています。

この天皇制ですが、日本国憲法制定の際、天皇のあり方が問題となりました。
憲法上、天皇について規定しているのは第1章(1条~8条)ですが、大日本帝国憲法と日本国憲法では、天皇のあり方は大きく変わりました。大きな違いについて整理してみました。

《大日本帝国憲法と日本国憲法の非核》

大日本帝国憲法日本国憲法
天皇の地位の根拠神勅国民の総意
天皇の地位絶対不可侵象徴
主権者天皇国民
天皇の権限統治権の総覧者政治的権能を有しない


大日本帝国憲法の下で、天皇は現人神(あらひとがみ)として、絶対不可侵の存在とされていました。法的にも、天皇が主権者でしたし、統治権の総覧者として、統治権のすべてを持っていました。
しかし、日本国憲法では、主権者は国民となり、その国民みんなが天皇を認めているから、天皇が存在するんだという考えに変わりました。そして、現在、天皇には政治的権能は一切持っていません。

このような変化を見たのは、GHQ(連合国軍総司令部)の第二次世界大戦の戦後処理政策にも大きく関わっています。大戦後、連合国や、アジア・太平洋地域などの国際世論は、天皇制廃止を求める意見が多くありました。ところが、日本国内では、天皇制を擁護する声が圧倒的でした。そこでGHQは、日本の占領政策を平和的に進めるにあたって、天皇制を存続した方がよいと考えました。しかし、大日本帝国憲法での天皇制をそのまま維持することは、天皇制廃止を求める国際世論を収めることはできません。そこで、天皇の強大な権力をなくし、さらに、戦争放棄を求めることで、これらの声を交わそうとしたわけです。


それではまず、天皇の地位について規定しているのが1条を読んでみましょう。
【1条】

天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。


象徴というのは、目に見えない観念的・抽象的なものを、具体的に表現することをいいます。たとえば、「平和の象徴」は「白い鳩」とするようなことです。つまり、「日本」といえば「天皇」が思い浮かぶというような存在ということです。
ただ、このような天皇の象徴性は、大日本帝国憲法においてもありました。それを日本国憲法では1条で明文化したわけです。これは、天皇を象徴として位置づけることで、憲法上も、天皇には象徴としての役割のみを担わせて、それ以外の権能は有していないということを実現していくことになります。このような天皇のあり方を象徴天皇制と呼んだりします。

象徴天皇制では、よく「天皇は元首なのか?」という議論があります。ただ、この議論は、「元首」をどのように定義づけるかによって元首かどうかが決まります。ですから、「元首」の定義づけによって、天皇が元首かどうかが決まることになります。
一般に、「元首」とは、「対外的に国家を代表する機関、国内的には行政のトップ」と言われます。そうすると、日本国憲法の場合には、日本国家の代表者ではありませんし、国政に関する権能を有していませんから、行政のトップでもありません。したがって、この定義からすれば、天皇は元首ではないことになります。

とはいうものの、外国の大使・公使の接受を行ったりしていますから、国際的には、天皇は元首と同じように認識されているとも言えます。

次回は、憲法2条を読んでいきましょう。

なお、来週の8/16はお休みを頂戴して、次回は8/23になります。

お盆休みを迎える方はしっかりリフレッシュして、ラストスパートに備えましょう!

以上



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