【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
2条③生前退位できるか


こんにちは!TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。


前回に引き続き、憲法2条に絡む問題を見ていきましょう。


【2条】

皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。


昨年平成28年8月8日、現在の天皇が、天皇としての公務について「お気持ち」を述べられました。(このおことばは、宮内庁のホームページで閲覧することができます。

この中で、天皇は、高齢による体力の低下などの理由から、今まで通り、国事行為や象徴としての行為を行うことが難しくなるのではないかとの懸念を示されました。
そこで、天皇の生前退位ということが法的な問題として語られることになります。

現在、天皇の地位が承継される原因は、「崩じたとき」つまり、「亡くなられたとき」になります。


 【皇室典範 第1章 皇位継承】

4条 天皇が崩じたときは、皇嗣が、直ちに即位する。


そして、皇室典範には、生前退位について規定した規定はありません。事実上、生前の退位は認められていないことになります。

「それなら、皇室典範を改正して、生前退位を認める改正を行えばいいじゃないか」ということにもなりそうですが、ここに、問題があります。

憲法上、天皇は国政に関する権能を有しないとされています(憲法4条)。そうすると、この天皇のお気持ちをきっかけに、法改正がなされるとすると、天皇が、法を作ること、国政に関与することになり、憲法上、問題があるのではないか、ということです。

とはいうものの、天皇はご高齢ですから、そこは杓子定規に考えず、特例を作って、今の天皇一代限り、特例法によって、生前退位をすることができるようにしました。

それが、平成29年6月16日に公布されました。この法律の1条でこの特例法の趣旨が述べられています。

 【天皇の退位等に関する皇室典範特例法】

1条 (趣旨)
 天皇陛下が御即位以来28年を超える長期にわたり、国事行為のほか、全国各地への御訪問、被災地のお見舞いをはじめとする象徴としての公的な御活動に精励する中、83歳と御高齢になられ、今後これらの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となることを深く案じておられることに対し、国民は、御高齢に至るまでこれらの御活動に精励されている天皇陛下を深く敬愛し、この天皇陛下のお気持ちを理解し、これに共感していること、さらに、皇嗣である皇太子殿下は57歳となられ、これまで国事行為の臨時代行等の御公務に長期にわたり精勤されておられることという現下の状況に鑑み、皇室典範第4条の規定の特例として、天皇陛下の退位及び皇嗣の即位を実現するとともに、天皇陛下の退位後の地位その他の退位に伴い必要となる事項を定めるものとすること。


この特例法においては、私たち国民が、天皇のお気持ちに同調して、生前退位を認めていくということになります。

もう一つの問題として、なぜ特例法なのか。法律を作ることが出来るなら、なぜ皇室典範を法改正して、生前退位を制度として認めないか、ということです。

歴史的に、生前退位が認められると、天皇が時の政治権力者によって退位を強いられてしまう事にもなりかねません。そのように、天皇が政治利用されてしまうことを防ぐために、現在の皇室典範では生前退位という制度を採用していないといえます。

以上のように、天皇の生前退位には、いくつかの問題点があり、これを恒久的な制度として認めるためには、まだまだ様々な議論をする必要がありますね。

次回は、3条を読んでいきましょう。

以上




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