【社会保険労務士】
「通勤災害とビールの関係?」



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 7月に入り暑い日も続いておりますが、読者の皆様の仕事の調子はいかがでしょうか?こんな暑い日は、仕事帰りに「ちょっと一杯」ということで、ビールを飲みに行く人も多いと思います。私の場合はビールではなく、最近は、大分県産の「かぼすハイボール」というものにはまっているのですが。。。今回は、この「ビールを飲みに行く」という行為と「通勤災害」の関係について説明したいと思います。
 そもそも病気やケガなどをして病院に行った場合、健康保険被保険者証(通称・保険証)を受付で提示すると、診療費の自己負担は3割で済みます。この診療費の自己負担割合も歴史的に変遷がありまして、昔は、被保険者本人は自己負担「0円」の時代がありました!今では信じられませんが、高度経済成長当時の日本は、労働力人口が非常に多く、お年寄りの人口比率も相対的に低かったので、本人自己負担「0円」でも医療保険制度は運営が可能でした。その後、昭和59年に自己負担割合が「1割」になり、平成9年には「2割」、平成15年から「3割」となって、現在に至っています。この数字の変遷を見ただけでも、医療費財政が逼迫しているということは分かると思います。少子高齢化といわれる時代は、昭和59年頃から始まっていたので、政府の初動対策が遅かったのかなと思います。
 ところで、健康保険と似たような制度に「労災保険」という制度があります。この制度は、労働者が業務上の事由で、負傷などをして病院で治療を受けた場合に、労災と認定されれば、その診療費の自己負担は「0円」になるという制度です。事務関係の仕事が主な職場では認知度は低いかもしれませんが、工場や建設現場などでは馴染みの深い制度です。健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料などは、労働者自身も給与天引きで引かれているので認識していると思いますが、労災保険料というのは事業主が全額負担していますので、世の中には意外と知られていない制度なのでは?と思うことがあります。
 先日、神宮球場で野球観戦中に、ビール販売の女性(おそらくアルバイト)にファールボールが当たりそうになりました。幸いかすり傷程度で大事には至らなかったのですが、もし当たって大ケガをしていた場合どうなると思いますか?私の前列に座っていた男性二人組みは、「アルバイトは、労災は適用されないから、ケガしなくて良かったね。」と言っていましたが、これは大きな間違いです。労災保険では、適用労働者に関して次のように規定されています。

『アルバイト、パート、臨時雇い等、身分が不安定な者であっても、適用事業に使用
され、賃金を支払われる者は、適用労働者となる。』


というわけで、アルバイトやパート労働者であっても業務上の負傷であれば、労災保険制度が適用されます。
 この労災保険制度には、「業務災害」のほかに「通勤災害」というものがあります。この通勤災害という制度、私自身、社労士の試験勉強をするまでは、詳しくは知りませんでした。ひらたく言うと、通勤途中にケガなどをした場合、それは「通勤災害」の可能性があり、もし通勤災害と認定されれば、診療費の自己負担額は初回だけ「200円」で、後はすべて無料です!しかし、この通勤災害には厳しい規定がありまして、

『通勤とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間の往復(移動)を、合理的
な経路及び方法により行うことをいう。また、労働者が移動の経路を逸脱し、又は
移動を中断した場合には、その逸脱又は中断の間及びその後の移動は、通勤としない。』


 つまり、通常の通勤経路の場合はよいのですが、その経路を逸脱した場合には、その後の移動は通勤ではなくなります。帰りに「ちょっと一杯」ということで、ビールを飲みに行った瞬間、それは通勤ではなくなり、もしケガなどをしても通勤災害として認定されなくなるというわけです。一応例外として、その逸脱が日常生活上必要な行為であって、やむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、通勤と認められますが、「俺は、毎日帰りにビールを飲むことが、日常生活上必要な行為だ!!」と言っても認められませんので、お酒が好きな人は注意して飲みましょう。

つづく。