【司法書士】試験科目の内容を知ろう!
【不動産登記法編】


 梅雨入り前だというのに,真夏日を記録する日も増えてきました。とはいえ,朝夕の寒暖差は大きいので,風邪をひいたりしないように注意してくださいね。
 今回も,司法書士試験の試験科目についてご紹介してまいります。今回からは,午後の部,その中で最も出題数が多い不動産登記法(択一)をご紹介します。

1 不動産登記法とは?
 不動産登記法は,民法等で生じた土地や建物(不動産)についての権利や法律関係を不動産登記簿に記録するための登記の手続について定められた手続法です。
 民法で学習することと思いますが,物権は排他性を有するものですから,物権の移転や設定があった場合には,これらの事実や権利関係につき第三者が外部から容易に認識できる状態にしておかなければなりません。このように,一定の法律関係や事実関係の有無については,常に外部から認識することができるもの,たとえば登記や占有などを伴わなければならないという原則を「公示の原則」といいます。
 動産(不動産以外の物)であれば,その動産を持っている者(動産の引渡を受けた者,占有)は,第三者に対し自らがその動産の所有者であるという権利を主張することができます。これを「対抗要件」といいます。
 これに対して,不動産の場合,例えば,ある建物にAが住んでいるとします。しかし,Aは,自己の所有権に基づきその建物に住んでいるのかもしれませんし,その建物の所有者から借りて住んでいるだけかもしれません。また,この建物には,所有者が銀行からお金を借りて,抵当権が設定されているかもしれません。このように不動産については,その外形からは事実や権利関係が明らかであるとはいえません。このような状態では,不動産を売買しようとする場合,取引の安全が図れません。そこで,その不動産についての事実や権利関係を第三者が外部から容易に認識できる一定の外形を備えた不動産の登記簿を登記所(正式には,法務局といいます。)に備え置き,誰でも調べることができるようになっています。不動産を取引しようとする者は,登記所でその不動産の登記簿に記録されている事項を調べることによって,その不動産の所有者や抵当権の有無など権利関係を確認することができるわけです。このように,不動産についての権利関係を明らかにし,取引の安全を図るために設けられたのが不動産登記制度であり,その手続の詳細を定めたものが不動産登記法です。

2 不動産登記法の構成
 司法書士試験でいう不動産登記法とは,法律である不動産登記法の他,政令である不動産登記令,法務省令である不動産登記規則も含みます。また,法務省がその下部組織である法務局に不動産登記事務の取扱いについて指示を出したもの(「通達」や「回答」といいます。)も「先例」として試験範囲に含まれます。その他,登記簿に一定の事項を記録してもらうために不動産登記を申請する者が国に納める税金についての法律(登録免許税法)なども試験範囲です(主として,税率と計算方法が問われます)。

3 司法書士と不動産登記法
 不動産登記は,司法書士の業務として最も大きな割合を占めるものです。不動産登記の手続(不動産登記の申請手続)は,一般市民(本人)では難しいので,司法書士が本人を代理して手続をとることがほとんどです。
 本人を代理して手続をとるとは,登記の申請書やその添付書面(登記原因証明情報)の作成や申請書の法務局への提出のほか,不動産手続全般の説明や必要書類(登記済証,登記識別情報通知,印鑑証明書,住所証明書など)の手配を依頼することなど多岐にわたります。

4 民法との関係
 不動産登記法は,民法により生じた事実や権利関係を登記簿に記録するための手続法ですので,その手続を理解するためには,前提として実体法である民法の学習が不可欠です。民法を学習せずに,あるいは,学習が不十分である状態で,不動産登記法を学習しても,これを習得することはできません。特に,担保物権である抵当権や根抵当権については民法の条文の理解が極めて重要になります。

5 司法書士試験のおける位置づけ
 先にも述べましたように,不動産登記法の出題数は,午後の部の出題問題数35問中17問(配点1問3点×17=51点)であり,多肢択一式の問題で,民法の次に出題数が多い最重要科目です。この17問の内訳は,登記識別情報の通知,事前通知,申請情報の内容,登記原因およびその日付,更正の登記,職権による登記の抹消および更正,登記官の職権による登記,付記登記,所有権の登記,敷地権付区分建物の登記,用益権の登記,担保権の登記,仮登記,相続の登記,相続人不存在の場合の登記,信託の登記(平成27年出題実績)です。
 また,後述しますが,不動産登記法は記述式問題もありますので,多肢択一式の学習で得た知識や理解を記述式の問題でも活かせるようにしておきましょう。
 司法書士試験の午後の部の学習の中でもっとも時間をかけて丁寧に学習すべき科目であり,記述式の出題を意識しながらの学習が必要です。なお,他の科目と同様,まずは「条文」と「過去問」中心に学習することをおすすめします。