【司法書士】試験科目の内容を知ろう!
【不登法・記述式編】


 梅雨だというのに真夏日を記録するなど,今年は空梅雨でしょうか。真夏の水不足が懸念されます。また,水分をマメに補給し,熱中症には十分注意してくださいね。今回も,司法書士試験の試験科目についてご紹介してまいります。
 今回は,午後の部の不動産登記法の記述式試験をご紹介します。

1 不動産登記法の記述式試験とは?
 不動産登記法の記述式試験とは,問題文に示された登記記録や事実関係,関係当事者から聴取した内容をもとに,登記申請情報(以下,「登記申請書」という。)に記載すべき事項を判断し,それを指定された答案用紙の所定の欄に自らの手で答えを書くという試験です。

2 不動産登記法の記述式試験で求められる能力
 記述式試験は,五肢択一のマークシート方式である多肢択一式試験と異なり,答案用紙に,自分の手で答えを書くというものですから,次の能力が求められます。
(1)  問題文に示された登記記録や事実関係,関係当事者から聴取した内容からどのような事実が生じ,実体関係が形成されているかを読み取るための実体法の知識や理解
(2) (1)についてどのような登記を申請するか判断するための登記法等の手続法の知識や理解
(3) (1)(2)を踏まえて判断したことを,制限された時間内に,正確かつ迅速に,答案用紙(登記申請書)に記載するという答案作成上のテクニック

3 不動産登記法の記述式試験の例題
 不動産登記法の記述式試験を最も簡単な事例で紹介すると,次のような例題になります。
<事実関係>
(1) 平成28年6月1日,AはBとの間で自己の所有する土地と建物をBに代金2,500万円で売り渡す旨の売買契約を締結した。なお,この売買契約には,BがAに対し,売買代金の全額の支払いが完了した時に,土地と建物の所有権がBに移転する旨の特約がある。
(2) A所有の土地と建物には,債権額が1,000万円のX銀行の抵当権が設定されている。
(3) Bは,A所有の土地と建物の購入にあたり,Y銀行に融資の申込みをし,この金銭消費貸借契約上のY銀行の債権を担保するために,債権額2,000万円の抵当権を設定する旨の契約を締結した。
(4) 平成28年7月1日,Y銀行にて,司法書士Zの立会のもとで,Bは売買代金金2,000万円をAに支払った。そして,Aは受領した売買代金からX銀行に1,000万円を支払った。
<問い>関係当事者全員は,(1)から(4)までの事実に基づいて発生すべき登記の申請の代理を司法書士Zに依頼した。司法書士Zが申請すべき登記を申請の順番に従って答えよ?
<答え>
(1) 抵当権抹消登記(X銀行の抵当権を抹消するもの)
(2) 所有権移転登記(所有権がAからBに移転するもの)
(3) 抵当権設定登記(Bの債務を担保するためのY銀行の抵当権を設定するもの)
※ 実際には,これらの各登記の申請書に記載すべき事項うち,指定された事項,具体的には,登記の目的,登記原因およびその日付,申請人の氏名,添付情報(添付書面),登録免許税など答案用紙の該当部分に記載することになります。

4 司法書士試験のおける位置づけ
 不動産登記法の記述式の出題数は,午後の部の2問中1問です。しかし,配点は,多肢択一式試験午前の部4科目35問(1問3点,3×35問=105点),午後の部7科目35問(1問3点,3×35問=105点),記述式試験2科目2問(1問35点,2×35=70点)の合計280点中35点であり,配点全体の12.5%を占めます。これを多肢択一式に換算しますと,11~12問に相当しますので,極めて重要な科目であるといえます。
 具体的には,相続による所有権移転登記,根抵当権の債務者の変更登記,一部代位弁済による根抵当権一部移転登記,極度額増額に伴う共同根抵当権の変更登記,根抵当権の全部譲渡に伴う共同根抵当権の移転登記,債権の範囲・債務者の変更に伴う共同根抵当権の変更登記などが出題されています(平成27年度出題実績)。
 不動産登記は司法書士の業務の中心を占めるものであり,不動産登記法の記述式を得意とする受験生が多く,競争が激しい科目です。つまり,不動産登記法の記述式試験での失敗は,不合格に直結するといっても過言ではないでしょう。
 また,不動産登記法の記述式の解答をする,すなわち,登記申請書の記載事項を判断するには,2でも述べましたように,実体法(主に民法)の知識や理解が不可欠であり,単に不動産登記法だけを学習しても,合格点を取ることはできません。
 さらには,2でも述べましたように,制限された時間内に,正確かつ迅速に,答案用紙(登記申請書)に記載する答案作成能力が求められます。
 難易度は,出題年度によって,かなり開きがありますが,一定の得点を取得しなければ合格できません。
学習方法は,まずは,実体法である民法を固めた上で,手続法である不動産登記法,不動産登記令,不動産登記規則の条文,先例等(通達・回答)をしっかり学習することが必要です。次に,基本的な登記申請書の記載事項(書き方)を覚えること,登記記録例の研究,過去問の分析など学習が必要です。そして,これらをマスターした後は,問題集や答案練習会での問題演習で実力に磨きをかけてください。特に,記述式試験は実際自分の手で答案を作成するものですから,常に自分なりの問題を解く時間(解答ペース)を意識しながら,短時間で正確に問題を解けるようになることが肝心です。