【司法書士】司法書士合格その後


 ここのところ,梅雨らしい天気が続いています。雨の日は,少し肌寒いくらいですので,薄着などして風邪などお召しになりませんよう気をつけてください。
 早速ですが,今回は,司法書士試験合格後,合格者がどのような進路をとるのかについてご紹介してまいります。

1 司法書士事務所に就職
 司法書士試験合格まで,試験勉強一筋だった,すなわち,実務を全く知らないという方は,まず,開業のための実務経験を積むため,2~3年程度,司法書士事務所に補助者として就職するのが一般的です。
 不動産登記業務を中心に行っている事務所であれば,不動産売買等での立会い(金融機関の応接室に売主や買主,抵当権者,不動産屋が集まり,司法書士が登記に必要な書類が揃っていることを確認・宣言して,初めて融資銀行は買主に売買代金を融資し,売買代金の決済や債務の弁済が行われることです。その場合の登記は,抵当権抹消,売買による所有権移転,抵当権設定の連件申請になります。),登記申請書(情報)の作成方法,添付書面(不動産登記であれば,登記原因証明情報,登記済証,登記識別情報,印鑑証明書,住所証明書および代表者事項証明書,代理権限証書としての委任状など)の内容の精査や作成を依頼された場合にはその作成,登録免許税の計算方法,管轄登記所の確認などの実務について1から経験を積むことになります。

 商業登記業務を中心に行っている事務所であれば,不動産登記と同様,登記申請書(情報)の作成方法,添付書面(定款,株主総会議事録,取締役会議事録,委任状など)の内容の精査や作成を依頼された場合にはその作成,登録免許税の計算方法,管轄登記所の確認などの実務を学びます。司法書士受験生は,商業登記記述式を苦手とする方が多いですが,不動産登記の添付書面に比べ,商業登記の添付書面については,司法書士が関与する度合いが深く,考えようによってはやりがいがある分野であるといえましょう。
 最近ではオンライン申請が普及していますので,その技術の習得も必須でしょう。
 また,登記申請書(情報)のうちの不動産の表示の書き方,住所から地番を検索し登記事項証明書を取得することから,会社・法人の印鑑の提出,印鑑証明書および印鑑カードの取得等に至るまで,司法書士試験では問われないような事務も学ばなければなりません。

 裁判事務を中心に行っている事務所であれば,内容証明郵便の出し方から訴状や答弁書等の起案・作成のほか,和解交渉,強制執行の申し立て方法を学ぶことになるでしょう。

 また,成年後見業務を中心に行っている事務所であれば,後見開始の申立書の作成,家庭裁判所への提出のほか,実際に成年後見人に就任して被成年後見人等の財産管理する方法,任意後見契約の締結方法などを学ぶことになるでしょう。

 裁判事務や成年後見業務を行うには,司法書士試験で得た知識では当然足りませんので,さらなる学習が必要です(この時期に,簡裁訴訟代理等関係業務についての研修と考査を受けて,開業後簡裁訴訟代理等関係業務を行えるようにしておければ心強いです)。
 これらの業務をバランスよく学習できれば,好都合ですが,実際には登記業務中心の事務所,裁判事務中心の事務所や成年後見業務中心の事務所など,就職先の事務所のカラーによって,学べることが異なります。特に,常に求人を出している大手司法書士法人などでは,事務が細分化され,業務の一部分に特化して携わる方もいるも聞きます。また,大手不動産会社と提携している事務所では,不動産登記法74条2項の所有権保存登記(いわゆる2項保存)の登記申請書(情報)の作成に特化している事務所もあるようです。
 ですから,就職の際には,就職先の事務所がどのような業務を中心に行っているか十分確認し,自分の希望に合う,すなわち,開業後どのような業務を中心に行いたいかを考え,就職する事務所を選択することができれば理想だといえるでしょう。
 また,例えば,不動産登記中心の事務所に数年勤めた後,商業登記中心の事務所に転職するなど,数年間補助者を勤め,開業のための幅広い分野での実務能力を高める方法もおすすめです(もっとも,司法書士事務所は個人経営が多く,給料その他福利厚生などにおいては,一般企業に劣る場合が多いので,あまりに長期間補助者として,勤務することは止めた方がよいです。司法書士はあくまでも開業を前提とした資格だからです。)。
 なお,司法書士業務に関する通常の実務に加え,接客(依頼者との面談)や報酬の請求方法,諸税金の納付および労働保険の届け出,出入金の管理や資金繰りなど,経営者としてやらなければならないことも学ぶことができれば,いざ,自分が開業するときに安心です。ただし,このようなことまで学ぶことができるのは,小規模な事務所に限られるという側面もあります。

2 開業
 合格者の方の中には,合格後司法書士事務所に就職せず,所定の登録等を受け,いきなり開業をする方も少なくありません。もっとも,このような方の多くは,合格前に司法書士事務所で補助者をしていらした方が多いようです。

3 一般企業に就職
 合格者の方の中には,司法書士事務所に就職・独立開業をせず,一般企業に就職し,その会社の法務部等で働く方もいらっしゃいます。このような方を「企業内司法書士」といいます。企業内司法書士の方々が作った連絡会があって,時々情報交換のための集まりがあると聞いています。
 また,銀行や不動産会社など,開業時に不動産登記の継続的受託先となるような企業に就職し,数年かけて,人脈を築いてから,独立開業される方もいらっしゃいます。

4 弁護士事務所に就職
 合格者の方の中には,法律事務所(弁護士事務所)に就職し,司法書士としての特性(登記業務に強い等)を活かしながら,弁護士の下で定型的・限定的な法律業務を遂行することによって弁護士の業務を補助する方もいらっしゃいます(いわゆる,パラリーガル)。

5 法科大学院に入学・司法試験予備試験の受験準備
 合格者の方の中には,司法書士合格をバネに,さらに上級の法律資格(弁護士,検事,裁判官)を取得すべく法科大学院に入学する方もいらっしゃいます。もっとも,最近では司法試験予備試験(法科大学院を修了した者と同等の学識を有するかどうかを判定し,もって司法試験の受験資格を付与するために行われる国家試験)を受けるため,受験予備校に通う方もいらっしゃいます。