【司法書士】
補助者として就職する以外の進路


司法書士齋藤・荒井共同事務所
所長 司法書士 齋藤隆行

 梅雨明けが待ち遠しい時期となりました。曇っているときでも,室内にいるときでも,熱中症になることがあります。とにかくこまめに水分を取るようにしてください。
 早速ですが,今回は,司法書士試験合格者の進路のうち司法書士事務所に補助者として就職する場合以外の進路について,詳しくご紹介します。

1 開業
 唐突に感じられるかもしれませんが,合格者の方の中には,開業に必要な所定の登録,研修等を受け,司法書士事務所等に就職せず,開業をする方も少なくありません。
 このような方は,司法書士合格前に築いた人脈を活かし,開業後仕事が継続的に受託できる目途がある場合,親・兄弟などの身内が司法書士事務所等を経営していてその事務所で開業する場合のように,開業すれば継続的な仕事が受託できる環境にある場合が多いようです。
 あるいは,合格前にすでに司法書士事務所で補助者をして十分な実務経験を積まれた方,あるいは,合格後配属修習を受け実務経験を積まれた方のように,すでに一定の実務処理能力を持っている方が多いようです。
 司法書士会の開催する新人研修の内容が充実し,開業に必要な知識やノウハウが習得することができるようになったことの影響も大きいと思います。
 また,司法書士は開業資金が比較的少なくて済むということも,開業される方が多い理由として上げられるでしょう。最低限,電話・FAX・パソコン・最低限の専門書を用意すれば,自宅を事務所にして,開業することは可能です。最初から,補助者,立派な事務所,専門書,什器備品またはパソコンの司法書士用の業務ソフトなど揃える必要はありません。これらの者は,仕事が軌道に乗り,金銭的に余裕が出てから揃えれば足ります。電話やFAXも家庭用のもので十分です。
 ある公認会計士の方に聞いた話ですが,①在庫を持たない,②現金商売,③リピーターが多い,といった特色のある商売は倒産しにくいないのだそうです。司法書士業は,まさに,このような特色がありますから,倒産しにくい業種といえるでしょう。

2 一般企業に就職
 合格者の方の中には,司法書士として独立開業をせず,一般企業に就職する方もいらっしゃいます(中途または新卒)。その会社の法務部・総務部等の従業員として,司法書士の専門知識を活かし,契約書のチェックや登記所に提出する書類の作成を行うなどの仕事をされるようです(「企業内司法書士」)。聞いた話ですが,資格を取得して一般企業に就職した場合,倒産などその企業で働けなくなっても,自分には独立開業できる資格があるから大丈夫だという自信を持つことができ,余裕をもって仕事ができるそうです。
 また,銀行や不動産会社など,開業時に不動産登記の継続的受託先となるような企業に就職し,数年かけて人脈を築き,開業後仕事が継続的に受託できる目途が経ってから,会社を辞め,独立開業される方もいらっしゃいます。このような方は,大学の在学中に,ダブルスクール(大学と司法書士受験予備校)に通い,司法書士の資格を取得した上で,通常の大学生と同じように就職活動を行って就職するようです。比較的若い方に多いスタイルです。

3 弁護士事務所等他の士業の事務所に就職
 合格者の方の中には,法律事務所(弁護士事務所)等に就職し,司法書士としての特性(登記業務に強い等)を活かしながら,弁護士の下で定型的・限定的な法律業務を遂行することによって弁護士の業務を補助する方もいらっしゃいます(いわゆる,パラリーガル)。 
 また,法律に関するワン・ストップサービス(1つの事務所に依頼すればすべての法律問題を解決できるサービス)を顧客に提供する弁護士,公認会計士,税理士等を擁する総合事務所に就職して,ワン・ストップサービスの一環として司法書士の仕事をする方もいらっしゃいます。また,このよう事務所では,会社設立や会社の事業承継・相続,合併や会社分割等など企業法務の分野でトータルなリーガルサポートを行いますので,一般の事務所ではできないような大きな仕事を体験することができるでしょう。

4 法科大学院に入学・司法試験予備試験の受験準備
 合格者の方の中には,司法書士合格をバネに,さらに上級の司法試験の合格を目指すべく法科大学院に入学する方もいらっしゃいます。中には,司法書士として独立開業しながら,法科大学院に通われて,晴れて司法試験に合格される方もいらっしゃることです。
 もっとも,最近では司法試験の受験の前提として,司法試験予備試験(法科大学院を修了した者と同等の学識を有するかどうかを判定し,もって司法試験の受験資格を付与するために行われる国家試験)を受けるため,受験予備校に通う方もいらっしゃるようです(この方が法科大学院に通うより,短期間かつ低コストであるといわれています)。 

5 司法試験以外の他資格の取得
 特に地方で司法書士を開業するには,司法書士の資格の他に,土地家屋調査士,測量士,行政書士などの資格があった方(兼業)が有利な場合があります。例えば,大きな土地を半分に分割し(「分筆」といいます。)した上で,その半分だけを第三者に売買したいような場合,司法書士の資格に加え,土地家屋調査士の資格をもっていれば,売買による所有権移転登記を申請する前提として行う土地の分筆の登記の申請も自分でできますので,自分の報酬が多くもらえるのはもちろんのこと,依頼者にとっても1人に依頼すればすべて対応してもらえるので便利です。
 また,少数ですが,宅建士の資格を取得し,司法書士業の副業として,不動産業を営む方もいらっしゃいます。この場合も,売買による所有権移転登記手続の報酬の他,仲介が成立したことによる不動産仲介手数料がもらえますので,自分の報酬が多くもらえるのはもちろんのこと,依頼者にとっても1人に依頼すればすべて対応してもらえるので便利です。

 このように,司法書士試験合格者の進路は多岐に亘りますので,ご自分に最もあった進路を考えながら,試験を受けると自分の将来像が見通すことができ,学習のやりがいや励みにもなるかと思います。是非,ご自分に最もあった進路を考えてみてください。