【司法書士】
簡裁訴訟代理人への道(その1)


司法書士齋藤・荒井共同事務所
所長 司法書士 齋藤隆行

雨が続き,涼しくなり,そろそろ冬物の用意をしなければと思えば,晴れた日はまるで夏のような暑さで,慌てて夏の衣服を着るというような温暖の差が激しい気候が続いています。体調管理が難しい時期ですが,風邪などひかれないよう,気をつけてくださいね。
来年の司法書士本試験までまだ間がありますが,引き続き司法書士試験に向けた準備・学習を進めてください。
今回は,簡裁訴訟代理人への道について述べて参ります。

1 簡裁訴訟代理関係業務とは?
 司法書士法に規定されている次の業務を簡裁訴訟代理関係業務といいます(司法書士法3条1項6~8号)。
① 簡易裁判所における次に掲げる手続について代理すること。
イ 民事訴訟法の規定による手続(ロに規定する手続および訴えの提起前における証拠保全手続を除く。)であつて,訴訟の目的の価額が140万円を超えないもの
ロ 民事訴訟法の規定による訴え提起前の和解の手続または支払督促の手続であって,請求の目的の価額が140万円を超えないもの
ハ 民事訴訟法の規定による訴えの提起前における証拠保全手続または民事保全法の規定による手続であって,本案の訴訟の目的の価額が140万円を超えないもの
ニ 民事調停法の規定による手続であって,調停を求める事項の価額が140万円を超えないもの
ホ 民事執行法の規定による少額訴訟債権執行の手続であって,請求の価額が140万円を超えないもの
※ ただし,上訴の提起(自ら代理人として手続に関与している事件の判決,決定又は命令に係るものを除く。),再審及び強制執行に関する事項(ホに掲げる手続を除く。)については,代理することができません。
② 民事に関する紛争(簡易裁判所における民事訴訟法 の規定による訴訟手続の対象となるものに限る。)であって紛争の目的の価額が140万円を超えないものについて,相談に応じ,または仲裁事件の手続もしくは裁判外の和解について代理すること。
③ 筆界特定の手続であって対象土地(不動産登記法123条3号)の価額として法務省令で定める方法により算定される額の合計額の2分の1に相当する額に筆界特定によって通常得られることとなる利益の割合として法務省令で定める割合を乗じて得た額が140万円を超えないものについて,相談に応じ,または代理すること。

2 簡裁訴訟代理関係業務を行うことができる司法書士とは?
 簡裁訴訟代理関係業務は,次のいずれにも該当する司法書士に限り,行うことができます。司法書士であれば,誰でも行うことができる業務ではありません
① 簡裁訴訟代理等関係業務について法務省令で定める法人が実施する研修であって法務大臣が指定するものの課程を修了した者であること。
② ①に規定する者の申請に基づき法務大臣が簡裁訴訟代理等関係業務を行うのに必要な能力を有すると認定した者であること。
③ 司法書士会の会員であること。

 簡単にいえば,簡裁訴訟代理等関係業務についての所定の研修を受けた上で,法務大臣が行う筆記試験(考査)に合格し,日本司法書士会連合会に司法書士登録を受け,事務所の所在地の司法書士会に入会した司法書士でなければ,簡裁訴訟代理等関係業務を行うことはできません。以下,本ブログでは簡裁訴訟代理関係業務を行うことができる司法書士を「簡裁訴訟代理人」といいます。

3 簡裁訴訟代理人の具体的な仕事~過払金の返還請求を例に
簡易裁判所における訴訟の目的の価額が140万円を超えない訴訟について,弁護士のように本人を代理して法廷に立つ業務こそが,簡裁訴訟代理人の象徴的な仕事ですが,実務上は,上記1②で定められた紛争の目的の価額が140万円を超えないものについて,本人を代理して裁判外の和解交渉(示談交渉)をする業務が,最も多く利用されて,成果を上げているようです(過払金の返還請求など)。
小職も恥ずかしながら,簡裁訴訟代理関係業務を行い得る司法書士ですが,依頼のほとんどは,過払金の返還請求です。過払金とは,クレジットまたは貸金を業とする事業者(貸金業者)に,元本に加え,利息制限法の利息の上限を超えた利息(出資法所定の利息)を長年払い続けた結果,すでに支払った金額の総額を利息制限法の利息の上限で再計算するとすでに元本や利息の返済は済んでいるにもかかわらず,それ以上の金額を支払っている場合の超過の支払額のことをいいます。
依頼を受けた場合には,依頼人より,過払い金返還請求手続(訴訟を含む)の委任状を預かり,依頼者がお金を借りた貸金業者の連絡先(支店であることも多いです)を聞きとります。その上で,当該事業者に対し,「受任通知」,すなわち,小職が依頼者の過払い金返還請求手続(訴訟を含む)の依頼を受けたので,以後,取立行為をしないように依頼すると共に,取引履歴の提出を求める旨の通知を発送します。そして,貸金業者から取引履歴が送られて来たら,支払総額を利息制限法の利息の上限で再計算し,過払金を割り出します(インターネット上で、無料の計算ソフトがたくさん出回っているので、計算は極めて楽です)。
過払金の総額がわかって,その額を貸金業者に請求しても,和解交渉だけで満額を返してくれる貸金業者はまずいません。貸金業者は必ず値切ってきます。ここからが交渉の腕も見せ所となるわけです。小職が簡裁訴訟代理人として,デビューした頃は,貸金業者もまだ経営体力が残っており,和解交渉で過払金の7~8割を返してもらうことがそれほど難しくありませんでした。しかし,最近では,破綻する貸金業者も出るなど,貸金業者の経営状態もあまり芳しくないようで,よくて過払金の5割,下手をすると過払金の3割くらいの和解案を提示してきます。和解交渉のよい点は,比較的短時間のうちに過払金を返してもらえることです。しかし,和解交渉でいくら早く過払金を返してもらえるとしても,過払金全体の5~3割しか返してもらえないような和解案ではとうてい納得しない依頼者もいます。そういう場合は,時間とお金がかかることや過払金返還交渉途中での貸金業者の経営破綻の可能性などをあらかじめ十分説明した上で,「訴訟」という選択肢もあることを依頼者に提示します。時間はかかっても「訴訟」をすれば,まず勝訴は間違いなく,勝訴となれば,強制執行をかけなくても,貸金業者から過払金の満額を返してもらえる可能性が高いため,中には訴訟を選択する依頼者もいます。が,たとえ,過払金の3~5割しか返してもらえなくても,訴訟をせずに,返ってこないとあきらめていたお金が早急に戻ってくることに喜びを感じる依頼者もいるようで,それでいいから和解交渉をまとめて欲しいといわれることも少なくありません。いずれかを選択するかは,依頼者の考え方や過払金の額などによってかわってくることになります。過払金返還をテーマに,簡裁訴訟代理人の具体的な仕事をご紹介してみました。