【司法書士】
2016年度本試験の振り返り・午後の部
択一式~体調管理も受験テクニックのひとつ~

司法書士齋藤・荒井共同事務所

所長 司法書士 齋藤隆行 


 秋も深まり,朝晩が冷え込む日が多くなってきました。日中と朝晩の寒暖の差が激しく,体調を崩しがちですが,体調管理も受験テクニックのひとつです。風邪などひかないように注意してください。
 さて,前回から3回に分けて,2016年度の本試験を振り返り,出題内容や難易度等について,分析して参ります。今回は,午後の部(択一)をとりあげます。

1 基準点について
 本年度の午後の部(多肢択一式)の基準点は,満点105点中72点でした(法務省HP)。基準点とは,その点数に達しない場合には,それだけで不合格になる点数をいいます。午前の部では,72点(1問3点),すなわち,35問中最低でも24問(約7割5分)得点しなければそれだけで不合格となり,記述式の答案を採点してもらえないことになります。

2 出題形式
 出題形式は,35問中33問が組み合わせ型,1問が単純正誤型,1問が個数算定型であった。出題の9割以上を組み合わせ型の出題が占めており,個別の肢の正確な理解が求められているといえましょう。単純正誤型とは,「~次の1から5までの記述のうち,正しいものはどれか。」という比較的解答し易い出題の形式です。

3 各科目
(1) 民事訴訟法・民事執行法・民事保全法
 出題数 7問(民事訴訟法5問・民事執行法1問・民事保全法1問)
 基準点クリアー 4問以上の正解
 合格ライン 5問以上の正解
 合格確実ライン 6問以上の正解
 民事訴訟法では,送達,当事者適格,弁論主義,弁論準備手続および控訴が, 民事執行法では,金銭債権に対する強制執行が,民事保全法では,係争物に関する仮処分がそれぞれ出題されました。7問中5問が判例の趣旨をきく問題であり,日頃の判例についての学習の成果が試される問題でした。これらの科目は,午後の部の科目の中で受験生の多くが苦手意識を持つ科目です。いずれも手続法ですので,まず大まかな手続の流れを押さえた上で,細かい部分を肉付けしていくような学習方法をとることをお薦めします。また,法律用語や条文を1つ1つ正確に理解するようにしてください。テキストを読んでも理解できないところは,何度も繰り返し読み込み,マスターするようにしてください。
 出題された問題の中では,特に,当事者適格,弁論準備手続および係争物に関する仮処分についての問題の正解率が低かったものと推測されます。

(2) 司法書士法
 出題数 1問
 基準点クリアー 1問の正解
 合格ライン 1問の正解
 合格確実ライン 1問の正解
 司法書士法では,司法書士法人とその社員について出題されました。最近は,司法書士法人からの出題が多いです。司法書士法は,解答するのに条文知識で足りること,また,筆記試験合格後に受験する口述試験ではこの科目から多くのことが問われることを考えると,筆記試験午後の部の多肢択一式で1問しか出題されないからといって,決して手を抜くことはできない科目です。必ず得点することを目指しましょう。

(3) 供託法
 出題数 3問
 基準点クリアー 3問の全問の正解
 合格ライン 3問の全問の正解
 合格確実ライン 3問の全問の正解
 供託法では,供託の管轄,オンラインによる供託,弁済供託が出題されました。供託法は,民法,民事執行法および民事保全法との接点がある科目であり,特にこれらの部分が難しいです。しかし,要点を押さえ,かつ,過去問を丁寧に解いていれば,全問正解できる科目でもあります。この科目は,全問正解を目指しましょう。

(4) 不動産登記法
 出題数 16問
 基準点クリアー 10問以上の正解
 合格ライン 14問以上の正解
 合格確実ライン 14問以上の正解
 不動産登記法では,登記の申請人,登記権利者,申請の代理,登記上利害関係を有する第三者,登記原因証明情報,印鑑証明書,申請人等が会社法人等番号を有する場合の登記手続,共有名義の登記,区分建物とその敷地権,地上権,抵当権の設定,不動産の先取特権,遺産分割協議または遺言による登記,オンライン申請,審査請求および登録免許税について出題されました。不動産登記法は,司法書士の業務の中心であり,実務と直結する科目であることから,これを得意とする受験生が多い科目です。択一しか出題されない論点と択一と記述式の双方で出題される論点に分かれますので,これらを区別したメリハリのある学習をお薦めします。なお,敷地権付区分建物や用益権(地上権)は,多くの受験生が苦手とする分野であり,正解率は低かったものと推定されますが,特に前者については実務でもその知識や考え方が必要となる論点ですので,押さえておきたいところです。また,改正部分が出題されやすい傾向にありますが,改正に即座に対応しなければならない実務を反映しての出題でしょう。

(5) 商業登記法
 出題数 8問
 基準点クリアー 6問以上の正解
 合格ライン 7問以上の正解
 合格確実ライン 7問以上の正解
 商業登記法では,後見人・未成年者・支配人・外国会社の登記,株式会社の設立,株式会社の役員変更,募集株式の発行,資本金の額の変更,清算株式会社,持分会社および一般社団法人が出題されました。商業登記法(択一・記述式)は,主要科目でありながら,なぜか,これを苦手とする受験生が多いです。不動産登記法は得意とする受験生が多いので,得点してもあまり点差がつきませんので,戦略的には,商業登記法(択一・記述式)を得意科目にして,ここで得点するのが合格への近道だと思います。また,不動産登記同様,択一しか出題されない論点と択一と記述式の双方で出題される論点に分かれますので,これらを区別したメリハリのある学習をお薦めします。今年は,募集株式の発行,持分会社および一般社団法人の問題の正解率が低かったものと推測されます。

4 まとめ
 以上から,2016年度の本試験においては,午後の部の基準点クリアーは35問中24問(満点105点中72点=基準点72点)以上の正解,合格ラインは35問中30問(満点105点中90点)以上の正解,合格確実ラインは,35問中31問(満点105点中93点)以上の正解が必要であったものと予想されます。