【司法書士】司法書士の隣接資格
~宅建士:不動産屋を兼業することは,司法書士の未来像の1つかもしれません~


司法書士齋藤・荒井共同事務所

所長 司法書士 齋藤隆行 


時折小春日和があるものの本格的な冬の到来です。油断していると風邪をひいてしまいます。もしも,風邪の初期症状を感じたら,大事に至る前の早めの手当が肝心です。早く治してしましょう。
さて,今回から3回にわたって司法書士の隣接資格をとりあげてまいります。

1 宅建士とは?
司法書士の隣接資格の1つに,宅地建物取引士(旧宅地建物取引主任者,以下,「宅建士」(たっけんし)という。)があります。宅建士とは,宅地建物取引業法に基づいて行われる国家試験に合格し,高額かつ権利関係も複雑な不動産取引に関する専門知識を有する国家資格者であり,不動産取引の専門家です。不動産会社や不動産屋などの宅地建物取引業者は,原則として,事務所において業務に従事する者5人に対して1人の割合で宅建士を置かなければなりません。宅建士は,不動産取引の知識に乏しい一般国民が,宅地や建物の売買,貸借などの不動産取引上の過誤によって不測の損害を被ることを防止するために,これらの契約が成立するまでの間に,一般国民(主として買主等)に対し,契約の対象となる不動産につき,一定の重要事項について,重要事項説明書の交付と説明を行います。これが宅建士の最も重要な職務です。
不動産登記手続の代理をその主たる業務とする司法書士とは,不動産の売買(立会)の局面において,深いつながりがあります。

2 宅建士の資格とその試験とは?

不動産の取引に関係する国家資格であることから,不動産業だけでなく金融業などの他業種に携わる者にも法律系国家資格として人気があります。試験は,宅地建物取引業法の規定に基づき,国土交通大臣から指定を受けた指定試験機関(一般財団法人不動産適正取引推進機構)が,各都道府県知事の委任を受けて年1回実施しています。

3 宅建士の受験資格と問題形式,試験内容,合格率等
宅建士の試験には,年齢,性別,学歴等の制約はありません。また,問題形式は,四肢択一式の50問で,解答はマークシート方式です。試験時間は2時間で,試験内容は,次のとおりです(宅地建物取引業法施行規則8条)。
(1) 土地の形質,地積,地目および種別ならびに建物の形質,構造および種別に関すること土地や建物について不動産に関わる者としての常識的な知識
(2) 土地および建物についての権利および権利の変動に関する法令に関すること
⇒ 民法,不動産登記法,借地借家法,区分所有法など
(3) 土地および建物についての法令上の制限に関すること
⇒ 都市計画,国土利用計画法,都市計画法,建築基準法,宅地造成等規制法,土地区画整理法,農地法など
(4) 宅地および建物についての税に関する法令に関すること
⇒ 登録免許税,印紙税,所得税,固定資産税,不動産取得税など
(5) 宅地および建物の需給に関する法令および実務に関すること
(6) 宅地および建物の価格の評定に関すること
(7) 宅地建物取引業法および同法の関係法令に関すること
例年,上記⑵分野および⑺分野に多くの問題が配されています(約7割)。
合格率は,近年約15%〜17%台で推移しており,司法書士試験に比べれば合格率は高いものの決して簡単な試験ではありません。

4 司法書士試験との関連
 3の試験内容をご覧いただければお分かりになると思いますが,宅建士の試験内容と司法書士試験の試験内容では,重複する法律が多いです(3のゴシック体の法律)。また,四肢択一式の50問で,解答はマークシート方式という試験形式も,司法書士試験に似ています。そのため,民法や不動産登記法の学習がひととおり済ませた方が,司法書士試験を受ける前に,腕試し的に,宅建士の資格に挑戦するケースが少なくありません(もちろん,司法書士試験合格後に宅建士の資格に挑戦する方もいます)。
宅建士の試験に合格すれば,自分が民法や不動産登記法などで一定のレベルを有することを国家が証明したということになりますので,大きな自信につながることは間違いありません。また,大勢の受験生の中で試験を受けるわけですから,司法書士試験の予行演習ができます。かく申す筆者も,某予備校の「宅建プラス司法書士講座(2年コース)」を受講し,1年目に宅建士の試験に合格し,大いに自信を得ました(もっとも,司法書士は2年では合格できませんでしたが(笑)。ちなみに某予備校も今はありません(笑))。 また,司法書士になった時にお付き合いする隣接資格がどのような仕事をするのか学んでおいて損はありませんし,建築基準法や土地区画整理法の知識は,司法書士に合格して,実務についたときにとても役に立ちます。
 筆者としては,司法書士受験生の方に,司法書士試験の合格の前提としての宅建士の資格への挑戦を是非オススメします。

5 司法書士事務所が不動産屋を兼業?

 全国的には,まだ数は少ないかと思いますが,宅建士の資格を取得した司法書士が,宅地建物取引業法上の営業許可を得て,不動産屋を兼業する例もあります(筆者の友人にいます)。いきなりおカネの話をするのもなんですが,自分が不動産屋として仲介し,かつ,宅建士の仕事をこなして成立した不動産の売買契約に基づいて発生する所有権移転登記を自分で受託できるのですから,実入りは多いと思います。具体的には,不動産の仲介手数料(売主と買主から受領)と司法書士報酬(主に買主から受領)を自分のものにすることができるのですから,仕事が軌道に乗ればやりがいがあると思います。また,売買に比べれば仲介手数料は少ないですが,不動産賃貸の仲介もコンスタントにこなしていけば,固定収入として,事務所経営の安定に寄与することと思います。司法書士事務所が不動産屋を兼業することは,司法書士の未来像の1つかもしれません。かく申す筆者も,不動産屋を兼業している友人の動向を常に注視しています(笑)。