【司法書士】司法書士の隣接資格~行政書士:行政書士と司法書士は,持ちつ持たれつの関係~


司法書士齋藤・荒井共同事務所所長 司法書士
オートマ実行委員会
齋藤隆行


早いもので,今年もあと1か月を残すばかりとなりました。学習計画は順調に進んでいますか?順調に進んでいれば結構ですが,もし,そうでなければまだ時間は十分ありますので,軌道修正を行い,学習計画を立て直してください。
さて,今回は,司法書士の隣接資格として「行政書士」をとりあげてまいります。

1 行政書士とは?
司法書士の隣接資格の1つに,行政書士があります。行政書士とは,行政書士法に基づく国家資格であり,官公署に提出する書類および権利義務・事実証明に関する書類の作成,提出手続きの代理または代行,作成に伴う相談などの業務を行う専門職です。ただし,これらの業務であっても,他の法律で制限されている業務はすることができません。例えば,不動産登記の申請書の作成業務は,官公署(法務局)に提出する書類の作成ではありますが,司法書士法に基づき司法書士でなければすることができませんので,行政書士がこれをすることはできません。行政書士の業務は,簡単な届出書類の作成から複雑な許認可手続に至るまで多岐にわたります。代表的な例としては,自動車を購入した際の自動車の登録手続,飲食店,風俗営業や建設業を開業する際の営業の許認可手続,法人設立手続(設立登記の手続を除く),外国人の帰化申請,在留資格の更新および変更手続きなどが挙げられます(外国人の帰化申請は司法書士もすることができる手続です)。
司法書士は,行政書士の先生から会社の設立手続に基づく設立登記や相続による不動産の所有権移転登記などの手続の依頼を受ける一方,会社の設立や目的変更で建設業等営業に許認可を必要となった場合に,これらの営業の許認可の手続を行政書士の先生に依頼するという,行政書士の先生とは,持ちつ持たれつの関係があるといえます(司法書士は,他士業の先生方とは少なからずこのような補完関係があります)。

2 行政書士の資格とその試験とは?
行政書士も,前回ご紹介した宅建士のように,法律系国家資格として人気があります。また,社会保険労務士の受験資格取得のために受験する方も少なくないようです。試験は,
総務大臣が定めるところにより都道府県知事が行うこととされていますが,都道府県知事は総務大臣の指定する指定試験機関に委任することができ,現在は一般財団法人行政書士試験研究センターが都道府県知事の委任を受けて,年1回実施しています。

3 行政書士の受験資格と問題形式,試験内容,合格率等
行政書士の試験には,年齢,性別,学歴等の制約はありません。また,問題形式は,五肢択一式の60問(マークシート方式)40字程度の記述式の組合せです。試験時間は3時間で,試験内容は,(1)行政書士の業務に関し必要な法令等として,憲法行政法(行政法の一般的な法理論,行政手続法,行政不服審査法,行政事件訴訟法,国家賠償法及び地方自治法を中心とする。),民法,商法及び基礎法学の中からそれぞれ出題され(択一式46問),(2)行政書士の業務に関連する一般知識等として,政治・経済・社会,情報通信・個人情報保護,文章理解(高校の試験程度の問題),行政書士法,戸籍法,住民基本台帳法,労働法,税法等の中からそれぞれ出題されます(択一式14問)。また,(1)から40字程度の記述式の問題が出題されます。
最近10年間の合格率は,約5%〜13%台で推移しており,その年によってかなりばらつきがあります。司法書士試験に比べれば合格率は高いものの決して簡単な試験ではありません。

4 司法書士試験との関連
 3の試験内容をご覧いただければお分かりになると思いますが,行政書士の試験内容と司法書士試験の試験内容では,重複する法律が少なくありません(3のゴシック体の法律)。また,出題が五肢択一式の60問と記述式1問で,解答はマークシート方式と記述式という試験形式も司法書士試験にとても似ています。そのため,憲法や民法の学習がひととおり済ませた方が,司法書士試験を受ける前に,行政書士の資格に挑戦するケースが少なくありません。この点においては,前回ご紹介した宅建士に似ています。
行政書士の試験に合格すれば,自分が憲法や民法などの法律科目で一定のレベルを有することを国家が証明したということに他なりませんので,司法書士試験を受けるための大きな自信につながります。また,宅建士試験と同様,大勢の受験生の中で試験を受けるわけですから,司法書士試験の予行演習ができます。また,司法書士になった時にお付き合いする隣接資格がどのような仕事をするのか学んでおいて損はありません。
 筆者としては,司法書士受験生の方に,司法書士試験の合格前や合格後に行政書士の資格への挑戦を是非オススメします。

5 司法書士との兼業
 司法書士が行政書士を兼業するケースはかなり多いです(特に地方)。行政書士を兼業していれば,建設業を行う株式会社の設立手続の依頼を受けた場合,設立登記と共に建設業の営業許可の申請をまとめて受託できますので,行政書士報酬と司法書士報酬の両方を得ることができるだけではなく(おカネの話になって恐縮ですが,行政書士さんの報酬は結構いいのです。),顧客にとっても司法書士と別に行政書士を探さなければならないという手間がなくなる分,利便性が高いです。また,地方では,農地の売買の場合,農業委員会等に農地法所定の許可申請をして,これを得てから,売買による所有権移転登記を申請することが少なくありませんが,行政書士を兼業していれば,これらをまとめて受託できますので,同様のメリットがあります。
 ちなみに筆者は,(残念ながら!?)行政書士の資格をもっていませんし,今のところ行政書士試験を目指す予定はありません。長年実務をこなし,仕事を共にした行政書士の先生と懇意になっているので(持ちつ持たれつの仲です),その先生方の職域を侵したくないからです。もっとも,それ以前に,行政書士試験に合格する自信や能力がないからかもしれません(笑)。