【司法書士】司法書士の隣接資格~土地家屋調査士:報酬をダブルで受領できる!?~


司法書士齋藤・荒井共同事務所

所長 司法書士 齋藤隆行 



 いよいよ師走突入ですね。年末年始は,まとまった学習時間が確保できる貴重な時期ですので,学習計画を立て効率的に学習しましょう。この時期に,休みを取ってしまうとせっかくつかみかけてきた学習ペースが狂うおそれがあるので要注意です。
 さて,今回は,司法書士の隣接資格として「土地家屋調査士」をとりあげてまいります。

1 土地家屋調査士とは?
 司法書士の隣接資格の1つに,土地家屋調査士があります。土地家屋調査士とは,土地家屋調査士法に基づく国家資格であり,他人の依頼を受けて,不動産の表示に関する登記について必要な土地や家屋に関する調査・測量・申請手続等を業とする専門職です。ご存知のように,不動産の登記簿は,表題部と権利部があり,権利部の登記(権利の登記)を司法書士が担当するのに対し,土地家屋調査士は表題部の登記(表示の登記)を担当します。他人の依頼を受けて法務局に登記の申請手続をすることを業とする点は,司法書士と非常に近い資格であり,また,司法書士と土地家屋調査士は,業務の住み分け(表題部と権利部)がなされており,業務がバッティングすることはありません。土地家屋調査士は,土地や家屋に関する調査・測量を業とするため,測量,その知識および製図をするための非常に高度な専門性を有します。そのような職業柄,土地家屋調査士には,職人気質の方が多いです。
 建物が新築されたときに,まず,土地家屋調査士がその建物の所在,種類,構造,床面積などと調査し,建物新築の登記(表題部の登記)を法務局に申請します。そして,登記が完了すると,登記簿が起こされ,権利の登記が申請できるようになります。ここで,司法書士は,土地家屋調査士からのバトンを受け,所有権保存の登記や抵当権設定の登記(権利の登記)を申請することになります。また,大きな土地を2つの土地に分筆し,土地家屋調査士が分筆の登記を申請し,その登記の完了を待って,司法書士が分筆で新しくできた土地の売買による所有権移転登記を申請することもあります。このように,土地家屋調査士と司法書士は,協力関係にあり,開業している司法書士には,必ずと言っていいほど,提携している土地家屋調査士がいます(逆もまたしかり)。ちなみに筆者も叔父が土地家屋調査士を開業しており,提携しています。

2 土地家屋調査士の資格とその試験とは?
 土地家屋調査士も,前回ご紹介した宅建士や行政書士のように,法律系国家資格ですが,測量知識,数学的素養,計算能力および製図能力が求められることから,これらの資格とはかなり毛色が異なります。土地家屋調査士試験は,土地家屋調査士法に基づき法務大臣により年1回(例年毎年8月中旬の日曜日に1回)行われます。

3 土地家屋調査士の受験資格と問題形式,試験内容,合格率等
 土地家屋調査士の試験には,年齢,性別,学歴等の制約はありません。また,司法書士と同じように筆記試験と口述試験があり,筆記試験には,午前の部(平面測量及び作図に関するもの),午後の部(不動産の表示に関する登記に関するもの等)があり,例年8月の下旬に午前2時間,午後2時間30分に分けて,実施され,その合格者に対して11月に口述試験が行われます。
 このうち,午前の部(測量科目)については,測量士・測量士補・建築士等の資格があれば免除されます(合格者のほとんど全員が,この午前の部の免除者です)。そのため,土地家屋調査士試験の午前の部の免除が受けられる上記3資格の中で最も試験がやさしい「測量士補」の試験を受験し,これに合格してから,土地家屋調査士試験に挑むのが,土地家屋調査士資格取得の王道であるといわれています。
 土地家屋調査士試験の午後の部は,択一式問題20問と記述式問題2問が出題されます。択一式問題は,民法に関する事項(3問),不動産登記の申請手続(申請書の作成に関するものを含む。)及び審査請求の手続に関する知識,その他土地家屋調査士第3条に規定する業務を行うのに必要な知識及び能力(17問)について出題されます。出題形式は,司法書士試験と同様,解答の組合せ群の中から一つを選ぶ問題,正誤の肢の組合せを選ぶ問題がほとんどです。また,記述式問題(土地と建物の申請書の作成と作図)では,土地から1問,建物又は区分建物から1問,合計2問から出題されます。
 最近10年間の合格率は,平均約7%程度で推移しています。司法書士試験に比べれば合格率は高く,民法は司法書士試験よりやさしいといわれていますが,試験で求められる能力がかなり異なりますので,司法書士合格者にとっては,取り組みにくい試験かもしれません。
4 司法書士試験との関連
  3の試験内容をご覧いただければお分かりになると思いますが,土地家屋調査士の試験内容と司法書士試験の試験内容では,重複する法律が少なくありません。しかし,土地家屋調査士試験では民法は3問しか出題されず,また,不動産登記法も表題部の登記に関する出題ですので,残念ながら,司法書士試験の学習がそのままストレートに活かせるというものではありません。記述式試験についても同様です。
 このように,試験内容という点では,司法書士試験とほとんど共通性がありませんが,筆者としては,司法書士受験生の方に,司法書士試験の合格後に土地家屋調査士の資格への挑戦を是非オススメします。司法書士は登記の専門家として,顧客から時として表題部登記についての一般的な相談を受けることが少なくありませんし(「建物を新築したけれどどういう登記をすればよいか,必要な書類は?」など。),司法書士の実務を遂行する上で,表題部の登記の知識も必要となることがあるからです(登記済証の特定の時など)。

5 司法書士との兼業
 司法書士が土地家屋調査士を兼業するケースはかなり多いです(特に地方)。冒頭にも申し上げましたように,土地家屋調査士を兼業していれば,建物の新築の案件依頼を受けた場合に,①表題登記,②所有権保存登記,③抵当権設定登記をすべて自分で受託できるからです。また,分筆して土地を切り売りする場合にも,①分筆登記(地積更正登記),②売買による所有権移転登記,③銀行借り入れがある場合には抵当権設定登記のすべてをまるごと受託できるメリットがあるからです。これらを一括して受託できれば,顧客にとっても便利ですし,土地家屋調査士報酬(結構実入りが多いです)と司法書士報酬をダブルで受領できます。
 ちなみに筆者は,残念ながら土地家屋調査士の資格をもっていません。また,今のところ土地家屋調査士試験を目指す予定はありません。長年実務をこなし,仕事を共にしてきた土地家屋調査士の叔父と懇意にしているので,叔父の職域を侵したくないからです。もっとも,それ以前に,土地家屋調査士試験に合格するだけの能力がないからです(若い頃,測量士補の資格を目指すも3点足りず不合格。涙。)。
 次回から新しい企画が始まります。長い間,お付き合いいただきありがとうございました。また,どこかでお会いしましょう!