【司法書士】
記述式の学習(その1)
~やさしい例題を通して,記述式を学習~



司法書士齋藤・荒井共同事務所
所長 司法書士 齋藤隆行

 東京でも零下を記録するほどの寒い毎日が続いております。十分な防寒をして,風邪など引かないようにしてくださいね。
 さて,今回からは,やさしい例題を通して,記述式の学習をします。まずは,不動産登記の所有権保存登記を学習します。中・上級者の方は,いささか退屈かと思いますが,基礎の確認ということで,どうかお付き合いください。

<問題>

 登記記録に次のような登記事項の記録がある建物について,平成29年7月1日,司法書士法務律子は,甲野太郎から登記の手続に必要な書類を受領するとともに,登記の申請手続及び登記識別情報の受領について代理することの依頼を受けた。
 司法書士法務律子が,作成すべき登記申請情報のうち,答案用紙で指定された事項につきそれぞれ記載しなさい。記載すべき事項がない場合には,「なし」と記載しなさい。
 登記の申請日は,平成29年7月1日とし,建物の価額は,1000万円とし,租税特別措置法等による税の減免に関する規定の適用はないものとする。
(登記記録の記録)
表題部
所在 東京都江東区豊洲一丁目 2番地3
家屋番号 2番3
種類 居宅
構造 木造かわらぶき2階建
床面積 1階 30.95㎡
    2階 30.95㎡
所有者 東京都中央区築地二丁目2番2号
     甲野太郎
(権利部には,登記の記録はない)

<答案用紙>

登記の目的(        )
登記原因及びその日付(              )
申請人(                     )
平成29年7月1日法( )条( )項( )号申請
添付書面(                    )
課税価格(         )
登録免許税(        )

<解答例>

登記の目的(所有権保存
登記原因及びその日付(なし
申請人(所有者 東京都中央区築地二丁目2番2号 甲野太郎
平成29年7月1日法(74)条()項()号申請
添付書面(住所証明情報 代理権限証明情報
課税価格(金1000万円
登録免許税(金4万円

<解説>

1 所有権保存登記の意義
 所有権保存登記とは,所有権の登記がなされていない不動産の権利部について初めてなされる所有権に関する権利の登記です。不動産について所有権移転や抵当権設定等の登記を申請するためには,その前提として,必ず所有権保存の登記をしておかなければなりません。もっとも,所有権保存登記,所有権移転登記および抵当権設定登記は,続けて同時に申請することもできます(これを「連件申請」といいます。)。このように,所有権保存登記は,すべての権利の登記の起点となる重要な登記であるといえます。

2 所有権保存登記の手続~単独申請と申請適格者
所有権保存登記は,不動産登記法74条で定められた申請適格を有する者が単独で申請することができます。具体的には,表題部に所有者として記録された者等が申請適格を有します(不登§74Ⅰ①前段ほか)。

3 登記申請情報の作成
 表題部に所有者からする所有権保存の登記(不登§74Ⅰ①)においては,申請情報の内容として,登記原因およびその日付を記載することを要しません(不登令§3⑥,不登§76Ⅰ本文)。
そして,申請情報の内容として,所有者の住所氏名のほか,その所有権保存の登記が不動産登記法の何条を根拠とする申請であるかを記載します(不登令別表28申請情報イ)。申請人が申請適格者であるか否かを証明するためです。
添付情報は,原則として,所有者の住所を証する情報(不登令別表28添付情報ニ)と代理権限を証する情報(不動産登記令7Ⅰ②)です。不動産登記法74条1項に基づく所有権保存の登記は,登記原因がないので,登記原因証明情報を添付することを要しません(同Ⅲ①)。なお,所有権保存登記の申請情報には,所有者の所有権を証する情報を提供することを要しません。これは,建物の表題登記の申請時に,申請情報と併せて,すでに登記所に提供済みだからです(不登令別表12添付情報ハ)。
課税価格は,不動産の価額を記載します。また,登録免許税の税率は,1000分の4であり(登税別表第1.1(1)),課税価格に登録免許税の税率を乗じた額が登録免許税額となります(百円未満切捨て)。

4 本問の検討
 本問の建物の登記記録には,表題部の登記がなされていますが,権利部には登記の記録がありません(問題の登記記録参照)。そのため,未だ所有権保存の登記がなされていないと判断することができます。そこで,表題部に所有者として記録された甲野太郎が所有権保存の登記を申請することになります。申請情報の記載方法その他については,解答例をご参照ください。