【司法書士】
直前期の過ごし方①(2週間前)



司法書士齋藤・荒井共同事務所
所長 司法書士 齋藤隆行


夏日が続き,梅雨を飛び越して,いきなり初夏が来たかのような天候が続いています。いよいよ本試験までの残りの日数もわずかとなりました。熱中症などには十分注意して,本試験をベスト・コンディションで受けることができるよう,本試験までの体調管理には万全を尽くしてください(朝晩は涼しいので,過度の薄着は禁物です)。
今回から,本試験までの間は,「直前期の過ごし方」について述べて参ります。

1 学習編
⑴ 総論
直前期にすべき学習を一言でいうと,それはズバリ「復習」です。これまで,ご自身が学習してきたことを繰り返し学習することによって,体得した知識や理解をより確実にすることが何よりも肝要です。今になって新しい問題集や参考書に手を出してはいけません。試験範囲の知識で,自分が知らないものがあるということは,受験生にとって,この上ない恐怖であり,1つでも多くの知識を体得しておきたいという気持ちは否定しません。しかし,ことこの時期に至っては,その気持ちを忘れ,「10個のあやふやな知識より1個の確実な知識」を積み上げていく作戦でいきましょう。
筆者は,毎年,各種答練の記述式答練の答案の採点を担当しています。答案用紙にびっしりと答えが書いてある(完全解答している)のに,採点すると,0点あるいは0点に限りなく近い一桁台の点数(ちなみに満点は35点です。)となる答案が少なくありません。このように,あやふやな知識をいくら身に付けても,無意味,時間の無駄であり,得点に結びつけることは困難なのです。これを肝に銘じておいてくださいね。

⑵ 択一式の学習
① 肢別過去問の復習と根拠条文の確認
「今さら?」と呆れる方もいらっしゃるかもしれませんが,「司法書士試験は,過去問に始まり過去問に終わる」のです。今こそ,過去問の学習をしましょう。
と言っても,平々凡々と5択の過去問をそのまま解くのではありません。
肢別過去問を使っての過去問の復習をおすすめします。
5択ですと,分からない肢があっても,他の肢との比較で,なんとなく,答えが出てしまうことがあります。それでは,その問題を確実に理解したとは言い難いです。そこで,過去問の1肢1肢をより確実に理解するため,肢別過去問をおすすめするわけです。
何年分の肢別過去問を学習すればよいかは,特に目安はありません(一般的には5~10年分といったところでしょうか)。ご自身がこれまでの学習で使ってきた過去問問題集を使えば十分です。新しく過去問集を買う必要はありませんし,今までの学習で解かなかった古い過去問(昭和の過去問など)まで解く必要はありません。
ポイントとしては,ご自身が苦手とされているところ,何度も間違えてしまうところ,ケアレスミスをしやすいところを中心に学習していき,それらを完全に理解するまで繰り返し学習することです。
また,極力,根拠条文,判例や先例等にあたってみてください。素の条文を読むことは,問題の理解を深めるのに役立ちますし,どこから出題されたか,出題の根拠・原点を確認しておく作業は,知識や理解をより確かなものにします。
また,肢別過去問を学習するにあたって,もともとの5肢択一の問題で正解となった肢(正解肢)は,特に意識して学習しましょう。
正解肢というのは,「他の肢はわからなくても,この肢だけは理解していますよね。」という本試験委員の無言のメッセージに他ならないからなのです。正解肢は,各肢と比較してより重要性が高い肢であるわけです。そして,重要性が高いということは,再度,出題される可能性が高いということにもつながっていきます。
問題を見ただけで100%自信をもって正解できるところは,割愛してしまって構いません。完璧な知識がある問題を何度も解くのはもはや時間の無駄だからです。

② 答練の復習
 直前期の学習の中心は,肢別過去問の復習と根拠条文の確認と申しましたが,時間に余裕がある受験生の方のために,答練の復習についても,若干述べておきたいと思います。
 一般的な傾向として,どこの受験予備校でも,答練の問題は,本試験より少し難しめに作られています。答練の問題が本試験よりやさしくては,本試験対策にはならないからです。そのため,時々,難問・奇問が出題されることがあります。この場合,そのような難問・奇問ができなくても悲観することはありませんし,時間をかけて復習する必要もありません。難問・奇問はどの受験生も等しくできませんので,この問題で得点差がつくことがないからです。これに対して,比較的易しめの問題,つまり,正解率が高い問題を間違えてしまった場合には,猛省し,完璧に復習しておいてください。正解率が高い問題は,誰でもできるので,ここで間違えてしまうと,得点差がついてしまい,挽回が大変になるからです。

③ 解答時間の短縮~近年の傾向
近年,記述式の試験の問題文や解答量が多くなり,解答に要する時間が多くなる傾向にあります。これまでに比べると,択一式の問題をいかに短時間で解けるようにしておくかも択一式の試験の準備として重要な要素となってきているといえましょう。今や,司法書士本試験は時間との闘いといっても過言ではありません。

⑶ 記述式の学習~過去問学習のねらいと答練や問題集の活用
択一式の過去問と比較すると,残念ながら,記述式の過去問を学習する人は少ないようです。近年の度重なる法改正(特に会社法や商業登記規則)によって,過去問を現行法で解くことができなくなっていることなどがその理由ではないかと思われます。確かに,問題の解き難さはあると思います。では,全く学習しなくていいかというと,決してそのようなことはありません。
記述式の過去問の学習のねらいは,問題そのものを解くことよりも,どのような論点がどのような形式で出題されたかを知るということにあります。そして,それを押さえた上で,最新の法令に基づいて作成された答練(問題によっては,問題集)を解くことによって,本試験で出題された論点を体得することが重要になるのです。
また,記述式の過去問は,いくつもの論点が複合的に出題される傾向にありますので(連件申請や一括申請),択一式の肢別過去問の学習と同様,それぞれの論点をばらして,論点ごとに基本的な問題集などを利用して学習する方法も効果的な学習方法です。
さらに,記述式の過去問は,登記申請書の作成が中心です。登記申請書で用いられる「用語」や「定型句」を正確に覚え,一字一句,自分の手で書けるようにしておかなければなりません。司法書士が実際に日々の業務で行っている登記申請書の作成と同様の形式上の厳格な正確性が求められるのです。択一式のように,問題文として示された肢の中から正解肢を選ぶという作業に比べ,極めて高い理解力が求められているといえます。司法書士試験が実務家登用試験の性質を持っていることをもっとも強く感じるのが記述式の問題です。
もっとも,登記申請書で用いられる「用語」や「定型句」を一度正確に覚えてしまえば,解答が格段に容易になることもまた事実です。試験開始前に,たまたま見ていた登記の申請書が,そのまま出題されてスラスラ書くことができた,というラッキーな話も耳にします。

2 受験準備編

 およそ試験では,合格できる学力を身につけることはいうまでもなく,試験開始時間までに試験会場にたどり着けるか,受験に必要な持ち物を用意できているかという学力以外の要素も重要です。
⑴ 会場の下見
 初めて受験する会場の場合には,前もって会場を下見しておくことをおすすめします。できれば,本試験と同じ日曜日の同じ時刻に,本試験を受けるつもりで,出かけてみてはいかがでしょうか。当日道に迷ったりして,遅刻するようなことになれば受験は認められないからです(法務省HP・司法書士試験受験案内書参照)。また,本試験前に一度会場を下見しておけば,道に迷い遅刻する心配もなく,試験当日に気持ちにゆとりができるからです。

⑵ 持ち物の準備
 司法書士試験受験案内書(お手元の用紙または法務省HP)をよく読み,持ち物を準備しておきましょう。筆記試験受験票はいうまでもなく,筆記具も,指定されていますので注意が必要です。黒インクの万年筆またはボールペン(インクが消せるものは不可,黒色以外のインク不可,記述式試験用),HBの鉛筆とプラスチック消しゴム(択一式試験用)です(これ以外の筆記具を使うと採点されません)。まれにですが,答練の記述式の採点をしていると「鉛筆書き」の答案や「青色インク」の万年筆で書かれた答案を目にします。もちろん,答練でも,どんなに良くできた答案であっても,0点です。
筆記具は,複数用意しておくことをおすすめします。特に,万年筆またはボールペンの場合,万一,インク切れなどが発生すると解答できなくなるからです。鉛筆もあらかじめ削ったものを多めに持参しましょう。試験時間中に鉛筆を削る時間的余裕などないからです。なお,問題検討のために問題用紙に限って,ラインマーカーや色鉛筆の使用ができます。
 飲み物の持参も認められているようですが,個人的にはおすすめしません。試験時間中にトイレに行きたくなると,その分時間のロスにつながるからです。それだけ,司法書士本試験は時間との闘いだということを肝に銘じておきましょう。