【司法書士】試験後の過ごし方


今年の本試験も終了しました。受験された方,おつかれさまでした。今は,各受験予備校の発表した今年の本試験の解答や解答例などの情報収集や自己採点でお忙しいことと存じます。今回は,「試験後の過ごし方」について述べて参ります。

1 本試験の解答や解答例などの情報収集や自己採点
今さら私が言うまでもなく,皆様はすでに,各予備校の本試験の解答や解答例などの情報収集に取り組まれ,自己採点をなさっていることと思います。特に自己採点は重要です。自己採点の結果,①合格を確信,②もしかしたら合格するかもしれない(合否ラインすれすれ),③不本意ながら不合格を受け入れざるを得ない,という立場に分かれます(自己採点をしなくても,直感的にわかっている方もいらっしゃるかと思いますが)。自分の試験の出来不出来を客観的に分析することは難しいこととは思いますが,まず,試験直後に自分が置かれている立場を早急に自覚することが大切です。それは,立場によって,試験後の過ごし方が変わってくるからです。

2 立場ごとの試験後の過ごし方
⑴ 合格を確信した場合
 合格を確信された方は,口述試験の学習と訓練に専念するとよいと思います。口述試験の過去問も容易に入手できます。口述試験では,特に司法書士法が筆記試験より踏み込んで出題されます。口述試験の過去問で出題されたところを条文中心に,司法書士法の重要条文を暗記してしまうくらい,しっかり学習しましょう。
また,司法書士の業務においては,お客さん(以下,「依頼者」という)との会話等から依頼の趣旨を的確に把握する能力が求められます。具体的には,依頼者との面談や会話を通して依頼者が何を望み,どのような方法で解決することを望んでいるかを聴き取り,あるいは,どのような方法で解決することが依頼者にとって最も利益になるかを判断した上で,それを依頼者に対してわかりやすい表現で懇切丁寧に説明し,依頼者に納得,安心と満足を与える能力が,司法書士にとって不可欠です。そこで,「聞く,話す」能力が口述試験というかたちで求められるのです。
口述試験の学習方法では,口述試験の過去問を実際に声に出しながら,訓練することが必要です。筆記試験では容易に答えられることでも,いざ,声に出して答えろといわれると案外難しいものです。友達と面接官役と受験生役を交代しながら,質問し合いながら,訓練するとよいでしょう。最初は,解答例をそのまま声に出すことから始めるという方法で構いません。そして,だんだん慣れてきたら,解答例を見ずに,なるべく自分の言葉を使って,答えられるようになればベストです。また,各予備校で,口述試験の模試が開催されるはずですので,積極的に参加しましょう。口述試験の試験官を自分の依頼者と思い,聞かれたことに丁寧に説明してあげるつもりで口述試験に臨むとよいと思います。なお,合格を確信した場合であっても,筆記試験に不合格ということがありえます。口述試験科目以外の科目についても,過去問・条文くらいは目を通しておくと安心でしょう。また,苦手な科目・論点について時間をかけて学習し,これを克服しておくのもよいでしょう。ここで学習したことは,来年再受験する場合はもちろん,合格後も決して無駄にはなりませんので,安心してください。

⑵ もしかしたら合格するかもしれない(合否ラインすれすれ)場合
 この立場の方は,不合格になった場合を想定して学習することをおすすめします。直前期のような猛烈な学習をせよ,とは言いません。が,なるべく,今のご自分の実力を落とさない程度の学習を心がけてください。今年の過去問については,書籍を購入して入念に復習しておきましょう。⑴でもご説明しましたが,時間に余裕のあるこの時期でしかできない,苦手な科目・論点について時間をかけて学習することもおすすめです。苦手な科目・論点を徹底的に学習することによって,苦手が転じて得意になる可能性が高いからです。また,新しい教材を買うよりも,この1年間で使用した過去問・条文・テキストを繰り返し学習する方がよいです。また、予備校によっては特待生試験のようなものが実施されることがありますので,情報を収集し,受験してみてください。来年度の答練等の申込みは,合格発表後からで構わないと思います(人気の講座で,どうしても受講したいが,合格発表後の申込みでは間に合わないという場合は,保険の意味で申し込んでもよいのかもしれません)。
 なお,口述試験の学習は,筆記試験の合格発表後に始めれば十分間に合いますので,慌てることはありません。

⑶ 不本意ながら不合格を受け入れざるを得ない場合
 例えば,例年,答練や模試等の成績優秀者(常連)など合格できる実力を有すると判定されながら,本試験本番で実力が出し切れず,不本意ながら不合格を受け入れざるを得ない立場に甘んじる方も少なくありません。
 このような立場の方は,初心に戻って,今年の合格者の勉強法を紹介するガイダンスなどへの出席をおすすめします(プライドが許さないかもしれませんが,そこは曲げて)。合格できる実力があるにもかかわらず,例年合格を逃すということは,その学習方法に改善の余地があるかもしれないからです。典型的な例としては,本人が気付かないうちに,答練や模試等で良い点をとることを目的とする答練中心の学習方法をとってしまっている場合があります。答練や模試等で良い点をとることは本試験合格のために,もちろん重要なことであり,これを否定するつもりはありません。答練で一定の成績をとることは実力の反映です。しかし,答練や模試等で良い点をとることは,本試験で合格するための手段にすぎません。あくまでも,目的とすべきは,本試験での合格なのです。このような方は,もともと実力があるわけですから,学習の基本を過去問と条文に置き換えることで本試験の合格が見えてきます。答練は,本試験より少し難しめに作成されていますし,その受験予備校の独特のクセがあります。ですから,学習の基本を過去問と条文に置き換えることにより,答練や模試等の成績が下がる場合がありますが,そのようなことは気にせず,過去問と条文中心の学習を続けましょう。
不本意ながら不合格を受け入れざるを得ない場合,⑵でも述べましたように直前期のような猛烈な学習をする必要はありませんが,今のご自分の実力を落とさない程度の学習を心がけてください。
 また,年内に実施される答練等には積極的に参加するなど,来年の本試験に向けて,早めのスタートをきってください。

3 筆者の体験談(参考までに)
 私は,合格するまで,本試験を3回受験しました。大学卒業後も,就職することなく,合格するまで受験に専念する生活を送りました(専業受験生)。私の祖父が司法書士をしていたため,受験したいことを相談すると,「働きながらでは合格まで時間がかかる。早く資格を取ろうと思うなら受験に専念しなさい。」と言われ,両親もそれを許してくれましたので,受験に専念することにしたのです。
最初の年は,受験予備校で試験範囲の学習をやっと終えたという状態での受験でした。本試験の午前の部では,手応えを感じたものの,午後の部と記述式試験では全くお手上げでした。受験した当日にすでに落第を悟りました。
2年目は,専業受験生の強みでそれなりに学習を重ね,答練の成績上位者に名を連ねるに至りました。自信をもって本試験に挑んだのですが,本試験の午前の部,午後の部の択一で取りこぼしが目立ち,午後の部の商業登記記述式で大きなミスをしてしまい,結局これが致命傷となってしまったと思っています。この年も,受験を終えたその日の帰路ですでに落第を悟りました。答練で成績上位者に名を連ねることができていたのに,本試験直後に落第を悟るというのはかなり辛いものです(大学の同期の連中は,社会で立派に活躍しているのに自分は何をやっているのか,本当に合格できる日が来るのだろうか…と自己嫌悪と劣等感,悩みが津波のように押し寄せてきたものです)。 ここまで実力を養いながら,合格に及ばないということは,自分の学習方法に改善の余地あるいは欠点があるのかもしれないと考えるようになりました。そこで,今年の合格者が学習方法を紹介してくれるというガイダンスに,初学者の方に混じり,恥を忍んで出席しました。不思議なことに,合格者の話は,ほとんど結論は同じなのです。曰く,「過去問と条文に専念すべし。」と。我が身を振り返ると,もちろん,過去問と条文については,何度も何度も学習しています。しかし,自身の教材や学習方法を入念に検証すると,「過去問と条文に専念しているとはいえないのではないか」との結論に至ったのです。そこで,教材も過去問と条文に限定すべく,取捨選択を行いました。そして,過去問を肢別に分けている問題集を入手し,この問題集を繰り返し解くことを学習の中心に据えることにしたのです。この問題集は,肢ごとの正誤のみが掲載され,解説が全くないという変わった問題集でしたが,おかげでそれぞれの肢の根拠条文や解説を自分で調べるようになり,必要に応じて自分で条文数をメモし,解説を書いてみるなど過去問の学習を能動的にすることができるようになりました。また,条文を根拠にしている肢については,六法のその条文が載っている箇所に小さい字で,たとえば「平29」のように何年に出題されたかをメモしていきました。それから,正解肢となった条文には,黄色のマーカで印を付けました(この方法は,直近の年の合格者の方からガイダンスで教わりました)。これらの作業により,この条文はいつ出題され,正解肢になったことがあるということを平素から意識しながら学習することができるようになったのです。条文を確認する回数も格段に増えました。このように,過去問と条文の学習に専念した結果,答練では前の年より良い成績を取ることはできず,公開模試も回を追うごとに順位は下落していきました。しかし、「自分は本試験で良い点をとるために学習しているのだ!」と常に自分に言い聞かせ,答練の成績はあまり気にしないようにしました。結果,その年の本試験に晴れて合格することができたのです。