知っ得!身近な法律Q&A

インターネットオークションでの
売買トラブル(前編)

司法試験 /弁護士編①

Q.問題

インターネット上でバイクを売ったら、
買主から「動かないから損害賠償しろ!」と言われた。
引渡し前にはきちんと動いており、買主が動くかどうかを確認していない場合、損害賠償の必要はあるの?

今回の回答者

中村 充(なかむら みつる)

開成中高卒→東大法学部卒→現在弁護士。徹底した試験至上主義から辿り着いた絶対的過去問主義に基づき、中学・大学受験、司法試験を突破してきた。その中で培われた受験テクニック・過去問分析手法は他の追随を許さない。

司法試験においても、予備試験・法科大学院入試から新旧司法試験に至る全過去問が、頭の中にデータベース化されている。このデータベースに基づいて、あらゆる法的問題に通用する普遍的な方法論・4段階アルゴリズム(4A)を完成させた。

A.回答

今回は、買主Oさんとのトラブルに巻き込まれた売主Nさんからのご相談です。
これについて、4段階アルゴリズム(4A)を使って、順序立てて具体的に考えていきましょう。
4Aとは、

  1. ①当事者確定:「ケンカしているのは誰と誰なのか?」を定める
  2. ②言い分:①の当事者の立場に立って、「相手に対してケンカを売る」
  3. ③法的構成:②の言い分を「実現できる条文」を探す
  4. ④あてはめ:③の条文の一言一句に「問題文の具体的事情を“代入”」する

という、あらゆる法的問題に通用する処理手順です。
まず、今回対立している人は、誰と誰でしょうか?…買主Oさんと売主Nさんですよね。「①当事者確定」はこれだけです。どちらも一般の方ですから、民事事件となります。
では、「②言い分」に移りましょう。まずはOさんの「バイクが動かないから損害賠償しろ!」という言い分を処理します。
民事事件での言い分は、「物よこせ」か「金払え」等に尽きます。では「損害賠償しろ」は、どちらの方に近いでしょうか?…そう、「賠償」という文字からして「金払え」ですね。

民法における4段階アルゴリズム(4A)の具体化

民法における4段階アルゴリズム(4A)の具体化の表

そうすると、次の「③法的構成」がだいぶ絞れます。
「金払え」という言い分に対応する法的構成は「物権的請求」ではなく必ず「債権的請求」となるからです。
この債権的請求は、次に「約定債権関係」と「法定債権関係」に分かれます。
第1段階で確定した当事者の間に「契約」関係(約束)があるなら、「契『約』で『定』めたとおりに金払え!」「約束守れ!」といった形で言い分を通すことができます(約定債権関係)。
他方、第1段階で確定した当事者の間に「契約」関係がない(約束していない)と、「約束守れ!」とはいえませんから、「民『法』が『定』めたとおりに金払え!」という形でしか言い分を通せません(法定債権関係)。
では、第1段階で確定した当事者O・Nさんの間に契約関係があるでしょうか?…O・Nさんは、バイクを売る・買うという契約をしていますね。なので、約定債権関係となります。

典型契約13種類のどれかに当たりそう

典型契約13種類のどれかに当たりそうの表

民法には、典型的な契約(「典型契約」)が、「第三編 債権」の「第二章 契約」の第2~14節に、13種類定められていて、これが民法のその部分の目次に表れています。そこで、OさんとNさんの間の契約が、この典型契約のどれかに当たらないか、第2~14節のタイトルを、前から順に見ていきましょう。
まず「第二節 贈与」=ただであげる。「第三節 売買」…これですね!今回のO・Nさんの間の契約は、売買契約です。そうしたら、この「第三節 売買」(555条~585条)の中に、「損害賠償しろ」という言い分を実現できそうな条文はないか…と探していくのです。

ここで、「第三節 売買」の中の目次には、最初に「第一款 総則」がありますが、これはどんなケースにも使えるようなモヤッとした総合ルールなので、即戦力にはなりません。そこで、この部分を飛ばして、「第二款 売買の効力」(560条~578条)から条文を探していきます。つまり、560条から各条文のタイトルを見ていき、Oさんの言い分を実現できそうな条文はないか、当たりをつけていくのです。
そうすると、570条という条文があります。
そのタイトルは「売主の瑕疵担保責任」…ちょっと分かりにくい言葉なので、中身を読んでみましょう。

「売買の目的物に隠れた瑕疵」つまり傷とか欠陥「があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りではない。」
Oさんはバイクが「動かない」と言っており、そのバイクのどこかに欠陥があったんじゃないか…と想像できます。
しかも、バイクは引渡し前にはきちんと動いていたのですから、「隠れた瑕疵」という文言にあてはまりそうじゃないですか?
このように、事件とつながりそうな条文を、そのタイトルや文言などを手がかりにして探していくのです。

こうして、とりあえず570条と法的構成できたので、その一言一句に具体的な事情をあてはめて、本当に570条が使えるのかを検証する「④あてはめ」に移りましょう。

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