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インターネットオークションでの
売買トラブル(後編)

司法試験 /弁護士編①

  • 売買の目的物:バイク
  • 瑕疵:欠陥があってバイクが動かない

まず、「売買の目的物」は、今回の事例では何でしょうか…O・Nさんの間で「売買」の「目的」・対象とした「物」は…バイクですね。
これに「隠れた瑕疵があったとき」であることは、先ほど570条と法的構成する段階で検証済みです。

そうすると、「第五百六十六条の規定を準用する」と、別の条文にたらい回しにされてしまいました。

  • 損害:金額に換算してあてはめる

そこで、566条を見ていくわけですが、その1項、つまり一番最初の項目の文末に、「損害賠償の請求…ができる」と書いてあります。これを使えば、Oさんの言い分を実現できそうですが、この文言にも、一言一句、具体的な事情をあてはめなくちゃいけません。
つまり、Oさんは一体どのような「損害」を被ったのか?…バイクが動かないという「損害」でしょうか…確かにそう考える学者さんもいるのですが、実務では、それをお金に換算した「損害」をあてはめないといけないんですね。これはすごくドライな感じを受けるかもしれませんが、さっき「損害賠償しろ」という言い分は、「金払え」に分類したじゃないですか。だから、お金に換算できるような「損害」じゃないと、賠償請求できないのです。
では、バイクが動かないことをお金に換算するとどうなるでしょうか?ここは、事例でも具体的には設定していないので、想像をめぐらせてみてください…例えば、バイクが動くようにするための修理費が10万円かかったとすると、これがOさんの被った「損害」といえます。
以上から、570条→566条1項の文言にあてはまったので、OさんはNさんに対し、10万円の損害賠償請求ができそうです。

しかし我々は、売主Nさんからの相談を受けているのでした。
だから、Nさんの言い分も聞かず・考えずに、「Oさんの言い分が通ります」「10万円の損害賠償が必要です」と答えるのでは、Nさんは怒りますよね。もう今後は相談に来てくれないかもしれません。
そこで、Nさんのターンに移り、その「言い分」から考えてみましょう。そうすると、Nさんは、「引渡し前にはきちんと動いており、買主が動くかどうか確認をしていない場合に、損害賠償の必要はあるの?」と言っています。このようなNさんの気持ちを想像して、Oさんに対する「言い分」に変換すると…?この第2段階では、できる限り図々しい「言い分」をぶつけることが大事です。「言い分」が激しくぶつかり合うことで、解決すべき本質的な問題点・争点(試験で大きな配点があります)が明確になるからです。
…例えば、「バイクの引渡し前にはきちんと動いていたのだから、損害賠償は不要だ」とか、「ちゃんと動くかどうか確認していないあんた(Oさん)が悪い!」とか、こういう感じの「言い分」が設定できたらOK!「言い分」=人の気持ちの捉え方は様々で、正解はありませんからね。
じゃあ、Nさんは、この「言い分」を通すことができるのでしょうか?
まず、Oさん側の「法的構成」や「あてはめ」を潰して、Nさんに対する損害賠償請求ができないという結論にならないか…という観点で検討します。Oさん側では、法的構成した570条の文言に、具体的事情をあてはめましたよね。これに、Nさんの言い分からツッコミを入れることができないでしょうか?…Nさんの言い分には、「バイクの引渡し前にはきちんと動いていた」という事情がありますが、バイクの引渡し前に分かった「瑕疵」じゃなくても、「隠れた瑕疵」にあてはまってしまいます。また、「ちゃんと確認しなかったあんたが悪い」という言い分についても、「隠れた瑕疵」だったのだから確認しても見つからなかった…と考えることができます。特に今回はインターネット上の売買ですから、ちゃんと確認しようがない面もありますよね。なので、Oさん側で法的構成した570条へのあてはめに、Nさんがツッコミを入れることは無理そうです。
ただ、Oさん側で、570条から芋づる式に法的構成してあてはめた566条も見てみましょう。

566条1項の文言へのあてはめについては、やはりツッコミを入れられそうにないので、今度はNさん側から、その言い分を実現できそうな条文を、別のところから探してみましょう。
“ご近所に挨拶”して、566条3項を見てください。「前二項の場合」つまり566条1項の場合も含みます…「において…損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない」と書いてあります。具体的事情をこの文言にあてはめると、「買主」Oさんが「事実を知った時」つまりバイクが動かない、欠陥があるという事実を知った時「から一年以内に」損害賠償請求を「しなければならない」となります。だから、もしOさんがのんびりしていて、その時から一年以内に損害賠償請求をしなければ、Nさんは「損害賠償は不要だ」という言い分を実現することができます。
…まあでも、実際にはこれはちょっと無理でしょうね…Oさんは普通、バイクが動かない、欠陥があるという事実を知った時から、1年間も損害賠償請求をしないまま放っておくでしょうか?
なので、Nさんの言い分を566条3項で法的構成したとしても、その文言にあてはめていくと、やっぱりちょっと通らないかな…と考えられるわけです。

以上から、結論はこうなります。

結局、相談してくれたNさんには、買主Oさんの勝ちと言わざるを得ません。
それでもNさんの言い分について、このようなプロセスを説明してあげたら、納得してくれるかもしれません。
また、皆さん自身が法的なトラブルに巻き込まれても、この4A(4段階アルゴリズム)を使えば、常に同じようなプロセスを辿って、自力で解決することができるようになります。

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