知っ得!身近な法律Q&A

飲食店で勝手に充電(前編)

司法試験 /弁護士編③

Q.問題

飲食店でYが勝手にスマートフォンを充電した。
この場合どうなるの?

今回の回答者

中村 充(なかむら みつる)

開成中高卒→東大法学部卒→現在弁護士。徹底した試験至上主義から辿り着いた絶対的過去問主義に基づき、中学・大学受験、司法試験を突破してきた。その中で培われた受験テクニック・過去問分析手法は他の追随を許さない。

司法試験においても、予備試験・法科大学院入試から新旧司法試験に至る全過去問が、頭の中にデータベース化されている。このデータベースに基づいて、あらゆる法的問題に通用する普遍的な方法論・4段階アルゴリズム(4A)を完成させた。

A.回答

今回も、4段階アルゴリズム(4A)を使って、順序立てて具体的に考えていきましょう。
4Aとは、

  1. ①当事者確定:「ケンカしているのは誰と誰なのか?」を定める
  2. ②言い分:①の当事者の立場に立って、「相手に対してケンカを売る」
  3. ③法的構成:②の言い分を「実現できる条文」を探す
  4. ④あてはめ:③の条文の一言一句に「問題文の具体的事情を“代入”」する

という、あらゆる法的問題に通用する処理手順です。
まずは「①当事者確定」です。この事例で対立している当事者は、誰と誰でしょうか?

民事では、一般人vs一般人という対立になるので、この事例では、飲食店のがんこ店主Cさん(突然登場しましたが)vsYさんといったところでしょうか。
では次に、①で確定した当事者CとYの立場に立って、「②言い分」を設定してみましょう。まずはCの立場に立ってみましょうか。C=あなたはYに対して、どんなことを言いたくなりますか…「その充電分の電気代を払え!」という気持ちになりませんか?

民事の言い分は、「物よこせ」か「金払え」に尽きます。で、「物よこせ」で考えると「充電した電気を返せ!」…というわけにはいきませんよね。だから、「金払え」となります。
そうすると「③法的構成」では、物権的請求ではなく、必ず債権的請求となります。

民法における4段階アルゴリズム(4A)の具体化

債権的請求は、約定債権関係と法定債権関係に分かれ、①当事者CとYとの間に、契約関係があるかないかで区別されます。事例では、CとYとの間に、スマホの充電についての契約をした等の事情はありません…ネットカフェとかだったら、スマホの充電サービス込みの契約もあるかもしれませんが、飲食店ですしね。
そうすると、当事者間に契約関係がないので、法定債権関係となります。

これが、民法の条文のうちどこにあるかというと…まず我々は、債権的請求を検討しているので、「第三編 債権」にいます。
今回は、当事者間に契約関係がないため、「第二章 契約」は使えません…というわけで、「第三章 事務管理」「第四章 不当利得」「第五章 不法行為」が、法定債権関係で使う条文なのです。
まず、事務管理というのは、「あなたのために好意でやってあげたけどお金がかかったから、そのお金を払ってね」というもので、いわば“余計なお節介”といった状況で使います。次に検討すべきは不法行為です。「悪い行為の被害者が加害者に対して損害賠償を請求する」という状況で使います。
最後に不当利得は、不当に得した人に対して不当に損した人が「その得した分を私に返せ!」という状況で使います。これが最も守備範囲が広いので、一番最後のセーフティネットのような位置づけで、最後に検討するのです。

というわけで、今回の事例も、事務管理っぽいか?→不法行為っぽいか?→ダメなら不当利得しかないという順序で検討していきましょう。

さて、この事例は、CがYのために「好意でスマホを充電させてあげたけど電気代がかかったから、その電気代を払ってね」という事務管理の状況…ではありませんよね。飲食店でYが“勝手に”スマホを充電したという事情がありますから。
では、不法行為でしょうか。Yが勝手にスマホを充電したという「悪い行為の被害者C」が「加害者Y」に対して「損害賠償を請求する」という状況…といえそうですかね。Cは電気を勝手に使われた被害者であり、Yはその加害者ですから。というわけで、民法全1044条の中から、不法行為(709~724条:全16条)の条文に絞れました。

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