知っ得!身近な法律Q&A

飲食店で勝手に充電<刑事事件編>(前編)

司法試験 /弁護士編④

Q.問題

飲食店でYが勝手にスマートフォンを充電した。
この場合どうなるの?
刑事事件編

今回の回答者

中村 充(なかむら みつる)

開成中高卒→東大法学部卒→現在弁護士。徹底した試験至上主義から辿り着いた絶対的過去問主義に基づき、中学・大学受験、司法試験を突破してきた。その中で培われた受験テクニック・過去問分析手法は他の追随を許さない。

司法試験においても、予備試験・法科大学院入試から新旧司法試験に至る全過去問が、頭の中にデータベース化されている。このデータベースに基づいて、あらゆる法的問題に通用する普遍的な方法論・4段階アルゴリズム(4A)を完成させた。

A.回答

今回も、4段階アルゴリズム(4A)を使って、順序立てて具体的に考えていきましょう。
4Aとは、

  1. ①当事者確定:「ケンカしているのは誰と誰なのか?」を定める
  2. ②言い分:①の当事者の立場に立って、「相手に対してケンカを売る」
  3. ③法的構成:②の言い分を「実現できる条文」を探す
  4. ④あてはめ:③の条文の一言一句に「問題文の具体的事情を“代入”」する

という、あらゆる法的問題に通用する処理手順です。
今回は、飲食店でYが勝手にスマホを充電したという事例について、刑事事件にならないか、検討していきましょう。
まずは「①当事者確定」です。この事例で対立している当事者は、誰と誰でしょうか?

刑事事件ですから、検察官Pvs今回犯罪っぽい行為をしたYという対立になってきます。「公訴は、検察官がこれを行う」(刑事訴訟法247条)と定められており、検察官だけが、犯罪っぽい行為をした人を「公訴」=起訴して刑事裁判を始められるからです。

では、「②言い分」段階に入りましょう。

まず検察官Pが、犯罪っぽい行為をしたYに対し、「お前のやった行為は犯罪だ(から、刑罰を科されるべきだ)!」という言い分をぶつけます。
さて、Yの犯罪っぽい行為は…そもそもYの行為として、飲食店で勝手にスマホを充電したことしか事例に挙がっていませんから、これですね。

この言い分を「③法的構成」していきましょう。
ここでは、検察官Pの「飲食店でYが勝手にスマホを充電した行為は犯罪だ!」という言い分を実現できる条文を探すため、刑法という法律の「第2編 罪」の目次=犯罪リストを見ていきます。

まず、犯罪は大きく、国・社会・個人に対する犯罪と3種類に分けられるのですが、今回はどれに対する犯罪でしょうか?…ここでは、個人に対する犯罪→社会に対する犯罪→国に対する犯罪の順に検討していきます。問題となる犯罪の多くが、個人に対する犯罪だからです。そうすると、飲食店でYが勝手にスマホを充電した行為の被害者(個人)は?…飲食店の店主を思いつくのではないでしょうか。とすると、この行為には、飲食店店主という個人に対する犯罪が成立する可能性があります。

個人に対する犯罪は、刑法の目次を見ると、「第2編罪」の第26章あたりから条文があるので、そこからタイトルを見ていって当たりをつけるのですが、第26章が殺人の罪、第27章が傷害の罪、第28章が過失傷害の罪…と、今回の事例とは明らかに無関係なタイトルがしばらく続いていきます。で、「第36章 窃盗及び強盗の罪」でピンと来た方はGoodセンス!そう、今回の事例は、Yが飲食店の電気を「盗」んだものと捉えることができるのです。このように、飲食店の電気という財産的なもの(電気代がかかりますから)をターゲットとした行為については、“財産犯”(36~40章)を検討するのですが、そのとき最初に検討すべきなのが、最初の36章のタイトルの最初に挙げられている「窃盗…罪」(235条)です。他の財産犯は、窃盗罪の検討中に派生的に検討できることが多いからです。
というわけで、とりあえず235条と法的構成します。

では、235条に書いてある一言一句に、今回の事例の具体的事情を「④あてはめ」ていきましょう。
235条には、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と書いてあります。
まず、Yが「取」った「他人の財物」にあてはまる事情はあるでしょうか?…先ほど、“Yが飲食店の電気を「盗」んだ”と捉えたので、飲食店店主という「他人の」電気が…あてはまりますか?電気って、財「物」なんですかね。

よく分からないことが出てきたら、まず周辺の条文を探してみてください…ちょっと遠いところ、36章末尾に、245条というのがあります。

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