知っ得!身近な法律Q&A

子供が相手を殴って怪我をさせたら、
どうなるの?民事編(前編)

司法試験 /弁護士編⑤

Q.問題

公園で子Aが他の子Bを殴って怪我をさせた。この場合どうなるの?

今回の回答者

中村 充(なかむら みつる)

開成中高卒→東大法学部卒→現在弁護士。徹底した試験至上主義から辿り着いた絶対的過去問主義に基づき、中学・大学受験、司法試験を突破してきた。その中で培われた受験テクニック・過去問分析手法は他の追随を許さない。

司法試験においても、予備試験・法科大学院入試から新旧司法試験に至る全過去問が、頭の中にデータベース化されている。このデータベースに基づいて、あらゆる法的問題に通用する普遍的な方法論・4段階アルゴリズム(4A)を完成させた。

A.回答

今回も、4段階アルゴリズム(4A)を使って、順序立てて具体的に考えていきましょう。

4Aとは、

  1. ①当事者確定:「ケンカしているのは誰と誰なのか?」を定める
  2. ②言い分:①の当事者の立場に立って、「相手に対してケンカを売る」
  3. ③法的構成:②の言い分を「実現できる条文」を探す
  4. ④あてはめ:③の条文の一言一句に「問題文の具体的事情を“代入”」する

という、あらゆる法的問題に通用する処理手順です。

今回はこのような事例です。まず、「①当事者確定」、つまり、この事例で対立している当事者を確定したいと思います。民事事件の構造は、一般人対一般人という対立になってきます。では、一体この事例で対立しているのは誰と誰かと言うと、登場しているのは子Aと子Bですね。ただ、法廷でこの子どもが出てきて法律を使ってけんかするというのはちょっと考えにくいですよね。そこで、実際にはこの子どもAとBの親同士のけんかという形になってくるわけです。そして、今回文句を言いたい側は怪我をさせられたBの親ですね。「親B」と呼ぶことにします。「子どもを殴って怪我をさせやがって」というふうに、子どもAの親である「親A」に対して何か文句を言うんじゃないのかなと推測できるわけです。したがって、対立当事者としてはこのようになります。

今回は、親B対親Aという対立構造になります。では、「②言い分」段階に行きましょう。親Bは親Aに対して文句を言いたいわけですが、そもそも民事事件において、言い分というのは、「物よこせ」あるいは「金払え」といったところに収束していくのでしたよね。ただ、今回、親Bが親Aに対して「物よこせ」はちょっと考えにくいです。そこで、「金払え」、具体的には、例えば、子Bを病院に連れていって治療費等がかかったならば、「怪我をさせた分の治療費を払え」と、こういうふうに言うのではないでしょうか。

このように「②言い分」が決まりましたら、これを「③法的構成」しましょう。言い分は、「金払え」ですから、債権的請求というふうに法的構成できます。

民法における4段階アルゴリズム(4A)の具体化

民法における4段階アルゴリズム(4A)の具体化の表

債権的請求は約定債権関係と法定債権関係に分かれます。そして、本問ではBとAという当事者の間に契約関係はないですね。したがって、約定債権関係ではなく法定債権関係で処理することになります。

法定債権関係は3種類ありました。条文上は事務管理、不当利得、不法行為、の順に並んでいますね。ただし、不当利得に関しては一番守備範囲が広くてモヤッとしていますので後回し。
そこで事務管理、不法行為から検討して適用がなさそうだったら不当利得でいくのでしたよね。なので、まず事務管理が使える場面かを検討しますと、事務管理というのは好意でやってあげたことについてかかった管理費用を払えというものです。
しかし、今回は、BがAのために好意で何かをやってあげて、その管理費用を払えというわけではないため、事務管理は使えないということになります。
そこで次に不法行為を見ますと、これは被害者側が加害者側に対して損害賠償を請求するというものです。そして、子Bというのは殴って怪我をさせられた被害者、子Aの方が殴った加害者、と考えられますので、今回は、これを使って親Bが親Aに対して損害賠償請求をするという場面と考えられます。

したがって、不法行為の条文への「④あてはめ」を後編で考えていきましょう。

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