【弁理士】ロールケーキから学ぶ商標のふか~い話:その2

 

 弁理士試験受験生の皆様。こんにちは。TAC弁理士講座担当の齋藤晶子です。

 今回のテーマは、「ロールケーキから学ぶ商標のふか~い話:その2」です。

 今回も、堂島ロールというロールケーキのブランドを巡る商標のお話についてです。
 前回の続きです。

4.あれ?確か堂島ロールの「モンシュシュ」も商標権者では?

 そ、そうなんですよ。
 前回お話ししました通り、堂島ロールのモンシュシュは「ケーキ又は菓子を主とする飲食物の提供、及びこれらに関する情報の提供」を指定役務とする「MONCHOUCHOU/モンシュシュ」についての商標権者ではあります。
 ここで、この事件の前提としてお話ししました2条6項が登場します。
 確かに、商品と役務は類似することはありますけど、それって実際は限られているってお伝えしました。
 つまり、「ケーキ」と「ケーキの小売等役務」であれば類似範囲となりえます。
 ここで、「小売等役務」っていうのは、「顧客が来店して立ち去るまでの間に小売又は卸売に伴って提供される総合的なサービス活動であり、最終的に商品の販売により収益をあげるもの」(平成18年改正本 p80)です。「ケーキの小売等役務」はケーキの商品説明等をすることで、喫茶店でケーキを提供するという「ケーキ又は菓子を主とする飲食物の提供、及びこれらに関する情報の提供」とは違うんですよ。
 だから、「ケーキ」と「ケーキ又は菓子を主とする飲食物の提供、及びこれらに関する情報の提供」は非類似関係です。
 つまり、堂島ロールのモンシュシュは商品「ケーキ」について商標「MONCHOUCHOU/モンシュシュ」の権利者ではないのです。
 だから、商品「ケーキ」について「MONCHOUCHOU/モンシュシュ」を使用するとそれは権利範囲(25条、37条1号)外での使用になります。
 そして、運の悪いことに、「ゴンチャロフ」という洋菓子メーカーが、「菓子、パン」を指定商品とする登録商標「モンシュシュ」を有していたから、堂島ロールのモンシュシュは「ゴンチャロフ」の商標権の侵害者になってしまったのです。

5.商26条1項1号の抗弁、いけるんじゃない?

 確かに、堂島ロールのモンシュシュは、商号「株式会社モンシュシュ」です。
 ここで、侵害訴訟の抗弁事由として「正当理由」があると主張できるものに、「商標権の効力が及ばない」場合として商26条があります。この商26条1項1号は
「自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標」っていうのがあります。
 ここで、商号「株式会社モンシュシュ」の「モンシュシュ」部分は略称になるから、これが「著名」であれば、同号の抗弁の主張ができそうですよね。
 でも、これもちょっと厳しかったんです。今でこそ全国展開していますが、「モンシュシュ」の「ロールケーキ」として著名だったというより、「堂島ロール」として有名だったから、「モンシュシュ」そのものの著名性はちょっと微妙。よって、「自己の著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標」の使用とは言えなかったわけです。
 あとは、「普通に用いられる方法」ってとこもひっかかったかな?喫茶店の店舗表示や喫茶店のためのパンフレット・ウェブ等における宣伝として使用されるに止まっていたのであればセーフだったかな?それを超えて、ケーキの包装等に使用したたら、「株式会社モンシュシュ」の喫茶店としての「普通に用いられる方法」ではないかな?

6.結局は・・・

  「モンシュシュ」は敗訴。が平成25年3月7日に大阪高裁で商標権侵害を認め「堂島ロール」の「モンシュシュ」に損害賠償を命じました。差止めに関しては、被告「モンシュシュ」が訴訟係属中に商号を「モンシェール」に変更し、店舗や包装における名称にも反映させたため、被告標章の使用のおそれがなくなったとして認めませんでした。
 こんなわけで、「堂島ロール」の「モンシュシュ」は店舗名を「モンシェール」に変更し、現在に至ります。

7.リスク管理の重要性

 商標を含め、知的財産の法的な問題は独特な考え方が存在します。だから、通常のビジネスの世界では想定できないようなリスクが内在している可能性が高いのです。
 この「モンシュシュ事件」のように素人的には全く問題のないようなものでも実は危険がいっぱい。
 だから専門家との相談により予めリスク回避をするべきなんですよね。そしてその専門家「弁理士」を目指す皆様の見解は重宝されますよ。