【ビジ法】
改正民法のポイント②


TACビジネス実務法務検定試験®講座
専任講師 田畑 博史


 ビジ法試験の受験を検討されている皆様、既に受験勉強を進めている皆様、こんにちは。ビジ法試験を受験しようか迷われている方、次のビジ法試験日程は7/1ですから、まだ2ヶ月近くあり、今から始めてもまだまだ間に合います。このブログを読まれて、少しでも興味が沸いたのであれば、是非、始めてください。
 今回も前回に引き続き、改正民法から出題が予想されるポイントを指摘していこうと思います。第2回目は、3級、2級ともに重要テーマである後発的不能の分野です。

1.後発的不能とは

 民法では、契約内容を実現できないことを不能と呼びますが、契約締結時を基準に、それよりも以前の場合を原始的不能、以後の場合を後発的不能と呼びます。したがって、今回のテーマは、契約締結後に契約内容を実現できなくなった場合の処理です。

2.事例設定

 Aは、自己が所有する甲建物につき、Bとの間で売買契約を締結しました。ところが、その後、とある事情で、甲建物が火事で焼失してしまい、Bに引き渡すことができませんでした。この場合、Bは甲建物の代金を支払わなければならないのでしょうか。また、BはAにどのような主張ができるでしょうか。


 この問いの答えは、事例にある「とある事情」が何なのかによって異なります。そこで、以下では、「とある事情」ごとに説明していきます。

3.Aの責めでの不能

 例えば、甲建物を引き渡す準備として、Aが甲建物の清掃をしていたところ、その際の火の不始末で家事を起こしてしまったようなAのせいで後発的に不能となった場合を考えましょう。
 この場合、現行民法では、AはBから契約を解除(契約をなかったことにすること)されたり、損害賠償を請求されることになります。このAの責任を債務不履行責任といいます。このように、現行民法では、債務不履行責任が生じるためには、Aの責めに帰すべき事由(言い換えると、Aの故意・過失)が必要とされています。この点、改正民法でも、Bが損害賠償を請求するためには、Aの責めに帰すべき事由が必要な点に変わりはないですが、Bが契約を解除するためには、Aの責めに帰すべき事由は不要となりました。
 よって、この場合の結論としては、Bが契約を解除すれば、もはや代金を支払う必要はありませんし、別途、Bに損害があれば、その賠償請求も可能となる点で、現行民法、改正民法で違いはありません。また、契約を解除するかどうかは、Bの自由ですから、Bはあえて解除せずに、損害賠償請求だけをする場合もあります。この場合、契約がなくなっていない以上、Bは代金を支払う必要がありますが、甲建物を手に入れていないのに代金を支払うことは損害に他なりませんから、その代金相当額も含めて損害賠償を請求することになります。

4.不可抗力で不能

 例えば、甲建物が落雷により焼失した等、AのせいでもBのせいでもなく後発的に不能となってしまった場合、危険負担として処理されます。危険負担とは、もはや甲建物を渡してもらえないBが代金を支払う必要があるかどうかを決める制度です。
 この場合、現行民法では、甲建物のような特定物(他で替わりが利かない物と考えれば良いです)の売買契約では、買主が危険を負担し、Bは代金を支払わなければならないとしています。これを危険負担の債権者主義といいます。しかし、建物を渡してもらえないのに、代金だけは全額払わなければならないというのは、買主に酷すぎるのではないかと、この制度への問題点が提起されていました。そこで、改正民法では、特定物売買であっても、買主が物を渡してもらえない以上は、代金も支払わなくてもよいことになりました。これを危険負担の債務者主義といいます。このように、改正民法では、危険負担が債務者主義で一本化されることになりました。
 よって、結論としては、現行民法では、Bは代金を支払う必要がありますが、改正民法では、支払う必要はないことになります。

5.Bの責めで不能

 例えば、Bが甲建物を視察に行った際の火の不始末で焼失させてしまった等、Bのせいで後発的に不能となった場合です。この点、現行民法では、危険負担の債権者主義が適用され、Bは代金の支払いを免れることはできないとされています。そして、改正民法でも、表現こそ変更されたものの、実質的な変更はありません。この場合は、Bの自業自得ですから、特に異論はないところでしょう。また、先ほど、改正民法では、契約の解除をするために、Aの責めに帰すべき事由が不要となったと説明しました。とすれば、本ケースでも、Bは契約を解除して、代金の支払いを免れることができそうです。しかし、そんな逃げ道を与えないため、改正民法では、自身に責めに帰すべき事由がある場合は、解除できないとされています。
 よって、結論としては、現行民法、改正民法いずれであっても、Bは代金を支払う必要があることになります。

 以上が後発的不能の処理でしたが、この辺りの処理手順は結構長く民法を勉強している人であっても混乱するところです。早いうちに整理して、マニュアル化しておくと良いでしょう。