【ビジ法】
改正民法のポイント⑤


TACビジネス実務法務検定試験®講座
専任講師 田畑 博史


 ビジ法試験の受験を検討されている皆様、既に受験勉強を進めている皆様、こんにちは。今回も前回に引き続き、改正民法から出題が予想されるポイントを指摘していこうと思います。大きな改正部分については、前回までにお話ししましたので、第5回目は、それ以外の部分で、ビジ法試験で注意が必要な改正点をいくつかお話しします。

1.要物契約

 ビジ法試験では、契約類型として、消費貸借契約寄託契約がよく出題されます。消費貸借契約では、お金の貸し借り、寄託契約では、倉庫で物を預かってもらうことをイメージすると良いです。現行民法では、いずれも要物契約として規定されています。要物契約とは、実際に目的物を渡さないと成立しない契約をいいます。したがって、消費貸借契約では、実際に貸すお金を相手に渡して初めて契約が成立します。寄託契約では、実際に預かってもらう物を渡して初めて契約が成立します。これは、改正民法では、寄託契約が諾成契約へと変更されましたので、実際に預かってもらう物を渡さなくても、口約束だけでも成立することになりました。また、消費貸借契約も、書面または電磁的記録による場合は、諾成契約でも構わないことになりましたので、契約書を作成してお金の貸し借りをする場合は、実際にお金を渡していない段階でも、契約が成立します。


2.相殺禁止

 自分が持っている債権と、逆に自分が負っている債務とを対当額で清算することを相殺といいます。例えば、AがBに100万円支払ってもらう権利を持っていて、逆にAがBに80万円支払う義務がある場合、Aは、100万円と80万円をプラスマイナスして、Bに対して、もう80万円は払わないから、あと20万円だけ払ってくれといえるのです。この時、Aが支払う必要のあった80万円が不法行為責任に基づく損害賠償であった場合、Aは相殺できないとしているのが現行民法です。被害者であるBに現実にお金が行き渡るようにという配慮からです。しかし、改正民法では、不法行為の損害賠償であれば、一律に相殺できないとするのではなく、悪意の不法行為、生命・身体を侵害した場合の不法行為の場合に限定されることになりました。


3.債権譲渡の異議をとどめない承諾

 AがBに対して有している100万円の債権をAがCに譲ることを債権譲渡といいます。この時、Bは、元々Aに対して主張できたことは、引き続きCにも主張できるのが原則なのですが、異議をとどめない承諾をしてしまうと、それが出来なくなるというのが現行民法です。この異議をとどめない承諾が改正民法では廃止されています。


4.定型約款

 皆さんが、保険に加入する際やホテルに宿泊する際に、約款といわれる契約内容をあらかじめ記した書類を渡されることがあると思います。保険会社やホテルは、日々、多数の客を相手に契約を結んでいますので、いちいち一人ひとりの客と契約内容を合意し、契約を結んでいたのでは、時間がかかります。そこで、あらかじめ契約内容を定型化した約款を作成し、うちと契約を結ぶ場合、この約款に従ってもらうことにしているのです。このような約款は、日常の取引でよく用いられているにもかかわらず、民法には何ら規定がありませんでしたので、改正民法では、定型約款の規定を新設し、定型約款を使って取引をする場合に守るべき手続きや内容を制度化しました。

 以上、5回に亘って改正民法のポイントをお話ししてきました。今は、既に改正民法が成立していながら、実務では、あと2年くらいは現行民法が使われるという厄介な時期ではありますが、プラス思考で考えると両方の民法を学ぶことができる貴重な時期でもあります。新旧民法を比較する形で理解することが、最も効果的な理解につながると思います。