【ビジ法】
2019「試験に出そうな改正民法②」


TACビジネス実務法務検定試験®講座
専任講師 田畑 博史


 ビジ法試験の受験を検討されている皆様、既に受験勉強を進めている皆様、こんにちは。前回に引き続き、改正民法から出題されそうなポイントを指摘していこうと思います。今回のテーマは、3級の頻出テーマである意思表示の分野です。


1.事案設定

 Aは、Bに騙されて、自己が所有する土地を時価の半額でBに売却し、Bは、すぐさま同土地を事情を知らないCに転売した。この場合、AはCから土地を取り戻すことができるでしょうか。


2.Aの主張

 Aは、Bに騙されて、土地を売却するという意思表示をしていますから、民法上、詐欺を理由に意思表示を取り消すことができます。
 また、騙されたAは、同時に錯誤にも陥っていますから、現行民法上、錯誤を理由に意思表示の無効を主張することもできそうです。
 このように、騙された場合には、通常、同時に勘違いもしていますから、主張できる民法上の制度が2つあることになります。しかし、一方では取消しの主張、他方で無効の主張と異なるため、Aは、いずれを主張すべきなのかが議論されていました。この問題は、そもそも無効なものを取り消すことができるのかという点でも問題となっていました。
 そこで、2020年4月に施行される改正民法では、錯誤による意思表示を無効から取消しができると変更されました。よって、改正民法施行後は錯誤取消しという聞き慣れない制度に変わります。
 この改正により、本事例でAが主張し得るのは、改正民法施行後は、いずれであっても、意思表示の取消しということになります。
 冒頭でも述べた通り、このテーマは3級で頻出です。特に空欄補充問題で意思表示の全体像が問われることも多いので、その対策をしておいてください。また2級でも、この改正に伴って、電子消費者契約法の条文も変更されている点に注意が必要です。


3.第三者Cの保護

 現行民法では、詐欺取消しは、善意の第三者には対抗(主張)できないとされています。したがって、Aは、たとえAB間の売買契約を取り消しても、善意のCから土地を取り戻すことができないのです。
 他方で、錯誤無効には、第三者保護規定がありません。したがって、Aが錯誤無効を主張した場合、善意のCからでも土地を取り戻すことができそうです。
 このように、同じ事象であるにもかかわらず、Aがいずれを主張するかという偶然でCの保護が180度変わってしまうことになります。この点が不均衡であるとして、改正民法では、詐欺取消しも錯誤取消しも、いずれも善意無過失の第三者には対抗(主張)できないことになりました。したがって、改正民法施行後は、Aがいずれを主張した場合でも、善意のCに過失がなければ、土地を取り戻せないことになります。
 ここで、改正民法では、Cは単に善意だけでは保護されず、善意無過失(必要な注意を欠いていることを過失といいます)であることが必要となったこともポイントです。これは、善意のCが保護される結果、詐欺の被害者であるAが犠牲になるのは、バランス的にどうなのかと議論されていたところでした。そこで、Aが騙されて甲土地を売却したことをCが知らなかったとしても、そのことを注意深く調べればわかったというような場合は保護されないことにすることでバランスを図ったのです。


4.改正の経緯

 このように、民法改正は、従来から争点となっていた部分を明文化することで解決したといえる部分が多くあります。そこで、現行民法を知っていたり、勉強したことがある方にとっては、むしろ、はっきりしてわかりやすくなったと感じるところではないかと思います。