【ビジ法】
2019「試験に出そうな改正民法③」


TACビジネス実務法務検定試験®講座
専任講師 田畑 博史


 ビジ法試験の受験を検討されている皆様、既に受験勉強を進めている皆様、こんにちは。前回に引き続き、改正民法から出題されそうなポイントを指摘していこうと思います。今回のテーマは、3級、2級いずれでも頻出テーマである債務不履行の分野です。


1.特定物と種類物

 民法では、当事者が個性に着目して取引した物のことを特定物といいます。例えば、ダヴィンチの描いたモナ・リザの絵画や中古の自動車、不動産などがこれに該当します。
 簡単に言うと、同じ物が一つしかなく、替わりがきかないような物です。これに対して、当事者が種類と数量にのみ着目していて、個性に着目しているわけではない物を種類物(不特定物)といいます。量産されている新品の電化製品などがこれに該当します。


2.取扱いの違い

 AがBに種類物を売却した場合、例えば、甲社製の新品のテレビαを売買したと考えましょう。この場合、AがBに渡したテレビαに不具合があれば、Aは、やるべきことをしていないことになりますから、債務不履行ということになります。よって、Bは、不具合のないテレビαの引渡しを請求できますし、Aに責められる事情があれば、Bは、損害賠償請求や売買契約の解除をすることもできるのが現行民法です。
 他方、AがBに特定物を売却した場合、例えば、甲社製の中古自動車βを売買したと考えましょう。この場合、当初からβに不具合があったとしても、Aはそのままの状態でBに渡せば、やるべきことをしたことになります。よって、債務不履行はありませんから、Bは、不具合のない自動車βの引渡しを請求することができません。ただし、これでは、買主Bが酷なので、瑕疵担保責任という制度を使って、損害賠償請求や売買契約の解除ができるとするのが現行民法です。


3.改正のポイント

 このように現行民法では、取引対象が種類物なのか、特定物なのかによって、大きく扱いを異にしていました。しかし、特定物を買った人も、出来るだけ不具合のない物を渡してもらいたいと考えるはずで、不具合があっても、そのままの状態で渡せば、やるべきことが完了するというのは、現実に即していないという批判のあったところでした。
 そこで、改正民法では、種類物であれ特定物であれ、不具合のある物を渡した売主には、同様の責任を生じさせることで統一しました。具体的には、渡された物に不具合があれば、買主は、その修理を請求したり、替わりの物の引渡しを請求することができます。これを追完請求権といいます。また、修理を請求したのに、応じてくれなかったり、そもそも修理ができないような場合は、その分、代金を減額するよう請求することもできます。さらに、不具合が売主の責めで生じた等の場合には、損害賠償請求もできます。また、その不具合のために、買主が契約の目的を達成できないような場合、契約を解除することもできます。この点、改正民法でも、買主が損害賠償を請求するためには、売主の責めに帰すべき事由が必要な点に変わりはないですが、買主が契約を解除するためには、売主の責めに帰すべき事由が不要となった点も重要です。


4.取引への影響

 今回お話しした民法改正の内容は、難しい分野ではありますが、ビジネスにおける取引において、最も影響の大きい部分ではないかと思います。また、この改正により、現行民法を前提として、それを修正する形で規定されている商法や消費者契約法の条文も変更されることになりますから、影響は民法だけにとどまりません。よって、消費者と取引することの多い事業者にとって、責任の範囲の確認や契約条項の見直し等、大きな変更が求められます。