【ビジ法】
2019「試験に出そうな改正民法④」


TACビジネス実務法務検定試験®講座
専任講師 田畑 博史


 ビジ法試験の受験を検討されている皆様、既に受験勉強を進めている皆様、こんにちは。前回まで改正民法から出題されそうなポイントとして、実際の取引にも影響しそうな部分を指摘してきましたが、今回はこのシリーズの最終回として、3級の正誤問題や2級の選択肢の一つとして出題される可能性のある細々とした変更点を指摘していこうと思います。

1.要物契約

 ビジ法試験では、契約類型として、消費貸借契約寄託契約がよく出題されます。消費貸借契約では、お金の貸し借りを、寄託契約では、倉庫で物を預かってもらうことをイメージすると良いです。現行民法では、いずれも要物契約として規定されています。要物契約とは、実際に目的物を渡さないと成立しない契約をいいます。したがって、消費貸借契約では、実際に貸すお金を相手に渡して初めて契約が成立します。寄託契約では、実際に預かってもらう物を渡して初めて契約が成立します。この点、改正民法では、寄託契約が諾成契約へと変更されましたので、実際に預かってもらう物を渡さなくても、口約束だけでも成立することになりました。また、消費貸借契約も、書面または電磁的記録による場合は、諾成契約でも構わないことになりましたので、契約書を作成してお金の貸し借りをする場合は、実際にお金を渡していない段階でも、契約が成立します。

2.消滅時効の起算点の変更

 一定期間の経過により権利が消滅する制度を消滅時効といいます。今、Aは「今度東京で雨が降ったら、Bの傘をもらう」という契約をBと交わしたとしましょう。この点、「債権」の消滅時効期間は、現行民法では、権利を行使することができる時から10年とされています。したがって、AがBに傘が欲しいと請求することができるのは、東京で雨が降るという「期限」が到来した時ですから、その時点から起算して10年後に消滅時効が完成していることになります。もっとも、現行民法では、権利の種類ごとにこれと異なる時効期間も規定されている上、商法には別の時効期間の定めがある等、時効期間の適用が複雑でしたので、改正民法では、統一化が図られました。改正民法では、現行民法にある権利を行使することができる時から10年という客観的起算点に加えて、債権者が権利を行使できることを知った時から5年という主観的起算点を導入し、原則として、この時効期間で統一されることになっています。
 したがって、東京で雨が降った時から10年経てば消滅時効が完成する点は、現行、改正民法に共通ですが、これに加えて、改正民法では、Aが東京で雨が降ったことを知った時から5年経った場合も消滅時効が完成することになります。

3.時効制度における用語変更

 例えば、債権者が債務者を相手に金銭の返還請求訴訟を起こした場合のように債権者による「請求」があった場合、現行民法上、債権の消滅時効は中断することになります。したがって、あらためて10年が経過しないと消滅時効は完成しないことになります。この「中断」という用語は、一時的に進行を止める場合に日常的に使われる中断という言葉とは意味が異なり、それまでの時効期間を無意味にし、振出しに戻すことを意味します。この点がわかりにくかったため、改正民法では、時効の完成猶予・更新という制度にあらためられました。したがって、改正民法にあてはめると、債権者による貸金返還請求訴訟の提起によって、債権の消滅時効の完成が猶予され、原告勝訴の判決が出ることによって、消滅時効が更新され、あらたに進行を始めることになります。

 以上のことは、制度そのものの根幹が変わるような大きな改正点ではありませんが、知識としては知っておく必要があります。実際に、時効の完成猶予については、既に出題されています。

 今年は、暦の関係で、6/30にビジ法試験が実施されますので、このブログが掲載される時点で、試験まで残り1ヵ月程度になります。そこで、次回からは、直前対策シリーズとして、直前期に見直しておくべき点を指摘していきます。