【行政書士】
データリサーチの結果を踏まえての講評です。


こんにちは!TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。

平成29年度の行政書士試験から10日が経ちました。
ただいま、TAC行政書士講座では、本試験を受験された方々へ向けて、皆様の解答を入力していただいて、採点を行う無料Web採点サービスを行っています。11月28日(火)17:00までが入力受付期間になります(結果の閲覧は12月13日~1月24日18時まで)。記述式の採点も行いますので、ご希望の方は、お早目にご登録の上、解答の入力をお願いします。

そのデータを踏まえて、今一度、講評を再考してみましょう。

《1.総評》
今年の本試験は、出題形式は例年の傾向を踏襲したものでした。特にサプライズ的な問題はありません。形式としても、5肢択一式問題は、単純正誤形式、組合せ形式のみの出題で、個数問題は1問もありませんでした。記述式もオーソドックスな45マス問題が3問でした。
難易度は、行政法は易しく、民法は難しいというように、科目ごとにバラつきはあるものの、全体をならせば、比較的易しいレベルといえます。
科目別・形式別にみると、行政法は、択一、多肢選択式は易しい問題でした。9割程度の得点も可能です。記述式はやや難しく、5割程度得点できればよいといえるでしょう。民法は、択一は難しかったです。4割~5割程度得点できればよいでしょう。ただ、その分、記述は易しい問題ですので、8割程度の得点も可能な問題です。憲法は標準的、商法は易しめです。一般知識は、やや難しめですが、文章理解が容易でしたので基準点のクリアは容易です。
択一問題の基本的な問題を確実に拾えば、150~160点は得点できます。もし、多少取りこぼしがあったとしても、記述式が容易ですので、40点程度の得点して挽回することもできる問題でした。全体の合格率は、昨年の9.95パーセントから上昇し、12~13パーセントぐらいの合格率になるのではないかと予想します。

《2.法令・5肢択一式》

【基礎法学】易しい

問題1基礎法学(犯罪論)82%易
問題2基礎法学(法思想)60%普通


犯罪論に関する問題1は、刑法の基本的な考え方についての問題ですが、正答率は良かったです。法思想に関する問題2は、アの法実証主義、ウの自然法は過去問での出題もあり、二つが確定できれば正解できる比較的易しい問題でした。2問とも正答率60%を超えており、2問の正解が可能といえる問題です。

【憲法】やや難しい

問題3憲法人権(人権享有主体性)74%普通
問題4憲法人権(財産権・奈良県ため池条例事件)45%難
問題5憲法統治(内閣一般)40%難
問題6憲法統治(予算の法的性質)55%やや難
問題7憲法総論(憲法の概念)70%普通


憲法は全体としての難易度は標準的~やや難しいレベルでした。
問題3は人権享有主体性という典型テーマですが、天皇の民事裁判権についての肢4が正解という点でやや難しい問題でした。とはいえ、他の肢が比較的簡単でしたので、消去法で得点できる問題です。問題4は奈良県ため池条例事件という有名判例ですが判旨の細かいところが問われており、難しかったといえます。これに対して、問題5は、正答率は低いですが、内閣の基本問題で確実に得点すべき問題です。過去問頻出です。肢2を選択している方が多かったのですが、「明文」で「閣議」という言葉は出てきません。日頃から条文を丁寧に読んでいれば簡単でした。
問題6は学説問題。問題7は憲法概念に関する問題。いずれも基本で得点したい問題です。


【行政法】

問題8行政法一般的な法理論(取消しと撤回)73%普通
問題9行政法一般的な法理論(無効の行政行為)46%難
問題10行政法一般的な法理論(執行罰)75%普通
問題11行政手続法(目的)92%易
問題12行政手続法(理由の提示)80%普通
問題13行政手続法(聴聞)87%易
問題14行政不服審査法(審査請求の対象)33%難
問題15行政不服審査法(審査請求人)72%普通
問題16行政不服審査法(執行停止)85%易
問題17行政事件訴訟法(申請拒否処分の取消訴訟)63%普通
問題18行政事件訴訟法(裁決取消しの訴え)31%難
問題19行政事件訴訟法(仮の差止め)83%易
問題20国家賠償法(1条)92%易
問題21国家賠償法(4条・失火責任法の適用)74%普通
問題22地方自治法(公の施設)92%易
問題23地方自治法(地方自治一般)84%易
問題24地方自治法(住民監査請求と住民訴訟)66%普通
問題25行政法一般的な法理論(裁量権の範囲)44%難
問題26行政不服審査法・行政事件訴訟法(教示)66%普通


行政法は典型テーマがほとんどを占め、また条文知識を問う問題が中心でした。難易度も易しく、できれば択一19問中少なくとも15問以上は得点したい問題でした。
問題8~10の一般的な法理論。問題8の「取消しと撤回」の問題については、条文操作をさせる問題で、出題形式がやや難しい問題でしたが、取消しと撤回の意味が押さえられていれば、内容的には易しい問題でした。問題9・10は典型テーマです。問題9の正答率が低くなっていますが、基本として確実に正解すべき問題です。
問題11~19の行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、はいずれも条文知識を問うもので、問われいてるテーマも典型的なテーマ、内容的にも易しく、この9問はすべて得点すべき問題でした。気になるのは、問題14の正答率が低いことです。一般概括主義という基本知識です。確実に正解したいところです。
問題20・21の国家賠償法の問題ですが、問題20は1条の判例問題ですが正解肢2が易しかったです。問題21は失火責任法の知識も必要となる内容的にはやや難しい問題でしたが、組合せ問題のためか、正答率は良かったです。
問題22~24の地方自治は、あまり受験生の手が回らない科目ですが、過去問をしっかりこなしているだけでも、全問正解可能な易しい問題でした。
問題25は、長文かつ判例の並べ替え問題ということで、行政法の中でも難しい問題の一つです。並べ替え自体は易しいのですが、判例独特の言い回しも多く、判例を読み慣れていないと内容を把握するのに時間がかかってしまった方もいらっしゃるでしょう。問題26は行政不服審査法・行政事件訴訟法の教示に関する標準的な問題でした。

【民法】やや難しい

問題27民法総則(団体)76%普通
問題28民法総則(錯誤等)75%普通
問題29民法物権(物権の成立)80%易
問題30民法総則・物権(時効成立に必要な占有)85%易
問題31民法物権(物権的請求権等)70%普通
問題32民法債権(連帯債務)60%普通
問題33民法物権・債権(賃貸借に関する物権・債権関係)57%やや難
問題34民法債権(不法行為)36%難
問題35親族相続(遺言)34%難


民法は、今年も比較的難しい内容になっています。9問中5問の得点が目標ラインです。
民法総則分野ですが、問題27の団体に関する問題は応用テーマですが、正答率はよいといえます。問題28の錯誤は典型テーマではありますが、具体的事例において錯誤になるかどうかを問う判例問題で、知らない判例も多かったといえるでしょう。たあ、正答率が高いのは、正解肢が、常識的な観点から誤りと判断できたからか、良くできていました。
物権分野ですが、変則的に3問(問題30が総則との融合問題、問題33が債権との総合問題でした)の出題となりました。物権の成立に関する問題29は、肢ウの譲渡担保や肢エの明認方法など、発展知識を問う肢があり、知識的には難しい肢もあるのですが、比較的簡単な肢ア・イの正誤判断さえできれば正解でき、正答率は高くなっています。問題30は総則との融合問題ですが、民法の中では一番易しい問題でした。この問題は得点しなければなりません。問題31は、物権的請求権で難易度は標準的でした。
債権分野ですが、連帯債務についての問題32は標準的な問題でした。これに対して問題33は、賃貸借契約をベースとして、留置権、先取特権の知識や、不当利得に関する判例の知識を問う、非常に難しい問題でした。不法行為の成否に関する判例問題である問題34は、判例自体あまり聞いたことがないものも多く難問です。さらに、相続に関する問題35は、遺言という典型テーマではありますが、遺言の形式という細かい知識について問うもので、これも難問でした。
易しい問題あるいは標準的問題である総則・物権を確実に得点することが重要です。

【商法】

問題36商法総則・商行為(商人・商行為)60%普通
問題37会社法(株式会社の設立)34%難
問題38会社法(発行済株式の総数の増減)69%普通
問題39会社法(取締役等の報酬)64%普通
問題40会社法(株式一般)65%普通


問題37は、知識的に難しくはありませんが、肢1・2のように、正誤判断する部分が多く、確信を持って正誤判断できないため、正答率が低くなっています。問題39は難しかったですが、消去法で正解を導くことが可能でした。学習量が多くなくても、5問中3問程度の得点が可能な問題であるといえます。

《3.法令・多肢選択式》

問題41憲法人権(表現の自由)ア89%、イ88%、ウ62%、エ55%
問題42行政法の一般的な法理論(行政立法)ア42%、イ61%、ウ46%、エ47%
問題43行政不服審査法・行政事件訴訟法(行政救済)ア95%、イ97%、ウ88%、エ58%


多肢選択式は易しいという印象です。問題41・43ともに、最高裁判所裁判官の補足意見からの出題でした。補足意見まで読んでいる受験生はあまりいないと思いますが、文章の内容や空欄の前後の内容から、現場思考で十分対応できる問題でした。問題41の空欄エ「現実の悪意」は難しかったです。問題42は、行政立法の種類と具体例についての問題で易しい問題といえますが、正答率は良くありません。「定義」がしっかり押さえてあれば得点できる問題です。問題41で6点、42で4点、43で8点、合計18点が目標ラインです。

《4.法令・記述式》

記述式ですが、行政法の問題44-やや難、民法の問題45-普通、問題46-易でした。ただ、誰も答えられないような問題ではなく、民法で8割程度、行政法で5割の得点が目標です。
問題44は、平成27年の択一問題で出題された知識ですし、TACの公開模試の多肢選択式でも出題していますので、過去問をしっかり解いている方、TACの直前期の答練をご受講されている方であれば、容易だった問題です。ただし、そうでない場合には、難問の部類だったといえます。
問題45の債権譲渡禁止特約に関する問題は、債権譲渡では基本知識ですが、行政書士試験においては、過去記述式で一度出題されただけという意味では、やや難しいといえます。ただし、TACの予想答練第2回で出題しており、TACの答練を受けた方であれば、比較的容易に解けたと思います。
民法の問題46は不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の要件についての問題でした。非常に易しい問題でした。TACの総合答練第1回の択一問題で出題したところですし、受験生なら皆さん正確な知識を持っているところですので、満点も可能な問題でした。
以上からすれば、民法の問題45、46で30~36点程度、問題44で6~10点程度、合計40点を超える得点も可能な問題でした。


《5.一般知識》

問題47政治(各国の政治指導者)77%普通
問題48社会(日本の公的年金制度)41%難
問題49政治(日本の農業政策)50%難
問題50経済(ビットコイン)38%難
問題51社会(度量衡)67%普通
問題52経済(消費者問題・消費者保護)52%やや難
問題53社会(山崎豊子の著作)72%普通
問題54情報通信(クラウド)69%普通
問題55情報通信(日本の著作権)71%普通
問題56情報通信(情報通信用語)67%普通
問題57個人情報保護(情報公開法制と個人情報保護法制) 77%普通
問題58文章理解(脱文挿入)95%易
問題59文章理解(空欄補充)92%易
問題60文章理解(並べ替え)95%易


一般知識科目ですが、政治経済社会分野は易しい問題はなく、難易度は全体としてはやや難しめです。ただ、基準点を越えるのが難しいかといえば、易しい文章理解の問題を確実に得点できるところですし、政治経済情報等についても、標準的な問題が多いですから、3問以上は正解できるため、基準点のクリアは容易です。
政治経済社会の問題については7問中3問の得点ができればよいでしょう。
情報系の問題については、個人情報保護法は5月の改正があるため、今年も単体での出題はありませんでした。標準的問題となっており2問は得点したいところです。
文章理解の問題は、3問とも易しかったといえます。
文章理解を3問確実に正解し、政経情報分野で標準的な問題(47、51、53~57)をどれだけ拾えるかでした。基準点はクリアできるでしょう。

以上となります。
今回の試験は、法令、一般知識ともに、難しい肢もありますが、正解となる肢が比較的簡単でしたので、私が当初思っていたよりも、合格率、合格者は増えると思われます。
これから、受験される方は、難しい肢に惑わされることなく、基本をマスターすることに集中して、学習をすすめていただければと思います。

次回からは、また、憲法の条文を読んでいきたいと思います。

以上




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