【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
21条③
こんにちは!TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。
ワールドカップが始まりました。日本の初戦は、南アメリカの強豪コロンビアです。19日キックオフ。そして、見事、日本はコロンビア相手に金星を挙げました。おめでとうございます!
日本に限らず、どのチームの選手も、勝利めざして頑張ってほしいです!全力で頑張るから、観る人が感動するドラマが生まれるのだと思います。
4年に1度のサッカーの祭典ですから、この後も、悔いのないように、全力でプレーしてほしいと思います。それを全力で応援しますから!!!
それでは、今回も21条1項。知る権利や、報道の自由と取材の自由についてみていきましょう。
【21条】
1項 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
まずは、「知る権利」について。
表現の自由というのは、ことばのイメージからも、表現をする人、表現をする側が、国家からいろいろと制約を受けずに、表現することができることを意味するといえます。
しかし、現代社会においては、マスメディアが発達し、情報を発信する側と、それを受け取る側が、分離しています。もちろん、ブログやフェイスブック、Twitter、インスタグラムなどのSNSなどの発達によって、一昔前よりは、自分の意見などを外に向かって発信する本来の意味での表現の自由を保障しなければならない場面というのは増えてきてるとはいえますが、やはり基本的には、私たち一般の人たちは、テレビや、新聞、雑誌などを通じて、発信された情報を受け取るのが中心です。
そこで、表現を受け取る私たち一般国民の側の表現の受け手の自由(聞く自由、読む自由、視る自由)を守らなければならないのではないかが意識されることになり、表現の自由を、表現の受け手側から自由である「知る権利」として再構成することで、憲法上の権利として保障されていると解釈しています。
ただし、憲法上保障される知る権利は、知る権利の自由権的側面、つまり、情報を受け取る権利が国家権力によって妨げられることがないことが保障されているとされます。逆に、知る権利の社会的側面、つまり、政府に対して情報公開を要求する権利までは、保障されていないとされています。そのような権利が認められるためには、情報公開法などの具体的な立法が必要となります。
次に、「報道の自由」と「取材の自由」について。
報道機関が報道をすることは、具体的には、報道を目的とする新聞社、出版社、テレビ局が設立される(結社)ところから始まり、その組織が、新聞・雑誌・テレビなどを通じて報道という名の言論を行い、あるいは、出版することです。したがって、報道の自由は、表現の自由の一つです。
ここで、問題となるのは、「報道の自由」が憲法上の権利であるとしても、報道の前提となる「取材の自由」も、憲法上の権利なのかということです。
これについて扱った判例がいくつかありますので、紹介しましょう。
まずは、博多駅テレビフィルム提出命令事件(最大決昭44.11.26)です。
【事案の概要】
集会に参加しようとする学生に対する機動隊員の行き過ぎた制止行為が違法かどうかを争う際に、裁判所が、それを撮影したテレビフィルムの提出を命令した事件です。
この判例で争点は2つあります。
争点① 報道の自由が、憲法21条で保障されいてる権利なのかどうなのか。
争点② 報道のための取材の自由は、憲法21条で保障されているのか。
【判旨】
【争点①について】
報道機関の報道は、民主主義社会において、国民が国政に関与するにつき、重要な判断の資料を提供し、国民の『知る権利』に奉仕するものである。したがって、思想の表明の自由とならんで、
事実の報道の自由は、表現の自由を規定した憲法21条の保障のもとにある
ことはいうまでもない。
【争点②について】
報道のための
取材の自由も、憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する
……。しかし、取材の自由といっても、もとより何らの制約を受けないものではなく、……公正な刑事裁判の実現を保障するために、報道機関の取材活動によって得られたものが、証拠として必要と認められるような場合には、
取材の自由がある程度の制約を蒙る
こととなってもやむを得ないところというべきである。
報道の自由は、憲法上の権利として保障されると明言しています。しかし、取材の自由については、「憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する」としていて、「保障される」とは明言していません。このことから、取材の自由は、憲法上の権利として保障されているとまではいえないと解されています。取材だからといって、何でもかんでも許されるものではありません。必要に応じて、取材が制約される場面があるということです。
次回は、21条の「取材の自由」に関連して、「裁判での証言拒絶権」や、「取材の自由の制約」に関する判例をいくつか見ていきましょう。
お楽しみに。
以上
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