【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
21条④


こんにちは!TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。

「いつまでモリカケ。」
「くだらないモリカケ。」
「もっと重大問題があるだろう。」

そんな言葉をよくききますが、そういうことを言う方は、この問題の本質が分かっていない。断言します。行政書士試験に合格するため、憲法や行政法を勉強している方ならなおさらです。

政治は、何のためにあるか。これは、私たち国民の幸せのためにあります。それ以外の目的などない。政治家のためにあるわけでもなければ、特定の個人のためにあるわけでもない。私たちのためにあるのが政治です。
行政は何のためにあるのか。これは、私たちの幸せを実現するために、国会で定められたルールにしたがって(法治行政の原則のもと)、行政サービスを提供するためにあります。

政治や行政は、国民に対して嘘をついてはいけない。その真実を前提に、私たちは、さまざまなことを考え、次にどうしたら、私たちのとって、より豊かな生活ができるのかを話し合い、次の進むべき道を考えていきます。

そうです。これが民主主義なんです。
民主主義を実現するための前提が、政治家や官僚が、嘘いつわりなく、真実を語り、記録することなんです。

ところが、モリカケ問題では、政治家が嘘をついている可能性が非常に高い(と思われる証拠が出てきています)。また、本来、客観的な事実が記録されるべき公文書が改ざんされています。公文書の改ざんは、民主主義を破壊しますから、これが犯罪とされています。

民主主義国家が、民主主義を破壊されようとしているときに、この懸念を排除し、民主主義の前提となる政治家、官僚の嘘を排除しなくては、そもそも議論が先に進まないということです。
これをないがしろにして、つまり、嘘を前提にしたままで、嘘の疑いが高い中で、私たちが進むべき道を話し合うことはできませんし、この問題を徹底的に明らかにしていくことが、正常な民主主義を回復することになるのです。

それを、「野党はいつまでモリカケ問題にこだわるんだ。」とか、「マスコミはいつまでこの問題を取り上げるんだ。」という主張は、民主主義が破壊されようとしていることをなんとも思ってない立場からの主張だといえるでしょう。

正しい情報なくして正しい民主主義は行われませんし、さらに、公文書を簡単に改ざんしてしまうような国は外国からの信頼も失います。

だからこそ、モリカケ問題を、「いつまで」「くだらない」というのではなく、それこそ「民主主義を破壊しかねない重大問題」として、徹底的に追及すべきなんです。
とはいえ、政府から、正しい情報が出てこないのだから、野党もマスコミも追及できない。政府与党から、正しい情報と信頼できるものが出てこないからこそ、この問題が長引いているともいえますから、野党、マスコミはいつまでこの問題を引きずっているんだ、という批判も当たらないともいえるわけです。

これからも、モリカケ問題がどうして起こったのか、これからこのようなことが起こらないようにするにはどうしたらよいか、そういうことまでをしっかり議論していかなければならない重大問題ということです。

それでは、21条の「取材の自由」に関連して、「裁判での証言拒絶権」や、「取材の自由の制約」に関する判例をいくつか見ていきましょう。

【21条】

1項 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。


前回みたように、報道の自由は、憲法上の権利として保障されますが、取材の自由については、「憲法21条の精神に照らし、十分尊重に値する」とされ、取材の自由は、憲法嬢の権利として保障されているとまではいえないと解されています。必要に応じて、取材が制約されます。

具体的な判例を見てみましょう。

まずは、取材の自由に関して、「取材源を秘匿する」ことが認められるかという問題です。

【事案の概要】
国家公務員法違反事件の捜査中に証人として召喚された新聞記者Yが、証人としての宣誓と証言を拒絶したため、証言拒絶罪(刑事訴訟法161条)で起訴された事件。


【争点】
刑事事件において、新聞記者が取材源を秘匿するための証言拒絶権は、憲法21条で保障されるか。
【判旨】
憲法21条は新聞記者に特種の保障を与えたものではない。……未だいいたいことの内容も定まらず、これからその内容を作り出すための取材に関しその取材源について、公の福祉のため最も重大な司法権の公正な発動につき必要欠くべからざる証言の義務をも犠牲にして、 証言拒絶の権利までも保障したものとは到底解することができない。


証言拒絶をする権利は保障されていないとされ、刑事事件においては、取材源を秘匿することよりも、公正な裁判を実現することを重視しているといえます。

次に、民事事件においての判例です。

【事案の概要】
民事訴訟手続において、証人尋問された記者が、取材源の特定に関する証言を拒絶したことが、正当の理由として認められるかが争われた事件。


【争点】
民事訴訟手続で記者が取材源を秘匿するための証言拒絶権は、認められるか。
【判旨】
当該報道が公共の利益に関するものであって、その取材の手段、方法が一般の刑罰法令に触れるとか、取材源となった者が取材源の秘密の開示を承諾しているなどの事情がなく、しかも、当該民事事件が社会的意義や影響のある重大な民事事件であるため、当該取材源の秘密の社会的価値を考慮してもなお公正な裁判を実現すべき必要性が高く、そのために当該証言を得ることが必要不可欠であるといった事情が認められない場合には、当該取材源の秘密は保護に値すると解すべきであり、証人は、原則として、当該取材源に係る証言を拒絶することができると解するのが相当である。


民事訴訟においては、取材源の秘密が保護に値するような特別な事情がなければ、原則として、証言を拒絶することはできるとされています。

刑事事件では、国家権力が刑罰を科する場面ですから、そこに間違いがあってはいけません。そこで、客観的な事実を確定させるために、証言を拒絶することはできないということになります。これに対して民事事件では、個人対個人が、対等な立場で財産に関して争うものですから、訴訟当事者が、各自、自分の主張を認めるための証拠を集める責任がありますので、証言を拒絶させない必要性は高くないということになります。

それから、もう一つ「取材の方法」についての判例です。

【事案の概要】
記者Yは、1971年に調印された沖縄返還交渉に関する情報を入手するため、外務省の女性事務官Aと肉体関係を持ち、Aから国家機密にあたる情報を入手しました。そのため、Yが国家公務員法の秘密漏示そそのかし罪で起訴された事件。


【争点】
正当な取材活動として認められるのはどの範囲か。
【判旨】
取材対象者の人格の尊厳を著しく蹂躙した本件取材行為は、その手段・方法が法秩序全体の精神に照らし社会観念上、到底是認できない不相当なものであるから、正当な取材活動の範囲を逸脱している。


肉体関係を結んで情報を聞き出すということは、いくら取材の自由が尊重に値するといっても、方法として、人権を蹂躙するもので、許されるものではない、という判例です。

次回は、21条の2項について、みていきましょう。

お楽しみに。

以上




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