【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
21条⑥


こんにちは!TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。

先日、地下鉄サリン事件などで死刑が確定していた死刑囚数人の死刑が執行されました。私は、冤罪の危険、量刑の難しさ、死刑廃止の国際的潮流など様々な観点から、死刑制度には反対ですが、日本は死刑制度を存置している以上、刑事手続きにのっとって死刑が執行されたこと自体を、批判する気はありません。

ただ、気になったことがあります。死刑執行されたという事実が、政府から発表され、大々的に報道されたことです。

本来、重大事件の個別の社会的意義というのは、裁判の判決によって完結します。ある事件がどのような背景の下で起こされ、それを法的に評価したうえで、どのような判決が下されたか。そこまでです。
死刑判決を受けた受刑者が、いつ死刑執行されたかということについての社会的意義はありません。死刑制度を存置するかどうか、死刑制度の存在意義について考えるきっかけとして、死刑が執行されたことが報道されることはありますが、その場合には、死刑が執行されたこと自体が問題とされるだけで、どのような事件を起こした、誰の死刑が執行されたかということが大々的に報道されることはありません。なぜなら、そのようなことが報道されたとしても、私たちにとっては何の意味もないからです。
もし死刑執行された事実自体が、私たちにとって、何か意味があるとするならば、ワイドショー的な興味の対象として見世物にすることぐらいです。それを見せしめとすることです。
しかしです。重大事件を起こした死刑囚だとしても、人の死を興味の対象として情報を流すこと、報道をすることにどれほどの意味があるのでしょうか。私にはわかりません。
死刑を見せしめとすることは、かつてイスラム国などで行われており、その報道がされました。その時に私たちは思ったはずです。死刑自体を見せしめとするなんてひどいことをするなと。いうなれば、今回の死刑執行報道には、それと同じような意味があるわけです。
それでは、なぜ、そのような情報を流す必要があったのか。大々的に報道されたのか。政府の意図はどこにあるのか。それを考えはじめると、私は、得体の知れない怖さを感じずにはいられないわけです。

それでは、今回は、21条2項の前段「通信の秘密」についてみてみましょう。

【21条】

2項後段 通信の秘密は、これを侵してはならない。


通信には、はがきや封書などの信書や、電信、電話などの通信手段も広く含みます。これらの通信は、表現の自由のように、不特定多数の者に対する言論ではなく、個人間での意思の伝達についても、国家からの制約を受けないという意味合いがあります。そうすることで、私たちの個人間のコミュニケーションを保護します。言いかえれば、私たちの私生活・プライバシーが国家権力によって侵されず、個人間でも私たちが言いたいことが自由に言えることになります。

通信の秘密には2つの側面があるといわれています。
一つは、通信の内容を国家権力が知ろうとしたりすることはできないということになります。これを積極的な知得行為の禁止と呼んだりします。もう一つは、通信にかかわる事業者が、業務上知りえることとなった内容を漏洩してはならないという意味合いもあります。これを漏洩行為の禁止と呼んだりします。

ただし、通信の秘密についても、いくつかの例外があります。これを通信の秘密の限界という問題です。
大きなものとしては、刑事訴訟法上の郵便物の押収です。被告人から、もしくは、被告人に対して発せられた郵便物や、被告事件に関係があると認めるに足りる状況のものについては、差し押さえてもよいというものです。これは必要以上に、国家権力による通信の押収を認めるものとして、違憲の疑いが強いとされています。
また、電信・電話に関しては、通信傍受法による通話等を傍受できるというものがあります。


【通信傍受法】

(傍受令状)
3条1項 検察官又は司法警察員は、次の各号のいずれかに該当する場合において、当該各号に規定する犯罪(第二号及び第三号にあっては、その一連の犯罪をいう。)の実行、準備又は証拠隠滅等の事後措置に関する謀議、指示その他の相互連絡その他当該犯罪の実行に関連する事項を内容とする通信(以下この項において「犯罪関連通信」という。)が行われると疑うに足りる状況があり、かつ、他の方法によっては、犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難であるときは、裁判官の発する傍受令状により、電話番号その他発信元又は発信先を識別するための番号又は符号(以下「電話番号等」という。)によって特定された通信の手段(以下「通信手段」という。)であって、被疑者が通信事業者等との間の契約に基づいて使用しているもの(犯人による犯罪関連通信に用いられる疑いがないと認められるものを除く。)又は犯人による犯罪関連通信に用いられると疑うに足りるものについて、これを用いて行われた犯罪関連通信の傍受をすることができる。


これが、憲法上許されるのかどうかについて、最高裁判所は、厳格な要件を示して、捜査の手段として憲法上全く許されないものではないと結論付けています(最決平11.12.16)。


【判旨】
電話傍受は、通信の秘密を侵害し、ひいては、個人のプライバシーを侵害する強制処分であるが、一定の要件の下では、捜査の手段として憲法上全く許されないものではないと解すべきであって、このことは所論も認めるところである。そして、【要旨】重大な犯罪に係る被疑事件について、被疑者が罪を犯したと疑うに足りる十分な理由があり、かつ、当該電話により被疑事実に関連する通話の行われる蓋然性があるとともに、電話傍受以外の方法によってはその罪に関する重要かつ必要な証拠を得ることが著しく困難であるなどの事情が存する場合において、電話傍受により侵害される利益の内容、程度を慎重に考慮した上で、なお電話傍受を行うことが犯罪の捜査上真にやむを得ないと認められるときには、法律の定める手続に従ってこれを行うことも憲法上許されると解するのが相当である。


としています。

次回は、職業選択の自由に関する22条について、みていきましょう。

お楽しみに。
以上




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