【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
23条


 こんにちは!TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。

 自民党の総裁選挙が近づき、このところの報道各社も、連日総裁選についての報道がなされています。この自民党の総裁選にからんで、自民党総裁選管理委員会・野田毅委員長の名前で、8月28日にこのような文書が新聞・通信各社に送信されたようです。

 その内容は

1.新聞各社の取材等は、規制いたしません。
2.インタビュー、取材記事、写真の掲載等にあたっては、内容、掲載面積などについて、必ず各候補者を平等・公平に扱って下さるようにお願いいたします。
3.候補者によりインタビュー等の掲載日が異なる場合は、掲載ごとに総裁選挙の候補者の氏名を記したうえ掲載し、この場合も上記2の原則を守っていただきますよう、お願いいたします。

 というものです。

 これを読んで、皆さんはどう思われますか?
 確かに、各候補者を平等・公平に扱うべきだよな。もっともだよな。って思われますか?

 確かに、選挙というものは、平等・公平に行われるべきものです。しかし、法的にそれが求められるのは、公職選挙法における国会議員さんや地方議会の議員さんなど、公務員を選定する場合になります。こんかいの総裁選は、自民党という一政党のトップを決める選挙です。したがって、公務員を選定する選挙とは異なり、新聞各社(自民党に近い新聞もあれば、批判的になる新聞もあります。)が自由に報道すべきものではないでしょうか。また、投票については、自民党の国会議員と党員に限られますから、新聞各社を縛ってまで、このような報道を要求することは的外れといえるでしょう。また、新聞を読む私たちについても、安倍氏を支持する人もいれば、石破氏を支持する人もいるわけです。いろんな各社の自由な報道がなされるところで、私たちが私たちの責任で、それを取捨選択すればいいだけの話しです。それが報道される前に圧殺されてしまうことが私たちの思考を奪ってしまうことになります。政治の選択肢を奪ってしまうことになります。それを、自民党の方から、新聞・通信各社に対して、紙面の面積についてまで、このような「要望」をしてくるというのは、自民党が報道を管理・操作しようとする気持ちの表れともいえるでしょう。

 また、候補者について同じ面積を占めるような報道をするようにという要望があります。これに従おうとすれば、一方の候補者が精力的に活動した日があって、一方の候補者が休日で活動していなかった日があったとしたら、精力的に活動していた候補者の報道はしてはいけないということにもなりかねません。また、一方当事者が討論会を求めて、他方の候補者に働きかけを行った場合、他方の候補者が討論に自信がなく、討論会をやっても自分のボロが出てしまうと考え、逃げつづけた場合でも、討論会が開かれない以上、それついての報道ができないことになります。
 一見、もっともらしいことをの要望していますが、よくよく読んでみると、非常に危うい文書であることが分かります。

 はっきり言いましょう。安倍氏に対する取材がなされず、討論会にも参加しない、ということが続けば、石破氏がどれだけ精力的に活動していたとしても、公開討論をしたいと思っていたとしても、石破氏のそのような活動・行動の報道はできない、ということになってしまうわけです。この公平・公正を求める文書が、結果として不公平・不公正な報道を生み出し、報道の自由を奪うものであるか、それがひいては、私たちの知る権利を奪でしまう危険極まりないものであるか、想像に難くありません。

 一つの党の意向に左右されることなく、私たちの選ぶべき道、進むべき道を見誤らないようにするために、さまざまな立場から、さまざまな意見、考え方が自由に報道されれることを心から願っています。



 今回は、学問の自由に関する23条を読んでいきましょう。
 まずは、条文です。

【23条】

学問の自由は、これを保障する。


 学問の自由は、具体的には、①学問研究の自由、②研究結果発表の自由、③教授の自由が含まれます。この学問をすることについて、私たちは国家から抑圧されることなく、自由に行うことができることになります。

 そもそも、学問・研究というのは、従来からある価値観に疑問を呈したり、現在の政治の在り方などに批判をしたりしながら、どうあるべきかを探求する営みです。そこでは、時の政権批判をしたりするので、国家権力からの干渉・抑圧を受けやすくなります。

 歴史的に見ても、大日本帝国憲法の下では、国家権力によって、政権党に都合の悪い思想や研究が抑圧・排除され、なかには、そのような研究者や表現者が力によって投獄・拷問されることも行われていました。
 それらの事実を踏まえて、深い反省の下に、日本国憲法では、学問の自由を憲法上保障するとともに、学問の自由を侵害する国家行為は違憲無効とすることにしたわけです。

 さらに、学問が行われる典型的な場所は「大学」です。大学内部のことに対して、例えば、人事権に口出ししたり、補助金を付与するかどうかを国家権力の恣意で決定できるとしたり、学問に国家権力が干渉できるということになってしまうと、国家権力に媚びるような、ひよった学問しか行われなくなってしまい、学問の自由が大きく脅かされることになってしまいます。そこで、大学のことは大学自身が決定するという制度が保障されていると解釈されています。これが「大学の自治」という制度です。

 このように、学問の自由は、国家権力による侵害から憲法によって強く守られています。

 次回は、両性の本質的平等について規定した24条を読んでいきます。

 お楽しみに。

 以上




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