【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
25条②


 こんにちは!TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。

 10月15日、安倍首相が、2019年10月に消費税率を10%に引き上げることを表明しました。
 消費税導入・増税に関する時系列は以下の通りです。
 1989年 4月 3パーセントで導入。
 1997年 4月 5パーセントに税率引き上げ
 2014年 4月 8パーセントに税率引き上げ
 2015年10月 10パーセントに税率引き上げ延期
 2017年 4月 10パーセントに税率引き上げ延期
 2019年10月 10パーセント税率導入予定。

 消費税率10パーセントへの引き上げが2度にわたって延期されているのは、簡単に言えば、日本の景気がそこまで回復していないからともいえるでしょう。消費税は、消費に対して一律に科せられる税金ですから、相対的に所得が低ければ低いほど、消費税の負担は重くなりますから、生活に与えるダメージは大きくなります。

 生活必需品について軽減税率があったり、キャッシュレス化によるポイント還元があるといってみたり、新築住宅、自動車の購入などについて税制の優遇を設けるということがあったりもします。しかし、日本国民の貧困化、低所得化が問題視されている昨今、さらに消費税の税率を上げることにどれだけのメリットがあるのか。
 消費税率の引き上げで、消費が落ち込み、生産が抑制され、収入が減り、さらに消費が抑制されていく、というような負のスパイラルが起こり、また日本経済が減退、停滞していくのではないかというのは、経済の素人の私でも創造に難くありません。

 教育への資金援助が少ないという問題にしろ、今回の消費税率引き上げにしろ、税金の使い方をもう少し考えれば、どうにでもなる問題なのではないかと思います。

 特に、防衛費。戦闘機、戦車、ミサイル。そんな買い物、そんなにいらないんじゃないのかな。有事があるあるといいながら、朝鮮半島情勢は融和の方向に向かっています。有るかどうかもわからない有事があるあると言いすぎて、6か国協議からも外されようとしています。前にロシアが、韓国、北朝鮮、米、ロ、中、の5か国の協議が必要だという認識を示し、日本はのけ者にされました。敵意むき出しの日本を入れたら、まとまる話もまとまらないということなんでしょうか。それなのに、何十億、何百億という武器・兵器をせっせと買いあさり、軍事費だけは一向に減る気配なし。世界平和の旗振り役でありたいという憲法前文に書かれていることを実践するためにも、軍事費減らして、積極的に敵意なし、害意なし、ということを示さなきゃ。
そうすれば、消費税率をあげなくたって、日本の経済は回復し、私たちのしあわせは、次々に実現していくのではないかって思うわけです。

 それでは、今回も、生存権に関する25条を読んでいきましょう。
 条文確認です。

【25条】

1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。


 前回は、社会権は、20世紀になって、社会的・経済的弱者を守るために保障」されるに至った人権です。国に対して一定の行為を要求する権利ということを述べました。

 この権利に関連して、重要な判例を見ておきましょう。
 その判例は、朝日訴訟(最大判昭42.5.24)という判例です。朝日訴訟とは、重度の肺結核で入院中だった朝日茂さんが、当時の生活保護法に基づく給付を受けられなくなったとこに対して、保護基準があまりに低すぎ、憲法上の「健康で文化的な生活を営む権利=生存権」を侵害しているとして裁判所に訴えた裁判です。人間の生きる権利が問題となり、「人間裁判」とも呼ばれた有名な事件です。

【事案の概要】
生活保護法による医療扶助と生活扶助を受けていた朝日さんが、兄から仕送りを受けることとなったため、社会福祉事務所長は、生活扶助を打ち切り、医療扶助は一部自己負担とする決定をしました。朝日さんは、この決定を不服として、厚生大臣(現厚生労働大臣)Yに不服申立てをしたが却下裁決がされたので、この裁決の取消しを求める訴えを提起した事件。



【争点1】
憲法25条(生存権)は、具体的権利といえるか。
【判旨1】
「憲法25条1項は、……すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり、直接個々の国民に対して具体的権利を賦与したものではない。……具体的権利としては、憲法の規定の趣旨を実現するために制定された生活保護法によって、はじめて与えられているというべきである。」
【争点2】
行政の裁量に委ねられている生活保護基準の設定の判断は、違法の問題を生じるか。
【判旨2】
健康で文化的な最低限度の生活なるものは、抽象的な相対的概念であり、その具体的内容は、文化の発達、国民経済の進展に伴って向上するのはもとより、多数の不確定的要素を総合考量してはじめて決定できるものである。したがって、何が健康で文化的な最低限度の生活であるかの認定判断は、いちおう、厚生大臣の合目的的な裁量に委されており、その判断は、……直ちに違法の問題を生ずることはない
【争点3】
生活保護基準の設定は、司法審査の対象となるか。
【判旨3】
「憲法および生活保護法の趣旨・目的に反し、法律によって与えられた裁量権の限界をこえた場合または裁量権を濫用した場合には、違法な行為として司法審査の対象となる。すると、生活扶助を打ち切ったことは裁量の範囲内であり、違憲・違法ではない。」



 生存権の内容についての判断枠組み

1.生存権の具体的権利性
  ⇒ なし
2.生活保護基準の設定の性質
  ⇒ 行政の裁量
3.生活保護基準の設定は、司法審査の対象となるか。
  ⇒ 裁量権を逸脱・濫用していなければ対象にならない。


 そのように判断したことになります。

 次回は、教育を受ける権利に関する26条を読んでいきます。

 お楽しみに。

 以上




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