【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
31条


 こんにちは!TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。

 先日12月14日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)が、名護市辺野古へ移設が計画されている問題で、辺野古の基地予定地に土砂が投入されました。

 この基地の移設問題は、普天間基地が、住宅密集地にあることから「世界一危険な基地」ともいわれています。そこで、この基地を移転することが計画されいてるわけです。

 私たちは沖縄の海といえば、サンゴ礁があり、色鮮やかな熱帯魚が泳ぐ美しい海を思い浮かべます。その美しい海に真っ赤な埋め立て用の土砂が投入される様には、なにかしら胸が押さえつけられる思いがこみ上げます。

 もちろん、その危険性を考えれば、基地をどうにかしなければならないということは早急に考える必要があります。
 しかし、必ずしも辺野古でなければならないという必然性はありません。まずは、そもそも基地をなくしてもらうことから始まり、米軍基地の70パーセントが沖縄に集中していることから考えても、県外への移設場所も選択肢としてあるでしょう。沖縄県のホームページにも以下のような資料が閲覧できます。

 さらに、住民からの反対の声も多く聞かれます。辺野古への移設反対を訴える玉城さんが沖縄県知事選で次点に8万票差で勝利したこともそうですし、朝日新聞がおこなった全国世論調査(電話)でも、土砂投入に60%が反対で、賛成は26%となっています。また、政府と沖縄県の対話についても、76%もの人が十分ではないと答えています。
 そして、土砂投入に対して玉城沖縄県知事がコメントを発表しています。

知事コメント
(土砂投入について)
 本日、普天間飛行場代替施設建設事業に係る名護市辺野古の工事現場に職員を派遣したところ、土砂投入作業が行われたことを確認しました。
 沖縄県が去る8月31日に行った埋立承認取消しに対して、沖縄防衛局が、行政不服審査制度を悪用し、自らを「固有の資格」ではなく私人と同様の立場であるとして、審査請求及び執行停止申立てを行ったことは違法であり、これを受けて国土交通大臣が行った執行停止決定もまた、違法で無効であります。
 県は、このような違法な執行停止決定の取消しを求めて、去る11月29日に国地方係争処理委員会に審査を申し出ておりますが、同委員会での審査は済んでおらず、現時点において何ら、本件執行停止決定に係る法的な判断は示されておりません。
 また、県は、去る12月12日に、沖縄防衛局に対して行政指導文書を発出し、違法無効な本件執行停止決定を根拠として埋立工事を行うことは許されないこと等から、工事を進めることは断固として容認できず、ましてや土砂を投入することは絶対に許されないとして、直ちに工事を中止するよう強く求めたところであります。
 私は、昨日、菅官房長官及び岩屋防衛大臣と面談し、行政指導文書の内容を説明するとともに、違法な土砂投入を行うことは決して容認できないことを伝え、改めて土砂投入の中止を強く要求しました。
 それにもかかわらず、国が、このような県の要求を一顧だにすることなく土砂投入を強行したことに対し、激しい憤りを禁じ得ません。
 国は、一刻も早く工事を進めて既成事実を積み重ね、県民をあきらめさせようと躍起になっていますが、このような行為は、逆に沖縄県民の強い反発を招き、工事を強行すればするほど、県民の怒りはますます燃え上がるということを認識するべきであります。
 数々の違法な行為を行い、法をねじ曲げ、民意をないがしろにし、県の頭越しに工事を進めることは、法治国家そして国民に主権があるとする民主主義国家において決してあってはならないことであります。
 国が、地方の声を無視し、法をねじ曲げてでも国策を強行するやり方は、地方自治を破壊する行為であり、本県のみならず、他の国民にも降りかかってくるものと危惧しております。
 沖縄県民、そして全国民の皆様には、このような国の在り方をしっかりと目に焼き付け、心に留めていただき、法治国家そして民主主義国家としてあるまじき行為を繰り返す国に対し、共に声を上げ、共に行動していただきたいと思います。現時点ではまだ埋立工事全体の一部がなされているにすぎず、また、工事の権限のない者によって違法に投入された土砂は、当然に原状回復されなければなりません。
 県としては、国地方係争処理委員会への審査申出など、執行停止の効力を止めることに全力をあげているところであり、今回土砂を投入したとしても、今後、軟弱地盤等への対応が必要であり、辺野古新基地の完成は見通せないものであります。
 普天間飛行場の5年以内運用停止を含む危険性の除去は喫緊の課題であり、県としては、今後13年以上にも及ぶ固定化は認められません。今後も引き続き、同飛行場の一日も早い閉鎖・返還、県外・国外移設及び運用停止を含む危険性の除去を政府に対し、強く求めてまいります。
 私は、多くの県民の負託を受けた知事として、ぶれることなく、辺野古新基地建設に反対するという民意に添い、その思いに応えたいと思いますので、県民・国民の皆様からも、一層の御支援、御協力をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
平成30年12月14日
沖縄県知事 玉城 デニー



 少なくとも、住民の反対の声が強い中で、また、辺野古が唯一の方法ではないと思われる中で、埋め立てを強行することには、私も反対です。

 それに対して、直接アメリカのホワイトハウスに訴えかけようという働きがありました。
 アメリカへの電子署名による方法です。この方法は、前大統領のオバマ大統領が作った制度で「WE the PEOPLE」と呼ばれるものです。署名を呼び掛けてから30日以内に10万人の署名が集まった場合には、その請願の内容について、ホワイトハウスは対応を検討しなければならないというものです。私もそれに署名しました。そして、18日に署名が10万人をこえました。これにたいして、アメリカがどのように対応を示すのか注目です。

 基地問題は、難しい問題ですが、ただ、沖縄だけの問題ではなく、日本全体でみんなが考えていかなければならない問題だと思います。

 それでは、今回は、適正手続に関する31条を読んでいきましょう。

【31条】

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。


 日本国憲法においては、私たちが至上価値ですから、国家の都合で私たちが抑圧されことはなく、自分のやりたいことを自由にできるというのが大原則です。人権の永久不可侵性といわれるものです。
 しかし、私たちは自由であるといっても、やりたいことを100%自由にできるとすると、人に迷惑がかかることになります。例えば、「あの人の持っている時計が欲しい!」とおもって、その人の持っている時計を取ってしまえば、盗られた人は大切な時計を失うことになってしまいます。「あいつが憎い!」といって、相手を殴ったりすれば、殴られた方はけがをしてしまうかもしれませんし、治療費だってかかるかもしれません。
 私たちは自由なんだ!といっても、みんなが共同生活しているこの社会で、私たちが安心して暮らしていくことができるためには、世の中の治安が維持されていなければなりません。そのためには、人に迷惑をかける行為は取り締まっていかなければなりません。

 そうすると、治安維持のための取り締まりとして、犯罪というものを規定して、その犯罪を犯した人を逮捕し、裁判にかけ、有罪判決を得て、刑罰に服させることを、どうしても行っていく必要がでてきます。

 ところが、ここで重大な問題があります。
 国家権力が犯罪と取り締まるといっても、国家権力側で、犯罪を規定して、国家権力側で刑罰を科すことができるとすると、国家権力側に都合の悪い人間まで犯罪者に仕立て上げ刑罰を科すことができることになってしまいます。そもそも、国家は、私たちが安心して幸せな生活を送るために存在しているわけです。それであるにもかかわらず、国家の都合で私たちが抑圧されてしまうことは絶対に避けなければなりません。ましては刑罰は、死刑まであるわけですから、これが間違って適用されようものなら、私たちは、国家権力におびえながら生きていかなければならないことになってしまいます。

 そこで、私たちの幸せのために、国家権力に力を与えて治安維持をさせながらも、力を与えられた国家権力が暴走しないようにするためのルールが必要となります。

 そのために、以下のようなルールを作りました。
 それは、国家がどのようなものを犯罪として取り締まりを行うか、また、刑罰を科する場合には、とのような手続きに従わなければならないか、ということについては、必ず、私たちの代表者である国会が作った法律に基づく手続きにのっとって行わなければならないというルールです。
 これを「罪刑法定主義」といいますが、これが、国家の暴走から私たちを守る、犯罪、刑罰についての大原則です。

 この原則があることで、私たちは、「法律に書いてないことは犯罪ではないから、自由にすることができる。」ということになります。つまり、法律を守ってさえいれば、あとは私たちは国家から抑圧されることなく自由に活動することができる、ということになります。その意味で、どのようなものが犯罪とされるのか条文を読んで、私たちが明確に認識できるものでなければならず、曖昧な文言で犯罪を規定するのは認められないとされています。また、法律を守っていさえすれば、必要以上の刑罰を科せられることもない、ということになります。

 もちろん、法律で定めれば、国家権力がなんでも取り締まることができるというものではなく、犯罪も、刑罰も、その内容については、私たちが納得できる適正なものでなければならない、ということまで保障されていると解釈されています。

 例えば、「人を褒めたら犯罪」とか、「自分の庭でトマトを栽培したら犯罪」というのは、普通に考えれば犯罪にすべきでないですから、そのような犯罪は適正な犯罪とは言えず、憲法に違反して無効となります。また、「詐欺を行ったら死刑」とか、「人の物を盗ったら死刑」とか、「歩きたばこをしたら死刑」というのは、明らかにやったことに対する刑罰としては重すぎて、適正な刑罰ではありませんから、やはり憲法に違反して無効となります。

 これらの法定手続の保障、適正手続の保障によって、私たちは、安心した生活を送ることができることになります。

 次回は、引き続き、裁判を受ける権利に関する32条を読んでいきます。
 お楽しみに。

 以上




【お知らせ】
TAC行政書士講座では、各校舎でガイダンスや講義を行っています。
また開講日は予約不要・無料で実際の講義(基本講義)を受ける事ができます。
ご興味がありましたら、ぜひお気軽にTAC各校舎やカスタマーセンターまでお問い合わせください。

TAC行政書士講座のホームページはこちら