【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
年始のご挨拶~33条


 みなさんこんにちは。
 TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。

 年が明けて、昨日15日に、私が担当させていただいている新宿校のプレミアム本科生Plus、プレミアム本科生のクラスの講義が再開しました。年末年始、勉強がはかどった方もいらっしゃれば、なかなかうまく勉強できなかった方のいらっしゃいます。ただ、受験勉強が正念場を迎えるのは、行政書士試験の二大科目、民法・行政法が始まるこのあとです。いままでは、法律科目の勉強のコツをつかむ時期。ここからは、それを生かして民法・行政法の勉強をより効率的に進めていきましょう。

 さて、話は変わりますが、前日11日に、厚生労働省が、「毎月勤労統計」という統計資料の作成を不適切な方法によって行っており、その内容が誤っていたことを公表しました。この統計資料は、雇用要件や労災保険の給付水準を決定することに使用されます。

≪毎月勤労統計調査とは≫

 毎月勤労統計調査全国調査は、日本標準産業分類に基づく16大産業に属する常用労働者5人以上の事業所を対象に、賃金、労働時間及び雇用の変動を毎月把握する調査です。調査対象事業所は、常用労働者5人以上の約190万事業所(経済センサス-基礎調査)から抽出した約33,000事業所で、名目賃金(現金給与総額)や実質賃金、所定内及び所定外労働時間などがわかります。
 調査の結果は、景気動向を判断するための指標の一つとなっているほか、厚生労働政策や経済政策の基礎資料、企業の労働条件決定の際の参考資料として幅広く活用されています。

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/)

 この資料を作成するにあたっては、従業員449人未満の事業所は抽出して、従業員500人以上の事業所に関してはすべて調査をすることになっていました。しかし、2004年からの東京都分の調査に関しては、従業員500以上の規模の約1400ある事業所の中から、約500事業所を抽出して調査するのみで、全事業所についての調査はしていなかった。このような調査をすることで、本来あるべき給付水準が低くなってしまい、これに基づく給付額についても、本来より低い給付がなされていました。
 12~17年の「きまって支給する給与額」の公表値は、本来より平均0.6%低く、過少給付の総額は約567億5千万円、過小給付の対象者は延べ約2千万人にものぼることが公表されました。
 厚労省は対象者に不足分を追加給付するとされました。
 さらに、昨年6月、東京都分についての不適切な抽出調査の手法を、神奈川、愛知、大阪においても行うという通知を、厚生労働省の「政策統括官付参事官」(課長級)の名で出していたということです。つまり、厚生労働省が組織的に、このような不適切な抽出調査を行い、過小給付をおこなっていたのではないかとう疑問も上がってきています。

 最近、このような官公庁の不正のニュースが後を絶ちません。行政や公務員は、私たちに行政サービスを提供してくれます。私たちが豊かな生活を送っていくためには欠くことのできない存在といえます。行政が行政サービスを提供するなかで、行政が不正がなく、私たちの税金が公正に正しく、無駄なく使われていることが前提ですし、そのようにするために、さまざなまデータが収拾され、それに基づいて公正な判断のもとに行政が運営されているという信頼があるからです。ところが、このように行政が公正・適正に運営されていることを信頼するための資料が不正に作られ、改ざんされてしまうと、私たち自身が、いま行政がおこなっていることが公正なのか適正なのかを判断すること自体困難になってしまいます。このような公務員が不公正なことを行っているとするならば、それをただすのが政治家の役割だとも言えます。それにもかかわらず、政治家も一体となって、資料の操作や改ざんが行われているとすれば、それを正すことすらできなくなります。結果、私たちの豊かな生活が失われ、さらに、生活が圧迫されていくことにもなりかねません。
 これからは、より一層の公務員や政治家の職業倫理の向上と、公正・適正な行政運営を望みます。



 それでは、今回は、逮捕の要件を定める33条を読んでいきましょう。まずは条文確認から。

【33条】

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。


 私たちの自由を奪うものとして一番大きいのが国家の刑罰権の行使です。刑罰には、生命刑(死刑)、身体刑(懲役・禁固・拘留)、財産刑(罰金・科料)などがあり、さまざまな形で、私たちの自由を奪うことになります。この刑罰権の行使が正しくなされず、国家にとって都合の悪い人間を排除する手段として用いられるとすると、罪もないのに私たちの生命・身体・財産の自由が奪われることになってしまいます。相手は国家権力ですから、不当な刑罰権の行使に抗おうとしても、一個人が国家権力に抵抗することは巨大な象に、アリ一匹で立ち向かうようなもの。とても、それをはねつけることなどできません。
 そこで、憲法では、私たちが不当な刑罰権の行使がなされないように、その前提となる捜査段階で私たちの人権が奪われないように、私たちの自由を守るための規定が設けられています。

 そして、この33条ですが、本条では、「逮捕の要件」が定められています。国家権力による不当な逮捕が行われないように、憲法でその要件を定めています。

 逮捕をするには、逮捕令状という令状がなければなりません。そしてその令状は、「司法官憲」つまり、裁判官が発することになります。公正中立な国家権力である裁判官に、いまから捜査機関が行おうとしている逮捕が不当でないかどうかをチェックさせることになります。捜査機関は逮捕令状がなければ、逮捕できません。この令状を要求することで、捜査機関の暴走を防ぎ、私たちが不当な逮捕による恐怖にさらされることがない社会を実現しようとするわけです。

 逮捕の要件については法律や規則で細かく定められています。あくまでも、捜査機関の恣意にながれないようにするために、法律でがんじがらめにしておこうというわけです。それだけ、暴走が怖いということでもあります。

刑事訴訟法199条1項本文〔逮捕の要件〕

検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。


 まずは「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」が必要になります。

刑事訴訟法199条2項但し書き〔逮捕の要件〕

裁判官は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。以下本条において同じ。)の請求により、前項の逮捕状を発する。但し、明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、この限りでない。


 さらに、逮捕の必要性がなければなりません。具体的には、刑事訴訟規則が例を挙げています。
刑事訴訟規則143条の3
〔明らかに逮捕の必要がない場合〕

逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない等明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。


①被疑者が逃亡するおそれなない
②罪証を隠滅するおそれがない

 このような場合には、逮捕の必要性がないものとして、逮捕状は出さないことになります。確かに、逃げも隠れもしないし、証拠を隠したり滅失させたりする恐れもないのであれば、身柄を拘束しておく必要がない場合もあります。

 以上のように、逮捕の要件をクリアした場合に、裁判官が逮捕令状を発することになります。

 これが通常の逮捕のやり方ということになりますが、これには条文上大きな例外があります。それが

「現行犯として逮捕される場合」

です。
つまり現行犯逮捕ですね。
逮捕で一番怖いのは、犯罪を犯していないにも関わらず逮捕される誤認逮捕です。そうならないようにするための令状ですが、現行犯逮捕の場合には、誤認逮捕される恐れは極めて低くなります。現に目の前で犯罪が行われているわけですから、その逮捕に令状を要求しなくても、誤認逮捕によって私たちの人権が必要以上に侵害される可能性は低いわけですから、現行犯逮捕の場合には令状は不要とされいます。


次回は、34条を読んでいきます。お楽しみに。

 以上




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