【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
37条


 みなさんこんにちは。
 TAC行政書士講座・講師の小池昌三です。

 2月12日、競泳女子の池江璃花子選手が自身の白血病を公表されました。ご本人は、オリンピックに出場されたいとは思いますが、まずは、完全に回復なさるまで、ご自身の病気の療養に専念していただきたいです。

 白血病にも様々な種類があるらしく、どのような白血病なのかは公表されていません。ただ、若い世代で白血病を発症した方のうち、7割以上が治っているという情報もあります。池江さんや、その他にも白血病の方々が、一日も早く完全寛解されますように、心から願っています。

 白血病に関しては、私自身、骨髄バンクにドナー登録しています。もし、それで誰かの命が助かるとしたら。また、私や家族に同じことが起きたら。そんなことを考えていたら、いてもたってもいられず、献血に行った際にドナー登録をしました。
 もちろん、ドナーも体の負担がかかるわけですから、それを人にお勧めするということではありませんが、骨髄バンクがどういったものか、どのようなサポートがあるか、日本骨髄バンクのホームページに情報がありますので、ぜひ一度お読みいただければ幸いです。
 日本骨髄バンクホームページ( https://www.jmdp.or.jp/ )

 それでは、今回は、刑事被告人の権利について定めた37条を読んでいきましょう。まずは1項からです。


【37条1項】

すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。


 刑事事件については、刑事被告人は、「公平」な裁判所の、「迅速」な「公開」裁判を受ける権利があります。

 ここでいう「公平な裁判所」とはどのような裁判所を指すのかについては、最高裁では、以下のように述べています(最大判昭23.5.5)。


【判旨】
「公平なる裁判所の裁判」というのは構成其他において偏頗の惧なき裁判所の裁判という意味である。かかる裁判所の裁判である以上個々の事件において法律の誤解又は事実の誤認等により偶被告人に不利益な裁判がなされてもそれが一々同条に触れる違憲の裁判になるというものではない、されば本件判決裁判所が構成其他において偏頗の惧ある裁判所であつたことが主張(論旨においても此主張はない)立証せられない限り仮令原判決に所論の様な法律の誤解、事実の誤認又は記録調査の不充分(論旨第二点所論)等があつたと仮定しても同条違反の裁判とはいえない」


 つまり、裁判所が訴訟当事者のどちらかに肩入れしてはなりませんから、裁判所を構成するにあたっても、どちらかに肩入れする可能性が生じるようなものは排除して、偏りのない裁判所でなければならないということです。
 このような裁判所であることを担保するための制度として、刑事訴訟法には裁判官等の裁判所職員の除斥、忌避、回避の制度が用意されています。

【刑事訴訟法】裁判所職員の除斥及び忌避

20条 裁判官は、次に掲げる場合には、職務の執行から除斥される。
 1号 裁判官が被害者であるとき。
 2号 裁判官が被告人又は被害者の親族であるとき、又はあつたとき。
 3号 裁判官が被告人又は被害者の法定代理人、後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人又は補助監督人であるとき。
 4号 裁判官が事件について証人又は鑑定人となつたとき。
 5号 裁判官が事件について被告人の代理人、弁護人又は補佐人となつたとき。
 6号 裁判官が事件について検察官又は司法警察員の職務を行つたとき。
 7号 裁判官が事件について第266条第2号の決定、略式命令、前審の裁判、第398条乃至第400条、第412条若しくは第314の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となつた取調べに関与したとき。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。
21条
 1項 裁判官が職務の執行から除斥されるべきとき、又は不公平な裁判をする虞があるときは、検察官又は被告人は、これを忌避することができる。
 2項 弁護人は、被告人のため忌避の申立をすることができる。但し、被告人の明示した意思に反することはできない。
22条 事件について請求又は陳述をした後には、不公平な裁判をする虞があることを理由として裁判官を忌避することはできない。但し、忌避の原因があることを知らなかつたとき、又は忌避の原因がその後に生じたときは、この限りでない。
23条
 1項 合議体の構成員である裁判官が忌避されたときは、その裁判官所属の裁判所が、決定をしなければならない。この場合において、その裁判所が地方裁判所であるときは、合議体で決定をしなければならない。
 2項 地方裁判所の一人の裁判官又は家庭裁判所の裁判官が忌避されたときはその裁判官所属の裁判所が、簡易裁判所の裁判官が忌避されたときは管轄地方裁判所が、合議体で決定をしなければならない。ただし、忌避された裁判官が忌避の申立てを理由があるものとするときは、その決定があつたものとみなす。
 3項 忌避された裁判官は、前二項の決定に関与することができない。
 4項 裁判所が忌避された裁判官の退去により決定をすることができないときは、直近上級の裁判所が、決定をしなければならない。
24条
 1項 訴訟を遅延させる目的のみでされたことの明らかな忌避の申立は、決定でこれを却下しなければならない。この場合には、前条第三項の規定を適用しない。第二十二条の規定に違反し、又は裁判所の規則で定める手続に違反してされた忌避の申立を却下する場合も、同様である。
 2項 前項の場合には、忌避された受命裁判官、地方裁判所の一人の裁判官又は家庭裁判所若しくは簡易裁判所の裁判官は、忌避の申立てを却下する裁判をすることができる。
25条 忌避の申立を却下する決定に対しては、即時抗告をすることができる。
26条
 1項 この章の規定は、第20条第7号の規定を除いて、裁判所書記にこれを準用する。
 2項 決定は、裁判所書記所属の裁判所がこれをしなければならない。但し、第24条第1項の場合には、裁判所書記の附属する受命裁判官が、忌避の申立を却下する裁判をすることができる。


 例えば、20条に掲げられている被害者や、被害者の法定代理人、証人、被告人の代理人、弁護人等になったときには、公平な裁判が行えない可能性があるので、その裁判からは外されることになります。

 また、裁判の「迅速性」に関しても判例があります。長時間にわたって裁判の公判審理が中断された事件について、「迅速な裁判」に反するとして審理を打ち切ったのが以下の判例です(最大判昭47.12.20)。


【判旨】
 裁判所は、憲法三七条一項の保障する迅速な裁判をうける権利は、憲法の保障する基本的な人権の一つであり、右条項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定であると解する。
 もつとも、「迅速な裁判」とは、具体的な事件ごとに諸々の条件との関連において決定されるべき相対的な観念であるから、憲法の右保障条項の趣旨を十分に活かすためには、具体的な補充立法の措置を講じて問題の解決をはかることが望ましいのであるが、かかる立法措置を欠く場合においても、あらゆる点からみて明らかに右保障条項に反すると認められる異常な事態が生じたときに、単に、これに対処すべき補充立法の措置がないことを理由として、救済の途がないとするがごときは、右保障条項の趣旨を全うするゆえんではないのである。
 それであるから、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判の保障条項によつて憲法がまもろうとしている被告人の諸利益が著しく害せられると認められる異常な事態が生ずるに至つた場合には、さらに審理をすすめても真実の発見ははなはだしく困難で、もはや公正な裁判を期待することはできずいたずらに被告人らの個人的および社会的不利益を増大させる結果となるばかりであつて、これ以上実体的審理を進めることは適当でないから、その手続をこの段階において打ち切るという非常の救済手段を用いることが憲法上要請されるものと解すべきである。



 さらに、その裁判は公開されます。この裁判の公開に関しては、別途82条にも規定があります。そこでは、判例はどのような事件であろうとも公開されなければならないとされてます。
 詳しくは82条のところに譲りたいと思いますが、裁判所がつかさどる司法権も国家権力ですから、暴走しないように、裁判を公開にして、国民の目を光らせておくというとになります。

次回も、引き続き37条2項について読んでいきます。お楽しみに。

 以上




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