【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
51条


 あけましておめでとうございます!

 2020年が始まりました。

 今年はオリンピックが開催されます。復興オリンピックなどともいわれ、そこには多額の人の力やお金が投入されています。しかし、東日本大震災、熊本の地震、千葉の台風被害など、当の被災地・被災者の復興はまだまだ完全というにはほど遠いといえます。

 昨年末に、千葉へ家族旅行をしました。そこには、屋根にブルーシートがかけられている家屋がまだまだ多くありました。一日でも早く復興されることを祈っています。

 国外に目を向けると、アメリカとイランの関係が悪化しています。そのために旅客機が誤って撃墜されたり、罪のない人々が亡くなっています。戦争には悲惨な現実しかありません。戦争などこの世からなくなってほしいと願っています。

 2020年。世界に住むすべての人が幸せを感じられる社会が実現されますように。

 それでは、今年も憲法を読んでいきましょう。

 今回は、国会議員の発言・表決の免責特権について定めた51条です。


【51条】

 両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。


 国会議員は、議院で行った演説や、討論、賛成反対の投票行動である表決については、院外で責任を問われることはありません。刑事責任、民事責任の他、公務員等の懲戒責任も院外では問われないことを意味します。つまり、それらの行動については、法的に無責任ということになります。

 例えば、議院で行った発言が、結果的に誰かを名誉を傷つけることになったとしても、名誉毀損罪で処罰されたり、不法行為に基づく損害賠償請求をされたりすることはありません。

 なぜ、このように、議院で行ったこれらの行為については無責任なのかということですが、議会において様々な立法をする場合、ざっくばらんに議論を重ねていくことが必要です。ルール(法律)というのは、いうなれば「規制」です。私たちの自由が少なからず制約をうけることになります。したがって、そのルールが、私たちが社会生活を営む上で必要不可欠なもの、必要最低限のものでなければなりません。必要以上に強力な規制を賭けることは許されません。

 そこで、立法作業、つまり、ルールを作る場合には、そのルールが必要とされる背景、立法趣旨から始まって、ルールを作った場合に私たちの社会生活に与える影響、そのルールを運用するための労力、経費、など、いろんな意見を出し合って、議論に議論を重ねる必要があります。

 ところが、自分が言ったことが犯罪になったり、損害賠償の対象になったりする可能性があるとすると、思ったことを口に出さなくなる可能性があります。自分の言ったことでそのようなリスクが生じるなら、言わない方がいい、と考えてしまうからです。そうならないようにし、いろんな意見を自由に出すことができるように、このような議院での演説、討論、表決の無責任が規定されているわけです。

 これらのことから、「議院で行った」の解釈は、やや広く解されていて、物理的に国会議事堂の中で行われた発言にとどまらず、議院の活動として議員が職務上行った発言も含まれるとされています。たとえば、立法のために行う地方公聴会などでの発言も含まれるということです。

 とはいえ、実際上は、議院での議論は公開されていますから、それを多くの人が聴き、見ることになります。したがって、必要のない議論で、特定の人を取り返しのつかないぐらい傷つけてしまうことも考えられます。この点については何らかの対処をする必要もあるのではないか、ということも考えていかなければならない課題といえるでしょう。

 ここで、国会議員の免責特権に関する判例があります。少し長いですが、読んでみてください。

【事案の概要】
 国会議員として行った発言により、病院長の名誉が毀損され、同人が自殺に追い込まれたとして、その妻が国に対しては国家賠償請求を求めた事件です。


【判旨】
 質疑等は、多数決原理による統一的な国家意思の形成に密接に関連し、これに影響を及ぼすべきものであり、国民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益を反映させるべく、あらゆる面から質疑等を尽くすことも国会議員の職務ないし使命に属するものであるから、質疑等においてどのような問題を取り上げ、どのような形でこれを行うかは、国会議員の政治的判断を含む広範な裁量にゆだねられている事柄とみるべきであって、たとえ質疑等によって結果的に個別の国民の権利等が侵害されることになったとしても、直ちに当該国会議員がその職務上の法的義務に違背したとはいえないと解すべきである。憲法五一条は、「両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」と規定し、国会議員の発言、表決につきその法的責任を免除しているが、このことも、一面では国会議員の職務行為についての広い裁量の必要性を裏付けているということができる。もっとも、国会議員に右のような広範な裁量が認められるのは、その職権の行使を十全ならしめるという要請に基づくものであるから、職務とは無関係に個別の国民の権利を侵害することを目的とするような行為が許されないことはもちろんであり、また、あえて虚偽の事実を摘示して個別の国民の名誉を毀損するような行為は、国会議員の裁量に属する正当な職務行為とはいえないというべきである。

 以上によれば、国会議員が国会で行った質疑等において、個別の国民の名誉や信用を低下させる発言があったとしても、これによって当然に国家賠償法一条一項の規定にいう違法な行為があったものとして国の損害賠償責任が生ずるものではなく、右責任が肯定されるためには、当該国会議員が、その職務とはかかわりなく違法又は不当な目的をもって事実を摘示し、あるいは、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、国会議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の事情があることを必要とすると解するのが相当である。


 実線は最高裁判所が引いたもの。赤文字は筆者が色づけたもの。
 このように、国会議員の免責特権が理解されています。
 次回は、52条について読んでいきます。お楽しみに。

 以上


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