【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
58条



 8月15日は終戦記念日です。
 日本がポツダム宣言を受諾し、大日本帝国憲法は廃され、新しく日本国憲法が制定されることになりました。これによって、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義を三本柱とする立憲主義的憲法を持つ民主主義国家に生まれ変わることとなります。

 それでは、今回も日本国憲法の話を始めましょう。前回は、国会の公開と秘密会、表決の会議録への記載国会の定足数・表決について定めた57条を読みました。今回は両議院の役員選任、規則制定権、議員の懲罰権といういわゆる、議院の自律権について定めた58条を読んでいきましょう。

【58条】

1項 両議院は、各々その議長その他の役員を選任する。
2項 両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決を必要とする。


 1項で、両議院の役員選任権を定めており、衆議院、参議院がそれぞれ規則において、役員の選任について規定しています。ここでは議長の選挙について規定した条文を見てみましょう。言葉に若干の違いはありますが、同様の手続となっています。

衆議院規則
第1章 開会及び役員の選挙
参議院規則
第1章開会及び役員の選挙
3条1項 召集の当日に議長及び副議長が共にないときは、集会した議員が総議員の三分の一に達した後、議院は、議長の選挙を行う。
  2項 議長の選挙は、無名投票でこれを行う。
4条1項 召集の当日に議長及び副議長が共にないときは、集会した議員が総議員の三分の一に達した後、議院は、議長の選挙を行う。
  2項 議長の選挙は、単記無名投票でこれを行う。
4条1項 議員は、点呼に応じて、投票及び木札の名刺を持参して、演壇に至り投票する。
  2項 甲参事は名刺を、乙参事は投票を受け取り、議員に代つてそれぞれ名刺箱及び投票箱に投入する。
5条1項 議員は、点呼に応じて、投票及び木札の名刺を持参して、演壇に至り投票する。
  2項 甲参事は名刺を、乙参事は投票を受け取り、議員に代つて夫々名刺箱及び投票箱に投入する。
5条 現在議員が、投票を終つたときは、事務総長は、投票箱の閉鎖を宣告する。この宣告があつた後は、投票することができない。 6条 現在議員の投票が終つたときは、事務総長は、投票箱の閉鎖を宣告する。この宣告があつた後は、投票することができない。
6条1項 投票が終つたときは、事務総長は、参事をして直ちに名刺及び投票を計算し、投票を点検させる。
  2項 投票の数が名刺の数に超過したときは、更に投票を行わなければならない。但し、選挙の結果に異動を及ぼさないときは、この限りでない。
7条1項 投票が終つたときは、事務総長は、参事をして直ちに名刺及び投票を計算し、投票を点検させる。
  2項 投票の数が名刺の数に超過したときは、更に投票を行わなければならない。但し、選挙の結果に異動を及ぼさないときは、この限りでない。
7条 投票の点検が終つたときは、事務総長は、選挙の結果を報告する。 8条 投票の点検が終つたときは、事務総長は、選挙の結果を報告する。
8条1項 投票の過半数を得た者を当選人とする。
  2項 投票の過半数を得た者がないときは、投票の最多数を得た者二人について決選投票を行い、多数を得た者を当選人とする。但し、決選投票を行うべき二人及び当選人を定めるに当り得票数が同じときは、くじでこれを定める。
9条 投票の過半数を得た者を当選人とする。投票の過半数を得た者がないときは、投票の最多数を得た者二人について決選投票を行い、多数を得た者を当選人とする。但し得票数が同じときは、決選投票を行わなければならない二人又は当選人を、くじで定める。

 2項本文前段では、上記のような、両議院が、それぞれの議院の内部ルールとなる、議院規則を制定する権限があることを規定しています。ルール作りは国会が行うという立法権限を国会が独占するという国会中心立法の原則の憲法上の例外とされています。

 ここで、国会と、議院は同じではないか?という疑問が湧くかもしれません。しかし、国会は1つの国家機関であるのに対し、各議員は、国会のメンバーと言えます。たとえば、小学校でいうと、6年1組が国会なら、6年1組の生徒であるⅩ君、Yさんがそれぞれ衆議院、参議院というイメージです。これでいうなら、ルールは6年1組として決めなければならないのに、X君とYさんがそれぞれ自分で自分のルールを決めているというイメージです。

衆議院規則は258条、参議院規則は254条あり、それぞれ両議院のホームページで観ることができます。

衆議院規則( https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/shiryo/dl-rules.htm#1 )
参議院規則( https://www.sangiin.go.jp/japanese/aramashi/houki/kisoku.html#ki01 )


 2項本文後段では、懲罰できることが規定されています。懲罰は、衆議院規則ですと、18章(233条~247条)、参議院規則ですと、18章(232条から247条)に規定されています。そこでは、会議や委員会、議院内部で懲罰事犯があるときは、議長が懲罰委員会に付託します。また、懲罰事犯と認めない事件についても、議院から、懲罰の動議を提出することもできるとされています。この懲罰の動議については、議長は、討論を用いないで議院の決を採り、これを懲罰委員会に付託します。

 懲罰の種類については、国会法122条で定められています。

 国会法122条 議員の懲罰の種類

懲罰は、左の通りとする。

 公開議場における戒告

 公開議場における陳謝

 一定期間の登院停止

 除名


 2項本文後段但し書きでは、懲罰によって議院を除名するには、出席議員の3分の2以上の多数による議決が必要となります。

 日本国憲法下における実際の懲罰事犯については、除名は1950年に参議院議員・小川雄三氏、1951年の衆議院議員・川上貫一氏が除名されていますが、それ以降はいません。

 また、近時では、2007年に衆議院議員・内山晃氏が、桜田義孝議員を羽交い絞めにしたとして30日間の登院停止。2013年に参議院議員・アントニオ猪木氏が議員運営委員会に許可を受けることなく無断で朝鮮民主主義人民共和国に渡航したとして、おなじく30日間の登院停止とされた例があります。

 今回は以上となります。つぎは59条を読んでいきます。お楽しみに!


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