【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
60条



 9月に入り、一気に涼しくなりました。とはいえ、暑い日もありますし、寒暖差が大きく、体調を崩しやすい時期です。行政書士試験直前期に体調不良を起こして、1週間、2週間、勉強できない時期があると、気持ち的にもストレスが溜まってしまいます。ですので、直前期は特に、規則正しく睡眠や食事を摂り、体調管理に気を配り、コロナはもちろん、風邪や過労などで体調を崩さないようにして、学習を続けていきましょう。それが第一です!

 それでは、今回も日本国憲法の話を始めましょう。前回は、法律案の議決について定めた59条を読みました。今回は衆議院の予算先議権・衆議院の優越について定めた60条を読んでいきましょう。

【60条】

1項 予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。
2項 予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。


 国会は、法律を作る機関です。その国会がどのように法律をつくるかについて規定しているのが59条になります。条文を色分けしましたが、それぞれの手続の流れを条文ごとに図式化したのが下記の図になります。条文の色と同じ色の矢印が、その項の流れになります。

【予算案の審議過程】
予算案の審議過程

 予算案は衆議院に先に提出され審議されます。1項

 衆参両議院で賛成多数で可決されたときに、予算案は成立します。


 つぎに2項前段です。

 衆参両議院で議決が異なった場合です。衆議院で可決、参議院で否決した場合です。この場合には、両院協議会を開催し、妥協案を探ることになります。妥協案が作成されれば、もう一度、衆参両院で可決されれば、予算として成立します。

 これに対して、妥協案が得られない場合には、衆議院の議決が国会の議決として、予算が成立します。


 さらに2項後段です。

 衆議院で議決されたあと、参議院で30日間議決されないという事態になった場合には、衆議院の議決が国会の議決となります。


 このように、予算案の国会審議については、法律案と異なり、まず衆議院が先に議決します。これを衆議院の先議権と言います。なぜ、このような先議権が認められるかを考えてみましょう。

1.予算作成権限と予算チェック
 国家が様々なことを行うにはお金(経費)がかかります。しかし、国民から徴収した税金を使う場合には、そこにビタ一文無駄があってはいけません。ところが、税金の使い方は行政に全部お任せ、としてしまうと、必要のないところに無駄なお金を使って、あとは知らんぷり、なんていうことも考えられます。そのため、国家のお金に使い方については、その使い方を国民の側で、厳格に決めておく必要がありますし、それをチェックすることが大切です(これを財政民主主義と言ったりします)。

 そうすると、予算についても、国民の代表者で構成される国会で全て決めればいいのではないか、というようにも思われます。

 しかし、実際に、どこのいくらかかるか、1円単位で計画を立てられるかと言うと、数百人しかいない国会議員でその全てを正確に把握し、計画を立てることは困難です。例えば、道一本作るのにいくらかかるか、年金や生活保護など社会保障にいくらかかるか、学校を新しく建てるのにいくらかかるか、を正確に把握できるのは、巨大な人員を擁する行政権ということになります。そこで、行政権をつかさどる内閣に予算を作成される、とすることで、詳細で正確で無駄のない予算を作成することが可能となります。

 とはいえ、行政に対して、どのような予算を作ってもいいよ、といって、100%、行政権の好きに任せてしまうと、行政権が自分の好き勝手に税金を使ってしまう危険は残ります。そこで、それを回避するために、行政権の予算を国会でチェックするとしているわけです。

 そして、国家運営に係るお金は予算に基づかなければ支出できないわけですが、予算が成立しないと、国家がお金を支出ことができず、国家運営が滞ってしまう可能性がありますから、何が何でも予算を作っておく必要があります。そこで、予算が作成されていない、という事態を避けるための工夫が、憲法で規定されていることになります。

2.予算成立のための工夫①(衆参で異なった議決をした場合)
 衆参で意見が割れてしまった場合であっても、何らかの方法で予算を成立させる必要があります。その方法として、最終的には意見が割れた場合には、衆議院もしくは、参議院の議決を国会の議決として置けば、予算が成立しないという事態は回避できます。

 その点について憲法では、憲法上では、両院協議会を開き、それでも衆議院の議決を国会の議決とすると規定されていますので、意見が割れた場合でも、予算は成立することになります。

 ここで、衆議院の議決を国会の議決とすることにしたかというと、衆議院の方が参議院よりも任期が短く、さらに任期満了前に解散されることがほとんどであることを考えれば、現在の日本国民の意思に近いのが衆議院であるといえます。ですので、衆議院の意見を執るか、参議院の意見を執るかということになった場合には、衆議院の議決を国会の議決とするとされています。

3.予算成立のための工夫②(参議院がボイコットした場合)
 また、参議院がイエスともノーとも言わずに30日経過した場合には、端的に衆議院の議決が国会の議決となります。

4.予算成立のための工夫③(衆議院の予算先議)
 このように衆議院の議決を国会の議決とするという「衆議院の優越」を認めていたとしても、もし、参議院から先に審議入りさせてしまうと、参議院で否決された場合には、衆議院に予算案が回付されず、そもそも衆議院で審議自体がなされず、予算がいつまでたっても成立しない、という事態に陥ってしまう可能性があります。そこで、予算を衆議院に先に提出させることで、予算について衆議院は必ず議決をさせることにしておくわけです。審議自体、議決自体をしないという事態が生じないようにします。そうすれば、衆議院が議決すれば、参議院が可決しようが否決しようが、衆議院の議決が国会の議決となり、予算は成立することになります。

 予算は必ず成立させなければならないという性質上、このような工夫によって予算が成立しないという事態を回避しているわけです。

 今回は以上です。つぎは61条を読んでいきます。お楽しみに!

以上



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