【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
64条



 令和3年度・行政書士試験が実施されました。受験された皆様、お疲れさまでした。実力は発揮できましたか?まずはゆっくり休んで、疲れを癒してください。そして、時間があれば、自己採点をして、今年度の試験を振り返ってみてください。もし、成績が良ければ次のステップへ。もし、思うように得点できていなければ、行政書士試験の学習を継続して、来年度の本試験での合格を期して再び学習を開始するのがよいでしょう。いずれにしても、早く動くに越したことはありません。

 それでは、今回も日本国憲法の話を始めましょう。前回は、国務大臣の議院出席の権利と義務について定めた63条を読みました。今回は、弾劾裁判所について定めた64条を読んでいきましょう。

【64条】

1項 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する弾劾裁判所を設ける。
2項 弾劾に関する事項は、法律でこれを定める。


 まず1項では、罷免、つまり、やめさせたいと訴えられた裁判官を裁判するために、衆参両議院で組織される弾劾裁判所が設置されることを規定しています。そして、2項では、弾劾に関する事項は、法律で定めることが規定されています。
 「弾劾」とは、「罪や不正を暴く」「厳しく責任を問う」という意味があります。そのため、身分保障を受けている公務員が非行を犯した場合に、国民の意思によってその者を辞めさせる制度です。

 そもそも、裁判所が裁判官を裁判すると、身内を裁判することとなり、手心を加えてしまうことにもなりかねません。そこで、裁判所が裁判するのではなく、両議院の議員で構成される弾劾裁判所に裁判を任せることにしたわけです。

   裁判官が弾劾される事由については、裁判官弾劾法2条が定めています。

【裁判官弾劾法2条】

(弾劾による罷免の事由)
2条 弾劾により裁判官を罷免するのは、左の場合とする。
 1号 職務上の義務に著しく違反し、又は職務を甚だしく怠つたとき。
 2号 その他職務の内外を問わず、裁判官としての威信を著しく失うべき非行があつたとき。


 このように弾劾事由は法定されています。したがって、両議院で弾劾裁判ができるからといって、逆になんでもかんでも弾劾されてしまうと、議員が自分たちにとって都合の悪い裁判官をやめさせることができることになり、司法権が必要以上に侵害される可能性が出てきます。それを避けるために、弾劾事由を定めていることになります。

 そのほか、裁判官弾劾法を見ながら、弾劾裁判の仕組みについてみてみましょう。

(裁判官弾劾裁判所及び裁判官訴追委員会の所在地)
3条 裁判官弾劾裁判所及び裁判官訴追委員会は、これを東京都に置く。


 弾劾裁判所と、訴追委員会(刑事裁判でいうところの検察官の役割を果たします)は、東京都に置かれることになります。


(裁判官訴追委員・予備員)
5条1項 裁判官訴追委員(以下訴追委員という。)の員数は、衆議院議員及び参議院議員各十人とし、その予備員の員数は、衆議院議員及び参議院議員各五人とする。


 訴追委員会の員数は、衆議院議員10名、参議院議員10名の合計20名です。


(調査)
11条1項 訴追委員会は裁判官について、訴追の請求があつたとき又は弾劾による罷免の事由があると思料するときは、その事由を調査しなければならない。


 罷免事由があると考える場合に、調査が始まります。


(訴追の請求)
15条1項 何人も、裁判官について弾劾による罷免の事由があると思料するときは、訴追委員会に対し、罷免の訴追をすべきことを求めることができる。


 さらに、きっかけとして、だれでもが、裁判官について弾劾による罷免事由があると考えた場合には、訴追委員会に対して、訴追を求めることができます。公務員を罷免する権利が国民にあることの表れともいえます。


(裁判員・予備員)
16条1項 裁判員の員数は、衆議院議員及び参議院議員各7人とし、その予備員の員数は、衆議院議員及び参議院議員各四人とする。


 弾劾裁判所の裁判員の数は、衆議院議員7名、参議院議員7名の合計14名です。


(合議制)
20条 弾劾裁判所は、衆議院議員たる裁判員及び参議院議員たる裁判員がそれぞれ五人以上出席しなければ、審理及び裁判をすることができない。但し、法廷ですべき審理及び裁判を除いて、その他の事項につき弾劾裁判所が特定の定をした場合は、この限りでない。


 定足数は、衆議院議員5名以上、参議院議員5名以上、合計10名以上です。


(弁護人の選任)
22条 1項 罷免の訴追を受けた裁判官は、何時でも弁護人を選任することができる。


 弾劾裁判も、裁判ですので、訴追を受けた裁判官はいつでも弁護人を選任することができます*


(開廷の場所)
25条
 1項 法廷は、弾劾裁判所でこれを開く。
 2項 弾劾裁判所は、必要と認めるときは、前項の規定にかかわらず、他の場所で法廷を開くことができる。


 弾劾裁判所で法廷が開かれます。弾劾裁判所の法廷は、昭和51年6月から、参議院第二別館内(南棟)に設置されています。かつての最高裁判所大法廷を参考にして、広さは約213平方メートル(約65坪)あります。ただし、必要と認めるときは、他の場所で法廷を開くことができます。


(審判の公開)
26条 弾劾裁判所の対審及び裁判の宣告は、公開の法廷でこれを行う。


 弾劾裁判所の対審と裁判の宣告は、公開法廷で行われます。


(訊問)
28条
 1項 弾劾裁判所は、罷免の訴追を受けた裁判官を召喚し、これを訊問することができる。
 2項 前項の場合には、刑事訴訟に関する法令の規定を準用する。但し、勾引することはできない。


 弾劾裁判所は、訴追を受けている裁判官を召喚して訊問することができます。また、その手続に関しては、刑事訴訟に関するルールが適用になります。


(証拠)
29条
 1項 弾劾裁判所は、申立により又は職権で、必要な証拠を取り調べ、又は地方裁判所にその取調を嘱託することができる。
 2項 証拠については、刑事訴訟に関する法令の規定を準用する。但し、弾劾裁判所及び弾劾裁判所の裁判長は、勾引、押収若しくは捜索その他人の身体、物若しくは場所について、強制の処分をし、若しくはすることを命じ、又は過料の決定をすることはできない。


 弾劾裁判所は、申立てまたは職権で証拠調べができます。また、証拠についても刑事訴訟に関するルールが適用されます。


(罷免の裁判の効果)
37条 裁判官は、罷免の裁判の宣告により罷免される。


 裁判官は、罷免の裁判がなされると職を失うことになります。


 以上のような形で、弾劾裁判がなされることになります。

 いままで、弾劾の訴追を受けた裁判官は合計9名います。そのうちの7名が罷免されています。

 裁判官弾劾裁判所は、ホームページもあります。弾劾裁判所の歴史や、裁判員の顔ぶれ、弾劾裁判所の手続、実際の弾劾裁判例も見ることができます。

 今回は以上です。つぎは65条を読んでいきます。お楽しみに!

以上


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