【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
65条



 今年も残すところあとわずかになりました。今年も、新型コロナウイルスの影響がまだまだ強く、また、今後どうなっていくのか見えない中で、日々の生活に不安を感じることも多かったと思います。受験された皆様にとっては、1月末の合格発表で合格しているかどうか気になる年末だと思います。また、これから行政書士試験合格に向けて学習を開始された方は、初めての法律を学習することに期待と不安を感じている年末だと思います。それぞれ、様々な思いがあると思いますが、コロナもいつか収束するはずです。そうなったときのために、いまのうちに資格を取得することは大切です。また、様々な不安を打ち消してくれます。資格取得に向けて、前を向いて、来年も進んでいきましょう!!

 それでは、今回も日本国憲法の話を始めましょう。前回は、弾劾裁判所について定めた64条を読みました。今回からは、第5章、内閣に関する条文を読んでいきます。まず最初は、行政権の帰属について定めた65条を読んでいきましょう。

【65条】

行政権は、内閣に属する。


 「行政」とは、「国家作用の中から立法作用と司法作用を除いた残余の作用」という定義をするのが一般的です。これを「控除説」と言ったりもします。
国家作用

 なぜ、このような定義をするかというと、行政の活動は様々で、極めて広く多岐にわたります。行政の活動を具体的に示す言葉として、「ゆりかごから墓場まで」とか、「ごみの収集からロケットの打ち上げまで」と言われたりします。そのような行政活動を余すところなく定義づけるのが非常に難しいということがあります。
 また、歴史的な観点からも説明できます。中世の絶対王政のころは国家作用のすべてを国王が握っていたわけです。しかし、その権力に抑圧されていた市民が、革命を起こして国王の権力を削ぐわけです。ただし、国家権力の中の立法権と司法権さえ市民が握ってしまえば、国王を監視し、暴走しないように国王を制御することができるようになると考え、国王の持つ権力の立法権と司法権を市民が握るようにした、という歴史的な経緯から、このような定義づけをすることになります。

 内閣の職権や組織、行政事務の分担、行政各部に対する指揮監督の大まかな概要については「内閣法」という法律が定めています。26条からなる法律です。ここでは、1条から4条までを読んでみましょう。

【内閣法1条】

1条(職権)
 1項 内閣は、国民主権の理念にのつとり、日本国憲法第73条その他日本国憲法に定める職権を行う。
 2項 内閣は、行政権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負う。
2条(組織)
 1項 内閣は、国会の指名に基づいて任命された首長たる内閣総理大臣及び内閣総理大臣により任命された国務大臣をもつて、これを組織する。
 2項 前項の国務大臣の数は、14人以内とする。ただし、特別に必要がある場合においては、3人を限度にその数を増加し、17人以内とすることができる。
3条(行政事務の分担管理)
 1項 各大臣は、別に法律の定めるところにより、主任の大臣として、行政事務を分担管理する。
 2項 前項の規定は、行政事務を分担管理しない大臣の存することを妨げるものではない。
4条(閣議)
 1項 内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。
 2項 閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。この場合において、内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる。
 3項 各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる。


 1条では、国民主権・日本国憲法に定められたことができ、また、国会に対して責任を負わなければならない旨が規定されています。行政権といえども、勝手なことはできず、国民のつくった憲法や法律に基づいて動かなければならないことが規定されています。
 内閣の仕事は、立法権(国会)が作ったルールを実際に実行していることにあります。例えば、税金なんかが分かりやすいですね。行政組織の一部である税務署が税金の徴収を実際に行っていくわけですが、行政が考える金額を勝手に決めて税金を徴収していいわけではありません。国会が作った様々な税法、例えば所得税法という税金のルールにしたがって、そこに定められた税目や税率に従って税金を徴収していくことになります。

 2条では、内閣の組織について、憲法がそのまま法律化されています。内閣法では閣僚の人数までも規定されています。閣僚を内閣が自由に置くことができてしまうと、行政権を国民が制御できなくなってしまう可能性があるからです。また、閣僚を一人置くだけでも、そのための経費が掛かってしまいますから、何人でも閣僚を置いて税金が無駄に使われてしまうことがないようにするためでもあります。

 3条では、行政事務については、各大臣が行っていくことが規定されています。

 4条では、閣議について規定されています。内閣が何かしようとする場合には、閣議を経る必要があることが1項に規定されています。この閣議の表決数については規定がありません。それについては、慣行上「全会一致」で行われることとされています。内閣は行政のトップです。そのトップである内閣の足並みが乱れてしまうと、統一的な行政運営ができなくなり、あっちではああ言う、こっちではこう言う、となって、行政の対応が場所によってばらばらになってしまいかねません。そこで、閣議は全会一致で決するのが慣行となっています。

 さらに、憲法改正の議論においては、行政権の主体を内閣から首相にすべきとする意見もあるようです。権限を強化・明確化することで、官僚支配を抑制することができるというメリットもありますが、逆に首相の独裁を招くというデメリットも考えられます。改正議論では、メリット・デメリットを十分に考えて、私たちがどのようにするかの選択をする必要があります。

 内閣については、首相官邸のホームページの中に記載があります。閣議、主な閣議決定・本部決定、閣僚等名簿、内閣制度、歴代内閣について見ることができます。
 首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/naikaku/index.html

 今回は以上です。次回は66条を読んでいきます。お楽しみに!

 今年も一年ありがとうございました。また来年もよろしくお願いします。
 それでは、よいお年をお迎えください。

以上


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