【行政書士】日本国憲法の話
-今だから、もういちど憲法を読み直そう-
68条



 それでは、今回も日本国憲法の話を始めましょう。前回は、内閣総理大臣の指名や、指名に対する衆議院の優越について定めた67条を読みました。今回は、国務大臣の任命および罷免について定めた68条を読んでいきます。

【68条】

1項 内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。
2項 内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。


1.内閣の一体性の確保
 内閣総理大臣は、1項本文と2項より、国務大臣の任命権・罷免権を持ちます。つまり、内閣総理大臣が、誰を閣僚にするか決めることができ、また、やめさせたい閣僚を自由にやめさせることができます。

 その理由ですが、内閣には強く「一体性」が求められます。一体性というのは、分かりやすく言えば、内閣は同じ方針の下で動かなければならないということです。もし、行政権のトップとなる内閣が、例えば、各省庁がてんでバラバラな方針の下で、好き勝手なことをやり始めるとどうなるか。各省庁に行くと、行く先々で言うことが違う、窓口によって対応の仕方が違う、ということにもなりかねません。ある事件にかかわる省庁が、法務省、文部科学省、経済産業省だったときに、法務省はイエスといい、文部科学省はNOといい、経済産業省はどっちでもいい、という。これでは、困るわけです。

 また、憲法上、私たち国民は国によって差別されることはありません。ところが、窓口によって、方針の違いにより、ある人の申請はOKとされ、別のある人の申請はNOとされる。こんなことがあっても困るわけです。

 そこで、内閣のトップは常に同じ方針のもとに動かなければならない、という原則が導かれることになるわけです。これが内閣に一体性が要求される理由です。

 内閣の一体性を確保するためのものとして、内閣が動くときには、「閣議」を開いて決めるというのが内閣法の規定にあります。


【内閣法4条】

1項 内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとする。
2項 閣議は、内閣総理大臣がこれを主宰する。この場合において、内閣総理大臣は、内閣の重要政策に関する基本的な方針その他の案件を発議することができる。
3項 各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる。



 このように、内閣は、閣僚が参加して行う「閣議」に基づいて動いていくわけです。そして、明文の規定はありませんが、慣行上、閣議は全員一致が原則とされています。ある省庁のトップが内閣とは異なる方針をとると、内閣の一体性が失われてしまうという上記のような問題が起こってしまうからです。

 では、閣僚の中に、どうしても内閣の方針に従えない、という人がいた場合にはどうするのでしょうか。この場合に、内閣の一体性を保つためには、その閣僚にやめてもらうしかありません。やめてもらって、内閣の方針に従える人を大臣に据えることで、内閣の一体性は保たれることになります。

 これを容易に行い得るようにするために、内閣総理大臣に与えられているのが任意の「罷免権」ということになります。内閣総理大臣は、閣僚を自由に辞めさせることができるとしておくことで、内閣の一体性は容易に保つことができることになります。

2.国務大臣の過半数は国会議員から選ぶこと
 つぎに、1項但し書きにより、国務大臣はその過半数を国会議員の中から選ばなければなりません。これは衆議院議員でも、参議院議員でもかまいません。国会議員は行政の専門家ではないですから、ある意味、各省庁を統括する国務大臣は、その筋の専門家を連れてきて据えるというのも、とるべき方法の一つではあります。

 しかし、日本においては、議院内閣制の下、内閣は、その職務を行うについて、国会に対して連帯責任を負う必要があります(憲法65条3項)。議院内閣制は、内閣の存立を国会の信任に依拠させることにあります。行政運営についても、国民の代表者によって構成される国会を無視することは許されず、ひいては国民の方を向いて職権を行使する必要がある、ということです。それに実効性を持たせるため、内閣と国会を完全に切り離すのではなく、内閣の過半数を国会議員に担わせるとすることで、内閣にも民意を取り入れ、国会の信任を得やすくし、内閣の国会に対する責任を十分に果たさせるということになります。

 そうであれば、議院内閣制を貫き、閣僚全員を国会議員から選ぶ、という方法が望ましいのではないかとも考えられます。

 しかし、そこは、その筋の専門知識にたけている人が、必ずしも国会議員の中にいるとは限りません。全員を国会議員から選ぶということも、さまざまな対応を求められる行政の形としては必ずしも理想的な形とはいえません。

 そこで、バランスの問題になりますが、過半数は国会議員から選ぶ必要があるとしつつも、半数以下であれば、民間からの登用も可能とする制度を採用していると考えられます。

 今回は以上です。次回は69条を読んでいきます。お楽しみに!

以上



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